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ハビエルと結弦をかかえること。オーサーインタビューon Icenetwork

久々の更新…しかもジュンファン関連じゃない更新はいつ以来でしょう(゚∀゚;)

 

今朝出たばかりのIcenetworkのブライアン・オーサーインタビューが、とても興味深い内容だったので、とりあえずざざっと全訳してみました。

これまでのオーサーのインタは、どちらかというと選手の仲の良さやクリケの一体感を強調するものが多かったと思いますが、今回はハビエルと結弦をかかえるのは「大変だ」と明言しています。(それも二度もw)そして2人の個性の違いや戦略の違いを、より具体的に語っています。

なんとなく、ではありますが、これは今まで以上に羽生くんとの距離が縮まってきた、あるいは縮めたい、というオーサーの気持ちのあらわれなんじゃないかという気がするのです…思い込みかもしれませんけど。

 

大急ぎのざっと訳なので誤訳、誤字などありましたらすみません。

元記事はこちら→Overseeing Fernandez, Hanyu a challenge for Orser Posted 11/10/16

筆者はいつも一味もふた味も違う、深みのある記事を書いてくださるJean-Christophe Berlotさんです。

 

 

「オーサー、フェルナンデスと羽生をかかえることはチャレンジだと語る」

(challengeには「困難や苦労」と「やりがい」のふたつの意味がありますが、今回はどちらか一方の意味ではなく両方の意味があるような気がします)

 


昨年、ハビエル・フェルナンデスはSPでクワド2本を着氷し、彼のキャリアにおいて技術的に画期的な地点に到達した。今季は羽生結弦がSPとフリー両方で4Loを着氷するという、同じく重要な節目を迎えた。今年のフランス杯の前日、ふたりのコーチであるブライアン・オーサーがicenetworkのために時間を割いて質問に答えてくれた。

 

IN:あなたは2人の世界チャンピオンを指導していますが、2人とも現状にとどまるのではなく、さらに成長を続けています。どうやって2人をこれほど奮起させられるのでしょうか?

 

BO:僕は何かを提案するとき、それが彼らのアイディアになるように努めているんだ。うまいタイミングが見つかったら、僕はそのアイディアを放り込んでやって、それを彼ら自身のものとしてつかませるんだ。彼らに「これはこうしなさい」と言うよりも、このやり方のほうが好きなんだよ。僕が自分のものにする必要はない。スケーターたちが強い選手になりたければ、または強い選手たちであるのであれば、彼ら自身がそのアイディアを思いついて実行に移したほうがいいからね。

 

IN:それでもハビエルとユヅルは他の選手を大きく引き離していますよね。平昌五輪までもう1年です。彼らはもう技術を磨かずにただ表現面を磨くこともできるはずですよね。

 

BO:2人とも状態は非常にいいよ。ただし、2人は違う戦略をもっているんだ。ユヅはまだとても若く(12月7日で22歳になる)、このフィギュアという競技を前進させなくてはならないと感じている。ハビの考え方は違うんだ。次の五輪のころ、彼は26歳になる。彼は自分が今もっている力にかなり満足している。高いPCSをもらっていて、それこそ彼が必要だと感じているものなんだ。自分のPCSに自信をもっている。彼は今は新しい要素が必要だとは考えていない。五輪に1度出て2度めの五輪を迎えるには、もちろん技術を向上させることは必要だし、彼はそれをやってきた。けれども、「OK。これでいい」と言うべき時点はあるんだ。エレメンツは同じでも、それをいかに実行するかについては常に向上の余地がある。試合に勝つかどうかはGOEで決まるんだ。+1では足りない。+2や+3をずらりと並べなくては勝てない。もし難しいステップシークエンスを完ぺきに滑りつつ、プログラムのキャラクターや音楽を的確に表現できたら、レベルとGOE+3と高いPCSをそろえることができる。僕の教え子たちはそれほど多くのクワドに頼らなくてもいいんだよ。他の選手たちでも同じことが言えるかもしれないけれどね。

 

IN:では、ユヅルはそれとは違う戦略をもっているわけですね?

 

BO:ユヅは今現在、クワドに非常に力を入れている。今季はSPとフリーで合計6本入れ、うち2本が4Loだ。彼は今季、技術面を非常に強化しようとしている。彼はとても難しい課題に取り組もうとしていて、僕にとっても彼の戦略を理解するのにいくらか時間が必要だった。彼はそれらの新しいエレメンツをモノにすることにこのシーズンを使いたいと思っているんだ。これはつまり、シーズン初めにはスケーティングをいくぶん犠牲にしなくてはならなかった、ということだ。クワドに集中的に力を入れていたから、それ以外のスピードやスピン、エレメンツといった点で、最初はそれほどよくなかった。StSqはおそらくあるべきレベルの70パーセントほどだっただろう。彼はあるとき、この戦略を僕に説明してくれたんだ。僕は完全に理解したよ。同時に、僕はハビエルの戦略もよくわかっているよ。

 

IN:ユヅルはそのせいでスケート・カナダで負けたということですか?

 

BO:スケート・カナダは彼にとっては楽勝だったはずだった。だが、彼はクワドをある程度モノにしたかった。彼はより大局的に考えていたんだね。今、彼はクワドをクリーンに入れるためにプログラム全体の練習をしようとしている。4本めのクワド(フリーでは後半に2本のクワドを入れている)にいい状態で入っていけるようにするためにね。シーズンが進むにつれて、彼はまた違う考え方にギアを変えていくだろう。辛抱強くあらなければならないのは僕のほうさ! そしてもちろん、彼に常にパーフェクトなものを求めてしまう連盟と彼のファンもね。でも彼は僕を信じさせてくれたんだ。(But he is making me a believer.)

 

IN:そうすると、ハビエルに対してはずいぶん異なる指導法をとることになるんですね?

 

BO:ハビエルについては、心肺機能を高めるトレーニングをしなくちゃならない。彼のプログラムを滑りこなすには高い心臓の機能が必要だからね。彼は振付を表現することに全力を注がなくてはならないんだ。それが彼の持ち味だから。彼のスケートにはすごく魅力があるんだ。彼のトランジションをこなすにも多大なエネルギーが要る。彼のトランジションは本当にすばらしいんだけど、かなりの労力を要するんだよ。トランジションはたくさん練習しなくちゃならない。僕の考えでは、トランジションというものは演技をより自然に、楽々と見せるためにある。無理に力を入れなくてもスピードを出すためにある。体のバネを使って動きを生み出すんだ。ハビエルがトロントに来てトランジションを学んで以来、彼に限界というものはなくなった。振付師のデビッド・ウィルソンにとって、ハビエルのトランジションを創造することはとても楽しい(cool)ことなんだ。

 

IN:あなたから選手たちにこんな戦略をとるようにと勧めることはあるんですか?

 

BO:もうひとつの興味深い例がエリザベート・ツルシンバエワ(カザフスタン。先週のロステレコム杯で5位)だ。彼女は自分にできることはすべてやろうという考えの持ち主で、毎日練習時間を増やして1日に4回も通し練習(曲かけ練習)をするんだよ。僕は彼女に、毎日ではなく「通し練習の日」をつくって、その日に集中して取り組んでもらうように言っているんだ。通し練習というのは緊張感のある、大切なものでなくてはならない。彼女には休息することを学んでほしいんだ。通し練習は1度きりのものであるべきで、「さあ次またやりましょ」というものではない。前日寝るときに「明日は大切なフリーの通し練習の日だわ」と思って寝てほしいんだ。選手たちはともすると当初の戦略から離れていってしまうものだから、それを引き戻すために僕らコーチが必要になるんだ。


IN:あなたの教え子は自分に自信がある選手ばかりに見えます。どうやって自信をつけさせるんですか?

 

BO:選手は自分自身と、自分がやってきたことを信頼しなくてはならない。ただリンクに出て運に頼るようなことはしたくない。これからおこなう演技が確かで、よいものになると確信していたんだよ。選手たちには彼らの(演技の)平均値に注意を払うように言ってるんだ。最初はあまりいい平均値ではないかもしれない、70パーセントとかね。シーズンが進むにつれて平均値は95パーセントになり、たまに100パーセントも出せるようになる。自分の平均値が信頼できれば、試合に出て競争が厳しい状況の中でもいいものを生み出すことができる。準備ができていないということが僕は嫌いなんだよ。

 

IN:今おっしゃったことが、まさに2016年ボストンワールドでのハビエルだったんですね?

 

BO:そのとおり! ハビエルはふだん、月曜から金曜までリンクに来て練習しているんだが、彼が一番いい通し練習ができるのは、2日間休んで週末が明けた月曜日なんだ。ボストンでは彼は、かかとの怪我のためSPとフリーの間まったく練習することができなかった。だから、フリーの前に彼に言ったんだ。「今日はきみにとって月曜日だよ!」って。実際は土曜だったけどね。すると、彼はそれで気分がよくなった。ふだんの月曜日にやっているようなフリーを滑ることができたんだ。一番いいフリーをね。
コーチは常にどんなシナリオにも対応できなくてはならない。そして、それにふさわしいエピソードを用意していなくてはならない。ごまかしのないきっちりとしたエピソードをね。先週のロステレで、ハビはSPでミスをしてしまった。そのときの滑走順はグループで1番だったんだが、ここフランス杯でもグループ1番を引いてしまった。彼はグループで最初に滑るのが好きじゃないんだ。もしもロステレと同じパターンをまたやってしまったら、同じ結果になってしまうだろうね。それは避けたい。だから何か違うことを考えなくてはならない。明日は違う戦略をおこなうつもりだよ。それが何かはまだ言えないけどね……うまくいったかどうか明日の夜にわかるだろうね(笑)

 

IN:あなたは世界の2トップを指導しています。いったいどうやりくりしているのですか?

 

BO:大変だよ。「ブライアンには優秀な教え子がたくさんいてラッキーだな!」なんて言う人の言葉を信じちゃいけない。本当に大変なんだ!
ユヅがこれまでのシーズンのほとんどをトロントで過ごしているのは、今年が初めてなんだ。いつもは日本と行ったり来たりするのがふつうだからね。だから、彼は僕がJGPに出かけたり、ハビエルに2週間同行したりすることに慣れていないんだ。もちろんこれが僕のふつうの生活なんだけど、彼はトロントでそれを目にしてこなかった。だから、彼は放っておかれたように感じている。でも、長い目で見れば、僕が留守にするのはとてもいいことなんだ。その間、彼はSSや振付のほうを練習できるからね。それらの練習は必要なものだし。僕がユヅとNHK杯に行くときにはハビエルにとっても同じことさ。1人でいろんな新しいことを練習することができるんだ。
僕は選手みんなの気持ちや課題にちゃんと気づき、理解できるように努めている。平昌五輪が近づくにつれて、プレッシャーが増しているのがわかるよ。ハビエルと2週間を共にできて嬉しいよ。その間にすばらしい収穫があったからね。ユヅと共に過ごしたカナダでの時間も同様だったし、NHK杯でもまたそうなるだろう。彼だけを見ることができるからね。
今後はチーム全体――コーチたちと振付師や選手たち――でグループディスカッションをしていこうと思っている。どのように前進していくか、選手たちをどうケアし、ベストな指導ができるか決めるためにね。僕らのリンクには、選手たちが支えられていると感じ、安全だと感じられるような、前向きないいコミュニティーがなくてはならないんだ。コーチ1人に選手1人、また別のコーチに選手1人、というのは僕は好きじゃない。このコミュニティーが調和のとれたものであるように努力している。僕は僕自身にかかわる個人的なことだと考えてやっているんだ。(I take things personally.)

 

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ふたつだけ補足…

 

「でも彼は僕を信じさせてくれた・納得させてくれたんだ」(But he is making me a believer.)

直訳すれば「でも彼は僕を信じる人に(今現在)させてくれているところだ」。

この記事全体を読むと超高難度に挑むのは本来オーサーのやり方ではないような気がします。難度的にはある程度余裕をもって(もちろん他選手に比べれば高難度ですけど)できばえやプログラム全体の印象を良くすることで、過去のヨナも勝利に導いてきたわけですし。

金メダリストという実績十分で、ただでさえ十分高難度の構成をもっている(おまけに怪我まで抱えている)羽生くんがさらに難度を上げることに、オーサーやクリケのコーチたちは最初は難色を示したのではないでしょうか? でも、今は「彼は僕を納得させてくれつつある」。羽生くんの口から戦略についてのかっこたる意志を聞いて、態度を変えつつあるオーサーの気持ちがうかがえるような気がします。

 

最後のI take thing perosonally.は訳すのがとっても難しい言葉ですけど、この場合は他人事とは思わない、単にビジネスだとは思わない。選手それぞれがかかえる課題や希望を、自分自身にもかかわる大切なものだと考えてやっているんだ、ということかな、と思いました。

 

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