おはようございます。トロフィー・エリック・ボンパール、略してTEB、第1日目が終わりましたね。
あらゆる予想サイトが堂々の優勝候補に挙げていた我らがまっちーは、3つ目のジャンプに惜しいミスが出てショート2位。それでも首位のデニスに3点未満の差ですから、フリーで逆転、いや圧勝さえ十分に可能でしょう!
ただ、デニスもすばらしい演技でした。なんとPCSが同点。おまけにTRとIN以外の3項目がまったく同じ、という珍しい事態。実力を発揮できさえすれば力的には伯仲している2人なので、油断は禁物ですけど!
今季は世界王者候補にも挙げられているまっちーのインタビューが、Icenetworkにアップされていました。SP前におこなわれたインタビューらしいですが、試合前によくこれだけ長く答えましたねぇ。そんなところも貫禄出てきましたよねぇ。
ライスト観戦明けの疲れ切った頭で訳しましたので、すみませんが雑訳です。まっちーの格調高い語彙には合わない言葉づかいもあるかと思いますが、どうかお許しを〜。
元記事はこちら→
Machida elevates skating with impassioned artistry
「町田、情熱のアートでフィギュアスケートを昇華させる」
フランスで滑る機会を楽しんでいる、現・世界選手権銀メダリスト
2014年世界選手権銀メダリストの町田樹。その町田が「メリアデック・アイスリンク」に足を踏み入れるやいなや、日本からやってきたTVクルーが彼のあとを追い回し始めた。ウォームアップ中も、静かに集中を高めている時間も、そしてもちろん公式練習中も。町田はこの地球上で最高のスケーターの1人であるだけではない、ボルドーで開催されているTEBの優勝候補の1人でもある。
今からひと月前、町田はスケート・アメリカで2連覇を果たしているが、その彼が寛大にもIcenetworkのために時間を割いてインタビューに答えてくれた。ときどき英語につまる場面もあったが、その思考と言葉はまるで彼の滑りのように、なめらかによどみなく流れ出てきた。各技術要素における芸術性を含め、フィギュアの芸術面をいかに大切に考えているのか、たっぷりと語ってくれた。
Icenetwork(以下IN):TEBには初出場ですね。どんな感じでしょうか?
町田:以前からずっとフランスで滑りたいと思っていました。このリンクのボードの美しいデザインを見てください。ブルーと黒だけで統一されて、とてもしゃれています。ガロンヌ川や立ち並ぶ教会、街の中心部まで、ボルドーもとても美しい街です。この環境は僕にすごくインスピレーションを与えてくれます。僕のスケートにとっても、それは大変重要なことです。
IN:(スケートに重要とは)それはどんな面で?
町田:僕はフィギュアスケートをパフォーミングアート(舞台芸術、表現芸術)として見ているんです。4Tなどの4回転ジャンプも、それ自体が1つの芸術作品になりえる……まあ、僕はそう考えています。美しい環境は、少なくともその方向へ進む助けになってくれます。自分の技術力を使ってアートを創り出すことが、僕にとっては大切なことなんです。
IN:あなたには文化というものがとても重要なんですね。その面ではどんな取り組みをされていますか?
町田:ええ、僕にとって文化はとても重要ですね。ご存知かもしれませんが、僕のフリーの曲はベートーベンの「交響曲第九番」です。この曲は文化です。ヨーロッパ文化、ドイツ文化なんです。僕はドイツ文化を理解しようと努めました。振付師のフィリップ・ミルズ先生と共にこのプログラムに着手する前に、ドイツの文化を総合的に勉強したんです。
よい演技を表現したいと思うのなら、文化を理解し、曲や作曲家の人生を勉強して、プログラムの振付をよく知らなくてはなりません。
ご存知でしょうか(彼はここで微笑んだ)英語ではフィギュアのことを「フィギュア・スケーティング」と言いますが、フランス語では「アーティスティック・スケーティング」と言うんですよね。これは正しいと思う。フィギュアはバレエやダンスと同じようなパフォーミングアートであるべきなんです。フィギュアはそういったカテゴリーに入るものだと思います。僕はパフォーミングアートを大切に考えています。
IN:それらを学んだ結果として、あなたにとってベートーベンの「第九」とはどういうものなのでしょうか?
町田:「第九」は以前から僕にとって大切な曲でした。疲れたり落ち込んだりしたときにはいつもこの作品を聴きます。この曲は僕にインスピレーションと力を与えてくれる。だから僕は「第九」を世界中の人々に向けて表現したいんです。
IN:SPは恋愛がテーマなんですね。このプログラムについてもっと話していただけますか?
町田:2年前、僕は1曲の音楽を聴いて、すばらしい曲だ、この曲で滑ろうと決めました。ただ残念ながら、僕は自分の音楽について英語で言い表すことができません。そう、これは悲恋をあつかったプログラムです。地上のすべての人は、自分の胸の内にたくさんのラブストーリーを持っています。
僕はフィギュアスケーターとしては年長ですよね。24歳ですから! だから僕の胸の内にもいくつかのラブストーリーがあります。僕はこのSPで人々の心の内に触れたいと思っています。ただただ情感を表現することを目指しています。
IN:表現はフィギュアスケートにおいて重要な部分を占めていますよね。スケーターにとっても大きな課題です。あなたはどう自分を表現されるのですか? 何か役割を演じようとしたり、もっと高度なものを表現しようとしたりするのでしょうか?
町田:いいえ、僕は滑っているとき、情感をすごく感じることができるんです。
IN:自分を表現するすべを、どのようにして学んだのですか?
町田:ダンスやバレエなど、できるだけ多くのパフォーミングアートを見に行くことが必要だと思います。僕はそれらのものから、いかにしてアートを表現するかということを学んでいます。
IN:それでは、技術要素の勢いを崩さずに、自分の感情を芸術的に表現する――この2つをどう両立させているのでしょうか?
町田:氷の上に立っているときには、僕は試合のことは忘れるんです。「これは僕のステージなんだ」と自分に言い聞かせています。だから、ジャンプや得点やメダルのことを意識せずにいられる。ただ表現のことだけを考えています。
IN:ジャンプは技術要素であるだけでなく、それ自体が芸術作品なんだとおっしゃいましたね。それはどうすれば可能になるんでしょうか?
町田:ジャンプもまた、自身を表現するひとつの方法です。ジャンプは自分の感情を表すひとつの単語なのです。
次のクワドがどうとか、次のアクセルがどうとか考えてしまうと、僕は緊張してミスが出やすくなってしまいます。
僕のスケートのキャリアは18年なんですよ。(事実そうか確かめるように少し考え込む)ええ、確かに18年です。1年中あらゆるジャンプに取り組んできて、それを18年続けてきました。僕はジャンプが跳べる。だからこそジャンプのことを忘れることができます。ジャンプはただ表現にすぎないんです。僕はジャンプのことを考えません。ただ跳ぶだけです。
リンクは僕のステージです。そこで僕が望むことは、表現に集中することだけなんです。
IN:そうすると、たとえば4回転ジャンプと3回転ジャンプの差は、あなたにとってどこにあるのでしょうか?
町田:ええ、確かに差はありますね。4回転は力強さを表現します。クワドはパワフルです。クワドを降りたときには、オーディエンスの反応がじかに聞こえてきます。それに対して、3回転はプログラムを引き立たせる飾りですね。
IN:演技中に観客の声を聞いているんですか?
町田:もちろん聞こえますよ! でも、僕はやるべきことをやるだけですけど。
IN:観客は多いほうがいいですか?
町田:ええ、それは!(にっこりと笑う)日本ではフィギュアの会場はここよりはるかに大きくて、いつも満員なんですよ!
オーディエンスは多いほうがいいですね。特にフリーを滑るときには。合唱が入っている「第九」の第4楽章をプログラムに使っていますし、観客が多ければこのプログラムはさらに特別なものになると思いますよ!
「王が広間に入場するときには、常にそれとわかるものだ」
アメリカのキャロル・ヘイス・ジェンキンスを五輪金メダルに導いたピエール・ブリュネ【訳注:自身も1928年と32年の五輪で金メダルに輝いた元フランス人選手】は、かつてそう言った。このボルドーでは、町田が大会に参加することそのものが大きなできごとになるだろう。
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動画早速あげてくださってありがとうございます!
筆者のJean-Christophe Berlotさん、かーなーりまっちーに心酔していますね。インタビューをしながら、語られる語彙に惚れ惚れしている感じが伝わってきます。
「時おり英語につまった」とあるので、全編英語で答えたのでしょうか? すんばらしいです!
もう名言のオンパレードなんですが、ひとつだけ。
The rink is my stage, and all I want to do is to focus on expression.
「リンクは私のステージであり、私は自身の表現に力を注ぐのみである」 by 町田樹
おやすみなさい……。