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(今回も超遅ればせですが…)ジョン・カー、ソチ五輪男子SPを語る
もうね、需要がないことはわかっているんですよ。でも、Absolute Skatingにアップされた、ジョン兄さんのこのレビューはけっこうおもしろかったので、ぜひ記事にしたいと思っていたもので…。やや辛口だったりもしますが、基本的にフィギュアへの情熱あふれるレビューだと思います。五輪のシーンを思い出しながらおつきあいいただけたら嬉しいです。
ちなみに、スコットランド出身の元アイスダンス選手のジョン・カーですが、名字のKerrは本当は「ケアー」と発音するんだそうです。でも日本では「カー」でおなじみなので、ここでは「カー」でいきたいと思います。

元記事はこちら→Olympics 2014 - John Kerr shares his thoughts and grants awards after men's short program


「ジョン・カー ソチ五輪・男子SP感想と、〇〇で賞」


やあ、Absolute Skatingを読んでくれているみんな。僕の名前はジョン・カー。すばらしい姉のシニード・カーと組んで、オリンピックに2回出場、ヨーロッパ選手権銅メダル2回、全英選手権7度優勝の経歴をもっている。これらはすべて、僕がアイスダンスで達成したものだ。その僕がなぜ男子SPのレビューをやろうとしてるのか、不思議に思う人もいるんじゃないかな? 僕にもわからないんだ。でもとりあえずやってみるよ。

最初はSPの上位5、6人について書くつもりだった。ところが、多くの選手がメダルを(まあ、少なくとも銅メダルを)ねらえる位置につけているので、対象を少し広げてみたいと思う。

競技に出ていないときでさえ、エフゲニー・プルシェンコ(いつから「y」を入れてPlyushchenkoってつづるようになったんだ?)は、今大会で最大の話題の的になっていた。大会前には多くの人が、エフゲニーは団体戦には出場するが個人戦は「怪我を理由に」欠場するんじゃないか?と噂していた。6分間練習のときから、彼が腰に問題をかかえていることは明らかで、きっと演技はできないだろうと思わざるをえなかった。個人的には、彼は団体戦後に個人戦から身をひくべきだったと僕は思っているけれど、彼ほど偉大な選手になると、地元の大観衆の前で欠場するのはかなりのインパクトだっただろうことは理解できる。残念ながら、彼はお辞儀をして手をふりながら観客の前から去っていったわけだが、彼がリンクを去った瞬間、会場の空気がちょっぴり冷めてしまったのは確かだった。

エフゲニー欠場というトラウマを乗り越えるために、観客にはあきらかに何か印象的なできごとが必要だった。そしてそれは、不運に見舞われたジェレミー・アボットだった。僕はジェレミーとは数多くの試合やショーで一緒にすべってきたけれど、彼は本当に氷上のアーチストなんだ。だが残念なことに、大きな国際試合ではベストの演技ができないという評判が彼にはあって、この大会も例外ではなかった。冒頭のクワドでひどい転倒をしてしまって、ぞっとするようなその一瞬、演技を続けることはできないなんじゃないかと思われた。永遠とも感じた時間(おそらくわずか10秒ほどだったんだけど)の後、彼はなんとか立ち上がると、そこからラストまで完璧な演技をやってのけた。この演技に観客はあたたかい歓声でこたえた。ロシア人が大部分を占める観客が、ロシア人以外の選手にこれほどあたたかく接したことに、僕は本当に感動したものだ。

ジェイソン・ブラウンというのは、じつにすばらしい新しい才能だ。ジャンプもよく、卓越したスピンをもち、観客とコネクトできる本物の才能をもっている。プリンスの「A question of U」にのった彼の演技を、僕は心から楽しんだ。僕自身、昔この曲ですべったことがあったし、彼がすべてのエレメンツを完ぺきに決めたからだ。クワドなしで上位6位に入ったことは、僕にとっては少々驚きだったが、スピンやステップや演技構成点で得点を積み上げることの大切さがよく現れた結果だった。とはいえ、ブライアン・ジュベールが第1グループに入らなかったのは、彼にとってちょっぴり幸運だったと僕は感じた。

羽生結弦が団体戦と同じぐらいすばらしい演技ができるかどうか、そこに疑いの余地はあっただろうか? 彼自身はまったく疑っていなかったに違いない。高く舞い上がるジャンプ、速いスピン、そしてすばらしい振付で、団体戦よりさらに輝くような演技を見せた。本当に落ち着きはらった、自信あふれる演技だったため、この19歳の少年が初めてのオリンピックで競技していることを忘れてしまうほどだった。SPで100点の大台に乗ったのは驚きでもなんでもない。最大の舞台でのすばらしい演技には、世界最高点が出て当然なのだ。

結弦のあとに続いたハビエル・フェルナンデスには、不幸な結果になった。彼はトロントで結弦のリンクメイトであり、現ヨーロッパ・チャンピオンだ。ハビエルは時おり氷上でのっそりしているように見えることがあるけれど、特にホイペット(小型の競争犬)にも似た結弦の演技の直後では、まるで歩いているように見えてしまった。曲はラリー・クリントンの「Satan takes a holiday」。プログラムをよくすべりきったものの、3つのジャンプのうち2つでミスが出たのは痛かった。それでも3位にとどまれたのは、個人的には少々ラッキーだったかなと思う。

パトリック・チャンが上手いことはわかっていた。でも、去年カナダの「スターズ・オン・アイス」で彼と一緒にツアーに出て、彼がどれほど優れているのか、僕は初めて実感したものだ。ハリファックスでツアーのリハーサルをしたときのこと。その日、彼のスケート靴が届かなかったため、僕の使い古しの壊れたダンス靴を貸すことになった。すると彼は、その靴をはいて、30分の間に5種類のトリプル・ジャンプを立て続けに決めたのだ。ラフマニノフの「エレジー」で演じる彼のSPは、ただただ崇高だった。唯一のミスは3Aのステップアウトで、これで結弦にリードを許すことになってしまった。金メダルはこの2人による頂上決戦となり、あとの選手は銅メダルを争うことになった。

ブライアン・ジュベールはさすがだった。4度目の五輪出場にして、間違いなく彼のベストの演技を見せた。彼はすばらしいジャンプの能力をもつパワフルなスケーターだが、ときに動きが固く、機械のように見えてしまうことがある。若いライバルたちに比べると、ステップやスピンに必要な柔軟性にも欠けている。でも、ジャンプがうまくいっているときの彼には、観客をプログラムに引き込む力がある。僕は彼のプログラムを大いに楽しんだし、プルシェンコが棄権した中、間違いなくベテラン世代を代表する演技だった。

僕はデニス・テンの大ファンなのだが、彼のSPは偉大な演技というには1歩足りなかった。デニスは結弦に匹敵するカリスマ性とスケーティング・スキルの持ち主だけど、それにふさわしい自信は身につけていないようだ。クワドは空中に上がったところまではすばらしかったが、自信のなさが足をひっぱったようだ。さらにコンボが2回転になったことでも失点した。それでも、振付はピカ一で、プログラムはあっという間に終わってしまった気がした。特にすばらしいのはステップ・シークエンス。彼の巧みなブレードさばきがよくわかるステップだった。SPは9位だが、3位までわずか3点差。もしもハビエルにミスが出れば、デニスが銅メダル候補のダークホースだと思う。

男子SPの最大の驚きは、ドイツのピーター・リーバースだったに違いない。団体戦のときもよかったけれど、個人戦ではさらにいい演技を見せた。美しいジャンプ、まあまあのスピン、そしてしっかりまとめた振付で、なんとオリンピックのSPで5位につけた。正直になろう、だれがこんなこと予想していた? 彼はなめらかなスケーティングの持ち主でもないし、表現力豊かなほうでもない。でも、最高の舞台で最高の演技をやってのけたのだ。

僕にとって、エフゲニーの欠場を除いてもっとも残念だったのは、高橋大輔だった。最初のクワドはひどい出来だったし、3-3のコンビネーションでもうひとつダウングレードをくらわなかったのはとてもラッキーだった。誤解しないでほしいんだけど、僕は大輔の大ファンだ。でもこのSPの演技は、彼本来の非常に高いスタンダードからすると、標準以下のものだった。彼はすばらしいスケーティング・スキルの持ち主だし、とてもなめらかな動きができる選手だが、このプログラムはなぜか僕の心を動かさなかった。もともとスピンがあまりよくないこともあり、クワドがダウングレードとなったことと合わせると、大輔がSP4位につけたことに、僕は少々とまどってしまった。

多くの選手に銅メダルの可能性があり、金メダルはパトリックと結弦の一騎打ちになったことで、男子のフリーはとてもおもしろい試合になるに違いない。

選外として、というよりお楽しみとして、いくつか賞を与えてみようと思う。

●将来楽しみで賞:マイケル・マルティネス
●キスクラで目障りだったで賞:ミーシャ・ジー
●ジョニー・ウィアー風「ねえ僕を見て」賞:ミーシャ・ジー
●ベスト・ヘアー:フローラン・アモディオ
●ワースト・ヘアー:ミーシャ・ジー
●「衣装なんてどうでもいいもんね」賞:アレクセイ・ビシェンコ(オリンピックなんだがらシャツのすそは出さないでくれよ!!!)
●「衣装なんでどうでもいいもんね」賞・次点:ビクトール・ファイファー(手袋をしていることを忘れてしまったのだろうか?)
●「オヤジでもまだモテモテ」で賞:ブライアン・ジュベール
●「シャツが一番ふわっとしてた」で賞:パトリック・チャン
●ワースト音楽:ミハル・ブレジナ(「山の魔王の宮殿にて」の最悪のバージョンだ)
●ベスト音楽:ケビン・レイノルズ(演技はステキからほど遠かったけど、AC/DCはいつだってステキだ!)
●「サスペンダーの正しい着用法がわからない」で賞:アブザル・ラキムガリエフ(きっとカザフ風の着用法なんだろうね)
●「プリンスに一番訴えられそう」で賞:ジェイソン・ブラウン


汗 …ええと、ジョン兄さんはミーシャがお気に召さないんですかね?(笑) まあ、ほかの賞もわけわからないんで、あんまり他意はないのだと思いますが!
あと、「もしもハビエルにミスが出れば、デニスが銅メダル候補のダークホースだと思う。」…ズバリでしたね!さすがジョン兄さん!

ちなみに、Absolute Skatingに写真を提供しているカメラマン氏のサイトはこちら→男子SPお写真

JUGEMテーマ:フィギュアスケート

カテゴリ:2013-14シーズン | 17:49 | comments(11) | trackbacks(0) | - | - |
2014年世界ジュニア Inside Skatingより男子(というか昌磨くん)と女子

2014年世界ジュニア選手権も終わりましたが(と、またまた更新が止まっていたくせにさらっと始めちゃいますが^^;)残念ながら日本選手のメダルはならず。
でも、ルーマニア在住のフィギュアジャーナリストFlorentina Toneさんによると、今回のハイライトはしょうまくん!なんだそうです。Toneさんが運営するフィギュアサイト「Inside Skating」にアップされた記事から、男子と女子の部分だけ訳してみたいと思います。

元記事はこちら→2014 Junior Worlds, a short list of joys: Uno, Radionova, Krylova, Orser



「2014年世界ジュニア選手権
 喜びのリスト:宇野、ラジオノワ、クリロワ、オーサー」


(*今回のToneさん的目玉はこの4人なんだそうです。本文では省いてしまいましたが、3人めのアンジェリカ・クリロワは、パスカーレ・カメレンゴと共にアイスダンスで優勝したアメリカのホワイエク&ベイカー組のコーチをしていて、そのクリロワさんの喜びの笑顔がすばらしかった、とToneさんは書いています。)


私にとって、先週ブルガリアの首都ソフィアの「ウィンター・パレス」で開催された世界ジュニアのハイライトは、なんといっても16歳の宇野昌摩の存在だった。正直に言ってしまおう。昌摩のSP「Blessed Spirits」を繰り返し見た今、私は日本のフィギュアスケートの未来は安泰にちがいないと思っている。この少年はすでに、チャンピオンにふさわしいさまざまなものを身につけている。音楽性、才能、カリスマ性、そしてすばらしい謙虚さ。もしフリーでトリプルアクセルのミスがなければ、ショート3位のスモールメダルだけでなく、総合のメダルも手にしていたかもしれない。でも、急ぐ必要はない。きっと彼はもうすぐそこへ到達するだろうから。

薄紫色の帽子をかぶった小人のぬいぐるみを握りしめながら、SPの点が出るのを待っているとき。その後のスモールメダル・セレモニーで、恥ずかしそうな笑顔を浮かべているとき。そんな宇野昌摩を見ていると、将来の謙虚なチャンピオン――この謙虚さは日本人フィギュア選手全員がもちあわせている特質のようだ――の姿がはっきりと見えてきた。もうひとつ正直に言うと、私が特に気に入ってしまったのは、彼が同じ日本の田中刑事に自分のスモールメダルを見せてあげているスナップ写真。選手はだれもが、毎日の努力のごほうびに、いつかは小さな輝く金属の物体を手にしたいと願っているのだ。



でも、フィギュア界にとって今年の世界ジュニアのスターは、ロシアのエレーナ・ラジオノワだった。去年の大会でも優勝しており、女子で初めて世界ジュニア連覇を果たした(男子では2008年と2009年を連覇したアダム・リッポンがいる)。彼女はシニアでも2013年スケート・アメリカで優勝、2013NHK杯では銀メダルに輝いており、レナ(彼女は友達にこう呼ばれている)がもうすでにすばらしい選手であることは疑いがない。そして私がすでに彼女のファンであること、これも疑いのないことなのだ。銀メダルのセラフィマ・サハノビッチや、銅メダルのエフゲニア・メドベデワよりわずか数か月年上だが、ラジオノワのスケートには何度も繰り返し見たくなる成熟がある。

女子は、ラジオノワ、リプニツカヤ、ポゴリラヤが1、2、3位だった2013年の世界ジュニア(ミラノ大会)に続いて、今年もラジオノワ、サハノビッチ、メドベデワというロシア勢が表彰台を独占した。表彰式のあと、ラジオノワはうれしそうな表情でこう話している。
「今日の自分の演技にはとても満足しています。今までのキャリアでも最高の演技のひとつだったと思います。感情をたっぷりこめて、まるで今日が最後の演技であるかのような気持ちですべりました。今回の勝利は、私にとって精神的にも肉体的にも楽ではありませんでした。ずいぶん長い期間、この大会に出場できるかどうかさえ自信がなかったんです。今日何が起きたのか、まだはっきりとは実感できていないですね。でも、今は興奮が大きくなってきています」



ヨーロッパ・チャンピオンのハビエル・フェルナンデス、オリンピック金メダリストの羽生結弦、そして今回、ナム・ニューエンが世界ジュニア・チャンピオンとなったことで、ブライアン・オーサーは今シーズンもっとも成功をおさめたコーチになった。今回の男子でも、もっとも成功したコーチはまぎれもなく彼だった。SP後に会見室で行われたスモールメダル・セレモニーでのオーサーの姿は、ぜひ見てほしいものだった。もう嬉しくてたまらないといった様子で、スマートフォンでナムの写真を撮っていたのだ。ナムのフリーの終盤の、興奮しきったオーサーの姿も必見だった。オーサー自身が1978年にジュニア・タイトルを取ったのと同じく、ナムがみごとジュニア王者になったからだ。



1984年と88年に2度オリンピック銀メダリストに輝いたブライアン・オーサーは、自分自身の思い出をふりかえりながら、今回の世界ジュニアについてこう語っている(→beautyinsport.com
「ソフィアに来たのはこれが2度目だよ。最初は5年前の世界ジュニア。教え子(アダム・リッポン)が優勝したときだ。ほかの選手についても、世界ジュニアにはいい思い出がたくさんある。中でも、自分が世界ジュニアに初出場した1978年は特別だね。このとき初めて、とても大きな大会に出ているんだな、とわかったんだ。これをきっかけに、僕はオリンピックのことを真剣に考えるようになり、大きな夢をもつようになった。選手たちが世界ジュニアを経験しているのを見るのは、僕にとっていつもワクワクすることだよ」



最後にもうひとつだけ。私はじつは、この大会で日本の宮原知子に表彰台に上がってほしいと思っていた。彼女の演技には、他の女の子たちにはない(もちろんラジオノワは例外だが…)大人っぽさがあるように感じるのだ。
また、以下の選手たちには、やがて時が来たときにはうまくシニアレベルに上がっていってほしいと思った。カザフスタンのエリザベート・ツルシンバエワ――小柄だけど、確かな才能がある選手だ。ロシアのアディアン・ピトキーエフ――彼のプログラムにはすでに難しいエレメンツが組み込まれている。ラトビアのデニス・バシリエフ――彼のチャイコフスキー「くるみ割り人形」はすばらしかった。そしてロシアのペアのビガロワ&ザクロエフ組――氷上での姿勢の美しさと音楽性がすばらしかった。

宮原知子選手と本郷理華選手。そして、ソチの羽生くんキスクラですっかり有名になってしまった^^;スケ連の小林芳子強化部長。


超個人的ですが、私がひそかにどよめいてしまった写真。オーサーが身を乗り出して見つめるモニターに映るのは、中国のフー・ジャン(張鶴)くん! 3Aがなかなかマスターできず今回11位に終わったフーくん(2年前は6位だったんですけどねー泣)ですが、もしかしてオーサー「この子はなかなかいいもの持ってるんだ。僕がアクセル教えてあげよっかなあ」とか言ってたり!?(…はい、希望的妄想です)


エキシでの優勝選手たち。左端は中国ペアのシャオユー・ユー&ヤン・ジン組。それにしてもナムくん、背伸びましたね〜

きゃvネコ …はっきり言ってToneさん、ぬいぐるみ握ってる場面とか、刑事くんにメダル見せてる写真が好きとか…しょうまくんにかなり萌えちゃってる感がありますね〜!
でもほんと、ジュニアの中で見るとスケーティングはきれいだし、表現の面でも抜きん出ているものがあるしょうまくん。「将来のチャンピオン」来るでしょうか? 来てほしい! 来い来い!
あと、最後にあげている知子ちゃん、ピトキーエフくん、ラトビアのバシリエフくんなどなど、私と趣味が近くてうれしい人選でした。これからどんなふうに伸びていくか、楽しみです!

(*ナムくんの名字の表記には諸説ありますが、とりあえずナムくんが自分で言っているのに近い「ニューエン」でやらせてもらってます。ワールドではどう表記されるでしょうか…)

JUGEMテーマ:フィギュアスケート
カテゴリ:宇野昌摩 | 04:32 | comments(4) | trackbacks(0) | - | - |
もうカナダの未来を託された? 世界ジュニア王者ナムくんとオーサー会見

みごと2014年世界ジュニア・チャンピオンとなったナム・ニューエンくん。カナダでは「パトリック・チャンの後継者!」「4年後の平昌五輪ではついにカナダの呪いをやぶってくれるのか?」と一気に期待が高まっている様子。
そんなナムくんですが、世界ジュニアを終えて、さいたまワールドに向かう前のあわただしい期間に、本拠地のトロント・クリケット・クラブで公開練習と記者会見を開いたようです。会見にはもちろんオーサーも同席。その会見についての記事です。「ソチ後」はもうすでに始まっているんですねー!(怖)

元記事はこちら→Nguyen’s world junior title shows future of Canadian figure skating is bright THE CANADIAN PRESS ON MARCH 18, 2014.

*ナムくんの名字は、とりあえず本人が言っているのに近い「ニューエン」でやってます。「グエン」「イングエン」諸説あるようですが…。



「ナム・ニューエンの世界ジュニア優勝で、
 カナダのフィギュアの未来は明るい」


2010年バンクーバー五輪のエキシビションに出演したとき、ナム・ニューエンは11歳だった。チェックのズボンと大きな丸めがねをつけて観客を魅了した、ちっちゃな神童だった。
フィギュアスケートの未来の象徴、という役割での出演だった。

その「未来」がこんなに早くやってくるとは想像もしていなかった、とナムは言う。世界ジュニア選手権の優勝からまもない火曜日、ナムは記者たちの前でこう話した。
「ほんとびっくりですよ。僕はオリンピックのリンクに立ったけど、ただエキシをやっただけだったから。でも、あれがきっかけになって、多くの人が僕の存在を知ってくれたと思います。その日から今まで、僕は一生懸命練習してきたし、その間に多くの成果もあげてきました。そして今、世界ジュニア・チャンピオンとして、こうやって話しているのだから」

ナムはトロント出身の15歳。トロントのクリケット・クラブで記者会見がおこなわれたこの日、彼はリンクでトリプルアクセルをやすやすと連発していた。この1年間で15センチ以上も身長が伸びたそうで、今シーズンの初期にはなかった大人っぽさも身につけ始めた。

ブルガリアのソフィアで開催された世界ジュニアでは、ショートとフリーの両方でノーミスの演技をし、フリーでは2本のトリプルアクセル――パトリック・チャンでさえ何度か足をすくわれてきたジャンプだ――に成功して、みごとタイトルを取った。世界ジュニアに出場できる上限より3歳も若い年齢での優勝だ。
「フリーの得点を見たときには、信じられない気持ちでした。国際試合であんなに高い点が出たのは初めてだったから…。(演技を終えて)キスクラに座ったときには、頭の中にたくさんのことが押し寄せてきました。“僕はすごい演技をしたんだ”とか、いろんなことを考えていた。そしたら得点が出て、“オーマイゴッド。信じられない!”って」

ナムの激動のシーズンはまだ終わりではない。来週には、東京で開催されるシニアの世界選手権にカナダ代表として出場するからだ。
そこにチャンは出場しないが、最近ではますますチャンと比較されることが多くなっている。
「僕が次のパトリック・チャンになるかもしれないって言う人もいます。ものすごく光栄なことだと思っているんです。彼は世界選手権3連覇の五輪銀メダリスト、それってものすごいことだから」

ナムがフィギュアスケートを始めたのは5歳のとき。チャンと同じように、もともとはホッケーのスケーティングスキルを磨くためだったという。
「パックを追いかけるより、ジャンプやスピンのほうが気に入ったんです」
その後、カナダ選手権のジュブナイル、プレノービス、ノービス、そしてジュニアの各レベルで優勝。そのすべてで最年少チャンピオンだった。

ナムは2012年の夏に、ブライアン・オーサーの指導を受けるため、バンクーバーからトロントへ移った。五輪銀メダリストに2度輝いたオーサーは、ソチ五輪では羽生結弦を、バンクーバー五輪ではキム・ヨナを、それぞれ金メダルに導いている。
クリケット・クラブでの火曜日の会見で、オーサーはこう語った。
「ナムが僕のとこに来たとき、僕は言ったんだ。“よーし、かわいい要素はもう卒業だ”って。確かに楽しくてかわいい演技だったよ。だれもが“わあ、彼ってかわいいわね”と言っていた。“でも、君もこれからは大人にならなくちゃならない。そういうスケートをしなきゃいけなんだよ”そう言って、僕らはそっちの方向を磨くことにしたんだ」
「ジャンプだってそうだ。彼のジャンプはひょろっとした小さなジャンプだった。ノービスやジュニアではそれで通用するけれど、シニアに上がったときには、滞空時間の長い大きなジャンプが跳べなきゃならない。リンクを広く使うこと、そしてスピードも必要だ」

ナムがトリプルアクセルを習得したのは、今年の1月になってからだった。この1年ちょっとで身長が140センチから165センチまで伸びたという。この急激な成長期が悪影響をもたらしていた。[*これ、原文どおりなんですが、140→165じゃ25センチ増ですよね。上にこの1年で15センチ伸びたとあるので、ここは間違いかなあ…と思うのですが]
「アスリートにとって、これは大変なことだよ。両親など彼の周囲にいる人間にとっても、このプロセスを理解するのは大変なんだ。それでもがんばって乗り越えなきゃならない。ナムは急に背が伸びたからね」と、オーサーは言う。「フィギュアはバランスと調整が必要とされる競技だ。そんな中で急に背が15センチも高くなってごらんよ。その上、思春期になって体も変化していた…。でも、ナムは我慢強かった。がんばって乗り越えようとし続けたよ」

ナムとオーサーは、もう4回転ジャンプに目を向けているという。これから春から夏の間に4回転に取り組んで、可能なら来シーズンのプログラムに入れたいと考えている。
「ナムは新しいジャンプに対してちょっと怖がってしまうところがあって、あとから“あれ、うまくいったじゃん”って自分でびっくりするタイプなんだ。高飛び込みのようなものさ。台の上に立って、飛び込む。そしたら、すっかり楽しくなって、もう一度台に登っている自分に気づく、そんな感じさ。今はクワドを少し恐れているけど、今やらなきゃいけないことはよくわかっているんだ」

オーサーによると、ナムは一度マスターしたジャンプはめったに失敗しないタイプだそうだ。この日の練習でクリーンなトリプルアクセルを立て続けに20本ほどもきめたのは、そのためなのだろう。
「彼の場合、しばらくは成功と失敗を繰り返して、なかなかうまくいかない。だけど、突然マスターしたと思ったら、完全にマスターしてしまうんだ。アクセルもそうだった。手に入れるまで時間がかかるけど、一度手に入れたら身につけてしまうのさ」

ナムはその日、ノースビュー・ハイツ中等学校で2時間の授業を負えてから、練習に来ていた。今学期は2クラスしか受講していない。じつはソチ五輪に選ばれる可能性を考えて、秋の学期も同じく2クラスしか取っていなかったという。
両親はふたりともベトナム生まれ。父のソニーはエンジニア、母のスーはビジネスアナリストの仕事をしている。9歳の妹のキムもクリケット・クラブでスケートを習っている。

ナムを“フィギュアスケートの未来”と呼ぶのは必ずしも大げさではない、とオーサーは言う。
「これから新しい選手たちが出てくるだろう。世界ジュニアで4位か5位に入った選手たち――今後目にすることになるのは彼らだと思うよ」オーサーはそう話す。「今、変化が起きようとしているんだ。変化は誰が予想していたよりも早く起きつつある。ナムにとって、ジュニア王者としてシニアの世界選手権に行くこと――このことが彼を上のレベルに引き上げてくれるだろう。そして、彼ならそれにこたえるスケートをしてくれると思うよ」

オーサーによると、ナムは体の成長と同じぐらい急激に、自信と成熟を身につけてきた。もともとは世界ジュニアで5位に入ることを目標としていたが、この世界ジュニアに向けてカナダを発つ段になって、急きょ目標はメダル、さらに表彰台の真ん中に立つことに変わっていたという。
「ソフィアに着いたそのときから、ナムはすべての公式練習で好調さと安定感と力強さを見せていたんだ。そんな様子をジャッジたちも見ていたよ。ほかの男子選手はみんな、つまずいたり転倒したり乱調だった。一方ナムは、毎日の練習のたびにしっかりと自分をコントロールしていたんだ」

ソチでの羽生の成功に続いて、カナダ人選手の教え子がすばらしい成果をあげていることに、オーサーは誇りを感じているという。ヨーロッパ選手権で優勝したスペインのハビエル・フェルナンデスも、彼の教え子だ。
「いい気分だよ。なぜカナダ人選手を育てないんだって、ちょっと批判されていたのはわかっていたからね。でも、ナムを含め、みんな僕の指導を受けるためにやってきた選手たちだ。僕は仕事をこなしているだけ、自分がやるべきことをやっているだけだよ」
「それでも、カナダのジャケットを着ることができて、カナダ人選手にも成果を出させることができて、誇らしい気持ちだよ。特にナムにね。彼には輝かしい未来が待っている。僕は誇りをもってカナダのジャケットを着るよ」

わずか19歳で五輪金メダリストとなった羽生、そしてフェルナンデス。そんな選手たちと一緒に練習していることは、ナムのために大いに役立っている、とオーサーは言う。
「彼らの姿を見ること。彼らがどんな練習をし、どんな責任を果たしているのかを目にすること。技術的な面だけとっても、その高さやスピード、カリスマ性を見ることで、それらの一部はナムに伝わっていくんだよ」




クリケット・クラブでの記者会見で語るナムくん。ふだんはお茶目で笑顔いっぱいなナムくんですが、か〜な〜り緊張してますねーw 今は技術的要素を磨くと同時に、ナムくんならではの個性やスタイルをつくっていこうとしている、とオーサー談。


バンクーバー五輪のエキシは残念ながら探せなかったのですが、その前年の2009年四大陸選手権エキシにゲスト出演したナムくん。4:10あたりからパトリック・チャン(若い!)にエスコートされて出てきます。なるほど、かわいいのはいい加減にしろとオーサーに言われたそうですが、これはかわいいわ!

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