「ワグナー、オリンピックで3-3を」
全米女王、新プログラムと、アルトゥニアン、ウィルソンについて語る
新プログラムの振付を終え、スケジュールもほぼ整ったというアシュリー・ワグナー。彼女は今、標高1600メートルを超える高地、カリフォルニア州レイクアローヘッドで、新コーチのラファエル・アルトゥニアンとともに、ソチを目指すレースに備えようとしている。
「ここのところ、ずっと移動続きだったの。カリフォルニアとカナダを行ったり来たりして、ショーにも出て」22歳のワグナーは言った。「やっと地元で練習に集中できるわ、ラフ(ラファエル)と一緒に」
ワグナーは6位となった2013年世界選手権以降、「Stars on Ice」のツアーでカナダを回った後、振付のため2度トロントを訪れた。1度目はデビッド・ウィルソン、2度目は今月始め、シェイリーン・ボーンに振付をしてもらうためだ。カナダ行きの合間にはソウルへ行き、キム・ヨナのショー「All That Skate」に出演したが、ここへ来て活動を調整することにした。今月末に開催される浅田真央のショー「The Ice」への出演を辞退したのだ。
「バランスをとった、と言えるかな。演技の練習はいつも欠かすことはできないわ、たとえショーであってもね。演技へのプレッシャーを感じる状況に自分を置くことは、常にいいことだと思っているわ」
「その上、人は誰でも生活費を稼がなくてはならない。それでもThe Iceを辞退せざるをえなかったのは、本拠地を離れている時間、練習できない時間があまりにも長すぎるから。でも、ノーと言うのはつらかったわ。ファンの前で演技ができるのは、いつもすばらしい経験だから」
軍人を父にもち、子供時代に何度も引っ越しを経験しているワグナーは、変化というものを恐れない。2011年にコーチをジョン・ニックスに変更した彼女は、拠点をワシントンDCからカリフォルニアのアリソ・ヴィエホに移した。ここでフィリップ・ミルズの振付を得て、2年連続で全米女王に。そのミルズと、この4月にたもとを分かつことを決定。その後まもなく、ニックスの半引退宣言によって、アルトゥニアンを彼女のチームに加える決断をすることになった。
「デビッド(・ウィルソン)に依頼したのは、彼なら今までの私とはまったく違う方向へ導いてくれると思ったから。コーチについては、自分には技術面に強い人が必要だとわかっていたの。だから、ラフがぴったりだったのよ」
Icenetwork.com(IN):80マイル(約128km)以上も離れた場所にいる2人のコーチにつくことで、スケジュールに影響はないんでしょうか?
ワグナー:そんなに大変でもないのよ。スケジュール的にはすっきりしてるわ。月曜から木曜まではレイクアローヘッドで(アルトゥニアンと)練習。その後、車で(アリソ・ヴィエホへ)行って、金曜日とほぼ毎週土曜日はニックス先生と練習。運転には長い時間がかかるけど、まあカリフォルニアではふつうのことだもの。
IN:一連のことについて、ニックス先生はどう考えているんですか?
ワグナー:喜んで受け入れてくれたわ。今回のことは、ほとんどニックス先生の事情が理由で決めたことだもの。もう遠征に同行しないと先生が言ったとき、私はすごく納得できたの。今年84歳になるし、1週間のうちに日本へ行ってまた戻ってくるのは彼には無理だもの。今回の私の決定については、すべて認めてくれているわ。[*1週間で日本…というのはジャパン・オープン出場→すぐにGPS初戦のスケート・アメリカへ、のことだと思われます]
IN:ラファエル・アルトゥニアンは技術的に優れていることで有名ですよね。それで彼に決めたのでしょうか?
ワグナー:ええ、もちろんよ。選手には感覚にたよってジャンプを跳ぶタイプと、技術に基づいて跳ぶタイプがいるの。私は昔から感覚で跳ぶほうだった。技術的なことをみっちり仕込んでくれる人には一度も教わったことがなかったの。
私の3-3(3F-3T)が安定していないことにはちゃんと理由がある。自分には技術的なコーチが必要だとわかっていたわ。それに、ラフと練習するのはすごく楽しいのよ。彼は知識がとても豊富。彼が言うことは、そばで聞いている人には何のことかわからないかもしれないけど、私にとってはすごく明確に頭に入ってくるの。
IN:ここ2シーズンはとても充実していましたよね。今の目標はオリンピックと世界選手権の表彰台ですよね。実現するためには何が必要でしょう? 3-3ですか?
ワグナー:まさにそう、それなのよね。すばらしいプログラムを作ってもらったし、スピンも向上したわ。3-3を跳べないことだけが私の足かせだと思うの。それとジャンプの質も向上させなきゃならないかしら。とにかく、安定して跳べるようになることね。
IN:リンクメートに仲良しのアダム・リッポンがいるというのは、(アルトゥニアンにつくようになったことの)うれしいおまけでしたね。
ワグナー:アダムと一緒に練習できるのはすごくうれしいわ。彼とは私が14歳か15歳ぐらいのころ、ほんとに大昔から兄のように仲良くしてるの。五輪シーズンには、カリカリしすぎてるよとか、落ち着けよとか言ってくれるような人が必要になる。その点、私にとってアダムは完璧な人よ。リンクにはネイサン・チェンもいるし。
アリソ・ヴィエホのリンクにいるのはほとんどペアの選手ばかりだから、高地(レイクアローヘット)へ行って、クワドやトリプルアクセルの練習をしている選手に会えるのはいいことだと思う。
IN:フリーはプロコフィエフ作曲の「ロミオとジュリエット」ですね。あなたとウィルソンがこの曲を選んだわけは?
ワグナー:彼が「ロミオとジュリエット」のこのバージョンを持ってきたんだけど、私は最初、「絶対だめ。私には無理」って言っちゃったの。でも、彼が絶対にこれがいいと言うので。カナダで彼と振付した1週間は、ものすごく努力をしたわ。結果はすばらしいものになった、私はそう思うわ。
デビッドは一緒に振付をしていて驚異的にクリエーティブな人なの。プログラムのいたるところに、常に目を引く動きがある。彼は私のスケートのレベルを引き上げてくれた気がするわ。曲の解釈、表現、表情をちょっとずつよくしてくれた。最終的に大きな違いを生むのは、こうした細かい部分なのよね。
IN:2シーズン前には「ブラック・スワン」を滑り、狂気をはらんだ主人公を演じましたね。その点、ジュリエットはソフトなキャラクターです。
ワグナー:(ジュリエットも)あれほどあっという間に深い恋に落ちてしまう人だもの、間違いなく少々クレージーだと思うわ。特にプロコフィエフのバージョンには、最愛の恋人の運命を知っていくジュリエットの緊張感と激情を感じるわ。それがよく伝わってくる音楽。間違いなく、クレージーな恋につきもののドラマチックさと激しさがある。
ここ最近私が滑ってきたものとはまったく異なるプログラムね。この2シーズンは強い女性を演じてきたわ。今シーズンは、音楽は力強く、ストーリー性もはっきりしているけれど、演じるキャラクターはまったく違うわ。