先週、アシュリー・ワグナーがFacebookにアクセスしてみると、「プロフィール欄を完成させてください」というメッセージが表示されたという。
「笑っちゃったわ。Facebookにアクセスしたら、私のプロフィールは完全には記入されていません、というメッセージが出てきたの。出身大学が書かれていない、というのね」と、ワグナーは言った。「大学へ行っていなければ人間として完全ではない、みんなそう思っているのかしら」
今月、ワグナーのウエスト・ポトマック高校時代の友達の多くは、大学の卒業式の舞台に上がり、卒業証書を受け取った。だが、ワグナーにはもっと大きな舞台が待っている。2014年ソチ五輪だ。
「私はまだ大学を卒業していない。でも私は、人があまり経験できないような人生を送っているわ」彼女はオリンピックを目指しながら、パートタイムで勉強している。
ソチ五輪は、全米選手権2連覇中のワグナーの輝かしい経歴を、さらに完璧なものにするだろう。2010年のバンクーバー五輪では、彼女は補欠だった。
「あとわずかなところで、バンクーバーへの出場を逃してしまった。あの出来事がなければ、今の私はないと思うわ。あのおかげで、私は自分のキャリアを見つめ直し、自分の目標を実現するために難しい決断をくだすことができたの。今は自分にオリンピックに出られる力があると感じているわ」
出られる力がある、どころではない。2005年のミシェル・クワン以来となる全米2連覇を果たしたワグナーは、アメリカの女子フィギュアの先頭に立っている。
「今の私は、4年前の自分とはまったく違う」そう語るワグナーは、最近ナイキとのスポンサー契約を結んだばかりだ。「あの頃は、スケートはただ楽しいからやるものだった。今持っているような目標を、当時は持っていなかったの」
当時、ワグナーは18歳で、デラウェア州のウィルミントン・スケーティング・クラブの近くに、コーチのプリシラ・ヒルと同居していた。シニアに上がってフルシーズン競技に出たのは、この年が最初だった。
今は、5月18日に誕生日を迎えたばかりの22歳。練習拠点であるカリフォルニア州のアリソ・ヴィエホのリンクの近くで、ひとり暮らしをしている。2009-10シーズン以降、国際大会で獲得したメダルは6つ。2012年四大陸と2012年スケート・アメリカ、2012年TEBでは金メダルに輝いた。
「今、スケートは私の人生よ」とワグナーは言う。「ここ2、3年の間にたくさんの大きな変化を決断してきたわ。それは私がフィギュアという競技と自分の演技に打ち込んでいるから。自分自身が責任をもってやっている。そのほうがずっと充実しているわ」
ワグナーにはさらなる変化が待ち受けている。この4月、彼女は振付師フィリップ・ミルズとはもう組まない、と発表した。全米2連覇中に滑ったプログラムはショート、フリーともすべてミルズの振付だった。
「新しいものを取り入れる時期だと思ったの。フィリップは偉大な振付師だし、彼が作ってくれたプログラムでたくさんの成功を収めてきたわ。でも、オリンピックイヤーに向けて、まぜっかえしてみたいと思ったの。誰かと居心地よくしているのは楽だけど、居心地がいい状態では成長はしない。私は常にうまくなりたい、向上したいと思っている。ちょっと引っかき回してみること、新しい振付師と組むこと、そういうことによって、それができるんじゃないかと思ったの」
世界選手権で5位となり、国別対抗戦でアメリカが優勝し、長いシーズンが終わって以降、ワグナーは5週間練習から遠ざかっているという。だが、ハワイでの休暇を終えて、今、練習を再開しようとしている。
「今はプログラムを決めるための、ごくごく初期の段階にいるわ。まだ絶対これで滑りたいっていう曲は見つけられていないけど、きっと見つけられると思ってる。プログラムはまだ完成していないけど、今シーズンはものごとを急いで進めるには重要すぎるシーズンよ。2本とも、絶対にこれを演じるのが大好きだと思えるプログラムにしたいの」
ショートの振付をおこなうのは、元アイスダンスの世界チャンピオンのシェイリーン・ボーン(パートナーだったビクター・クラーツとカナダ代表として3度オリンピックに出場)だ。
「シェイリーンにはエキシビションの振付をやってもらったことがあるんだけど、一緒に仕事をしていて本当にすばらしい人なの。振付のプロセスをすごく楽しいものにしてくれる。彼女のプログラムはすべての動きが複雑で緻密。スケーターとして向上させてくれるわ。今季のショートは、おしゃれでセクシーなプログラムにしたいの。シェイリーン以上にそれができる人はいないわ」
フリーの振付はデビッド・ウィルソンだそうだ。
どんな曲を選ぶにしても、ワグナーにとっての最優先事項はプログラムの技術的レベルを上げることだ。3回転-3回転のコンビネーションジャンプを安定して跳べていないワグナーは、ここ2回の世界選手権で4位と5位に終わっている。
「私はいつも、いやになるほどぎりぎりでメダルを逃しているの」と彼女は言う。「その差は3-3だと思う。3-3が選手を分けるのよ」
非営利の教育団体"Classroom Champions"の大使に選ばれているワグナーは、来季は早い時期から、自分が差をつけるほうになりたいと考えている。
「今季はプログラムで3-3を跳ぶまで長く待ちすぎたと思うの。やっと試合で入れられる状態になったときには、プレッシャーで崩れてしまった。来季は二度とそんなふうにはならないつもりよ」
先日まで参加していたカナダの「スターズ・オン・アイス」のツアーで、すでにそれを試してもいる。
「できるだけ3-3になじんでおきたいから、跳べるチャンスがあればどんどん試しているわ」
そう言うワグナーは、来季は試合で3-3を入れてくる可能性が大だ。
だが、ワグナーにとって今季もっとも重大な意味を持つ変化は、振付師の問題でも3-3のコンビネーションの問題でもないだろう。2シーズン前からコーチをつとめてきた84歳のジョン・ニックスが先月、今後はもう試合に帯同できないと、彼女に告げたのだ。
今後は、毎日の練習ではニックスの指導を受けるものの、別にサブコーチを雇う予定だ。練習のときにはニックスと共にコーチングし、試合のときには彼女に同行できる人物をさがすのだという。
「近々、2、3人とのトライアウトを予定しているわ。適当に選んでそれで決まり、みたいなことはしたくない。一番ふさわしい人を選びたいの。きっともうすぐそんな人が見つかると思う」
「スターズ・オン・アイス」で共演したスケーターたちが、候補をしぼる手伝いをしてくれたという。
「まだツアーに出ている最中に、サブコーチの候補を検討しなくてはならなかったの」
今後も南カリフォルニアからの転居は考えていないというワグナーは、そう語った。
「スケーターのみんなは、私が候補に挙げていた主だったコーチ全員と組んだ経験をもっていたのよ。今は候補を数人にしぼったところ。でも、トライアウトが済むまでは誰にも決めないつもりよ」
今後1〜2週間で決まりそうだという。
いずれにせよ、ソチまであとわずか254日だ。
「私の頭の中にある理想のシナリオはこうよ。全米選手権で優勝してオリンピック代表になる。ソチへ行き、ショートとフリーをパーフェクトに滑って、フリー後にはお客さんからスタンディングオベーションをもらう。そして金メダルを取るの。表彰台ねらいでもいいんだけど、でも私は金メダルがほしいのよ」
もしシナリオどおりにいけば、Facebookもワグナーの経歴にそんなに不満を持つこともなくなるだろう。
「でも、Facebookのプロフィール欄のどこに“オリンピック”って書けばいいのか、わからないわね」
彼女はそう言って笑った。
「わかるようになるといいな」
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ほお、新しいショートは、シェイリーン・ボーン振付の「おしゃれでセクシーなプロ」ですか!!
ここのところ、映画音楽やクラシック音楽の、わりと正統派な路線でぐんぐん評価を上げてきたアシュリーですが、オリンピック・シーズンに賭けに出ましたか! 大事なシーズンだからこそ、ひっかき回したい(mix it up)とは、強気な決断ですが、それだけ自分の演技力に自信をつけてきたんでしょうね。
そして、オリンピックでスタオベをもらいたいという勝負のフリーは、ウィルソン振付。渾身のプログラムになりそうですね!楽しみすぎますー。
そして、そして、やはり彼女も……もちろん「金メダルがほしい」んですね!!
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