NHK杯から1週間もたってしまって今さら感満載ですが、AFP通信社が世界のメディアに配信したこの記事。これは絶対に掲載したいなあと思っていました。
先日、N杯の会場のことに関するコメントをいただきましたが
(cocoさんありがとうございます!)、あの会場、じつは震災直後には遺体を安置する場所として使われていたんですよね…。そのことについて書かれた記事です。
もと記事はこちら→
Japan win raises roof in tsunami morgue 「日本選手の勝利が安置所にひびかせた大歓声」
東日本大震災(原文ではtsunami)のあと、遺体安置所として使われていたアリーナ。その場所で、地元出身の高校生・羽生結弦が感動的な勝利を飾ったことは、復興への努力を続けている地元にとって大きな励みとなった。
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2011年3月に東日本を襲った大地震と津波は、地域全体を崩壊させ、18000人以上の人命を奪った。その悲劇から立ち直る一環として、スポーツが使われている。
フィギュアスケートのグランプリシリーズNHK杯は、宮城県利府町のセキスイハイム・スーパーアリーナ(客席数7000)で開催された。このアリーナがあるエリア(宮城県総合運動公園)では、ほかにU-20サッカー女子ワールドカップや、トライアスロンの国際試合なども開催されている。
アリーナ自体も、安置所としての緊急の役目を終えると、修復され、神主によって清められた後、7月のハンドボール全日本選手権など、コンサートやスポーツイベントの会場として使われてきた。
日本スケート連盟は、NHK杯の会場として宮城を選んだ理由を、「世界中から寄せられた支援に応え、日本の復興のメッセージを発信するため」としている。
「日本の東北から、ありがとう。」日曜日におこなわれたエキシビションでは、被災した「東北」という地域名とともに、数か国語で書かれたメッセージがリンク上に投影された。
その前日の男子フリーでは、隣接する仙台市出身の高校生、17歳の羽生が優勝し、地元ファンから「おかえりなさい」という大歓声がわき起こった。
「羽生くんのおかげで、私たちもがんばろうって思えます」会場外の露店で焼きそばを売っていたヨネザワ・ユキコさんはそう言った。
自宅と練習リンクが被災した羽生は、グランプリシリーズ2勝目の喜びにひたりながら、(フリー演技直後)氷をそっとなでた。「リンクに声をかけたんです、本当にありがとうって」彼はあとでそう語った。
2010年世界ジュニアで優勝した羽生は、ショートで自らの世界最高得点を更新して、フリーでも首位だった。大会当日、2度の中規模の地震があり、暗い記憶がよみがえったが、それでもひるむことはなかった。
アイスダンスで優勝したアメリカのメリル・デービス&チャーリー・ホワイト組も、特別な感情を抱いたという。
「アイスダンスの素敵な点のひとつは、見る人の感情をゆさぶることができることだと思うんです」とデービスは言う。「だから、ここのお客さんの前で演技できたのは、私たちにとって光栄なことです。みなさんに元気を与えることができたらうれしいです」
2011年世界選手権金メダリストの2人は、去年と今年の夏、ショーに出演するため日本で過ごした。特に去年のショーは「常に震災の犠牲者にささげるものでした」と彼女は言う。
セキスイハイム・スーパーアリーナは、震災から3か月間、遺体安置所として使われた。通常の施設ではとうてい追いつかなかったため、ここをはじめ多くの建物が安置所となっていたのだ。
約1000体の遺体が検死され、遺族と対面したこのアリーナは、大津波が壊滅的な被害をもたらした海岸沿いの地域から、わずか8km離れた高台に建っている。
地域再生への数々の努力にもかからわず、東北地方は今もなお明らかに荒廃していて、南北にのびる海岸地帯は戦後の廃墟さながらだ。
今も数十万もの人々が事実上、家を失ったままだ。地域の再建が遅れていたり、福島第一原発の放射能汚染によって危険区域となってしまい、いまだに戻れないためである。
そんな中、スポーツ関連のイベントがさらに予定されている。今週末は、女子レスリングの小原日登美をはじめとするロンドン五輪のメダリストたちが、仙台市の街中をパレードすることになっている。
また、12月26日には同じ仙台市で、Jリーグ選抜とヨーロッパで活躍する海外組のサッカー選手たちとのチャリティーマッチが開催される。
(27/11/2012)
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 今年のNHK杯。宮城県で開催、しかも高橋、羽生というワールドメダリスト2人が出ると決まったとき、ちょっと複雑な思いを持った方も多かったんじゃないでしょうか?
話題が集まるのはどうしても羽生くんだろうし、試合を“復興ショー”に使うのはどうなの?当の羽生くんにもそんな役割を負わせるのは違うんじゃないのかなと…。
でも、このアリーナが遺体安置所として使われていたことを、遅ればせながら知ったとき、私はそんな気持ちは消えてしまいました。たくさんの棺が整然と並んだ体育館のような場所の映像は、今でも頭の中にはっきりと残っています。この場所で選手たちがどんな演技をするのか、それだけを見ようと思うことにしました。
そして、羽生くんのあの完璧なショート、ミスがあっても会場を虜にしたフリー。
フリーの得点の出方については、いろんな意見があるんだと思います。たしかにプログラムとしての完成度はまだ高くないし、スタミナ切れした後半にはスケーティングも荒くなってしまいます(スケアメより大幅に改善してきたのはすごいですけどね)。
でも、カート・ブラウニングも魅せられてしまった、あの終盤のスピンからフィニッシュにかけての笑顔…あのとき、会場がぱーっと明るくなったような感じがしたんです。ありきたりの言葉ですみませんが、あの瞬間のためにこの会場があったんだなあと…。
そして、そして、このEX。
・゜・(ノД`)・゜・
…正直に言うと、「復興をアピールするためのNHK杯」というスケ連の方針には、今でも違和感はあります。でも、そんな大人のもくろみを羽生くんはあっさりと引き受けて、期待された以上に大役をつとめあげ、本当に東北の希望の星になってしまいました。すごい人です、やっぱり。
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