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カート・ブラウニング インタビュー@Absolute Skating パート1
今でもショースケーターや振付師として、世界的に人気の高いカナダの元世界チャンピオン、カート・ブラウニング
おなじみのAbsolute Skating(7月15日付)では、そのカートにロングインタビューをおこなっています。これがとっても興味深い、充実の内容なのですが、とにかく長い!
とりあえず今回は記事のPart1のみ訳してみたいと思います。

元記事はこちら→Kurt Browning: "I just don't think that skating should be predictable." part1
Text by Tina Tyan  Photos © Tina Tyan, Suzie Herrmann & Skate Oakville

カート・ブラウニング インタビュー
「スケートは予測不可能でいい」パート1


2012年6月、カート・ブラウニングは46歳になった。この誕生日にいたる1年間に、彼は世界中で45ものショーに出演し、「Battle of the Blades」(カナダのTV番組)のホストに名をつらね、カナダCBC局のコメンテーターとして主要な大会すべてで解説をし、いくつかのセミナーで講演をし、ふたつのアイスショーのツアーで振付・演出をつとめた。また、Red Rose Tea(カナダの紅茶メーカー)のShare the Warmthキャンペーンの宣伝役をつとめたり、チャリティーでAngry Birdの絵を描いたり、妻でバレエダンサーのソニア・ロドリゲスと共著で「T is for Tutu」という児童書を出版したり、Young Artists' Showcase(若手の振付コンテスト)でジャッジをつとめたり、ゴルフのチャリティマッチでプレーをしたりした。すべて、2人の幼い息子の子育てをしながら、である。

1989〜91年、93年と4度世界チャンピオンに輝いたカート・ブラウニングだが、20年近く前にプロに転向して以来、今もっとも多忙をきわめていると言っても過言ではないだろう。そのわけは、彼と少し話をすればすぐに理解できる。彼はエネルギーに満ちあふれている。そして、そのエネルギーを使って、フィギュアスケートというスポーツに熱心にかかわりつづけているのだ

カートは時折、セミナーを開いては、スケートへの情熱を若い選手たちに分けあたえている。セミナーでは、技術的なことをあれこれ説明するよりも、子供たちがスケートをもっと楽しみ、自分がやっていることに対してより高い意識をもって氷に立つことを意図しているという。



(スケーターたちに)欠けているもの、特にカナダの女子選手のスケートに欠けているのは、喜びだと僕は思うんだ。今自分がやっていることにこだわりすぎて、かえってうまくできていない。若い子供たちには――もし選手になるチャンスがある子がいれば――スケートは楽しむものなんだということを忘れないでほしい」と彼は言う。

家族や子供たち自身が(スケートのために)大きな犠牲をはらっているからこそ、スケートを楽しむことが重要なんだ、カートはそう考えているという。

セミナーで、彼は子供たちにこんなふうに言う。「トップレベルで競技するチャンスにめぐまれる子は、この中にはほとんどいないだろうね。だからこそ、君たちが自分のスケートを楽しむことが大切なんだ。せっかくのパーティに行けなかったり、欲しいと思ったワンピースを買ってもらえなかったり、君たちの親御さんが車をもう一台買うのをあきらめたり……いろいろあるだろ? 君たちがシングルアクセルを習うために、何かが犠牲になったんだ。そのアクセルを習得するのにどれだけ苦労したのか、そこを大切にしてほしいんだ。そして、そのアクセルを着氷できることを楽しんでほしい!スケートを楽しむんだよ!

自分のスケートを楽しみ、尊重するためのカギは「意識すること」だ。自分をもう少しだけ向上させようという気持ちをもってリンクに乗ること、ちょっと違うことにトライすること、この練習は貴重なものなんだという意識をもつことだ。

「もうちょっとカーブしてみようと思わないでどうやって上手くなるんだい?(アイスダンサーで振付師の)シャーリン・ボーンをリンクで見ていると、毎日必ず何か新しい動作を作り出すんだ、なんというか……彼女は好奇心が強いんだね。子供たちはといえば、自分のスケートに好奇心をもっていない。昨日やったことが今日もできて満足しきっているんだよ。それを見て僕は言うんだ。違うだろ、もっと腕を傾けてみようよ、もっと大きく傾けるんだ! ひざを曲げて! ほらできた! こんなことできるって思ったことあった? するとみんな口をそろえて、“自分にできるなんて思ってもみなかった!”って言うんだ。なんでかっていうと、やってみようとしなかったからさ!」

「つまり」と彼は言う。「僕のセミナーの目的は、スケートに対して喜びと楽しみ、そして自覚を持たせることなんだ」



選手が試合に出るレベルになり、本格的にスケートに取り組むにようになると、苦労も増すことになる。フィギュアスケートは子供から多くの時間を奪い、犠牲を強いる上、何度も何度もジャッジの目にさらされ続けるスポーツだ。目標を達成するためには、子供らしい“ふつうの”活動の多くをあきらめざるをえなくなる。それでも、フィギュアスケートをするメリットはデメリットよりもはるかに大きいと、カートは言う。

試合の場でいつもジャッジの目にさらされることは、子供の自尊心に大きな影響を与えるが、それはふつうの学校生活でも同じだろ、とカートは言う。学校でも子供たちは常に自分に問いを発するような状況に置かれるからだ。例えば「廊下ですれ違った誰かが自分のことを笑っているんじゃないか」とか、「なぜ彼は私じゃなく彼女をダンスに相手に選んだの!」とか、「あの子ったら私よりいいシャツ着てる」などなど。一方、フィギュアの試合を通しては、ある大切なことを学ぶことができるんだよ、とカートは言う。

「言いにくいんだけど、僕らはこう考えがちだと思うんだ。“みんなで学校へ行って、みんなで遊んで、みんながメダルを取りましょうね!”それは違う。メダルは誰もが取れるものじゃない。上から3人だけがメダルを取って、あとは全員負けだ。自分にそんな機会がめぐってきた時には、それが貴重なチャンスだとわからなくてはならないんだ。一生懸命努力して、自分の得意技を見つけて、そのためにかかった苦労はすべて大切なものだったと思ってこそ、メダルを勝ち取ることができる。そこでやっと自分の番がめぐってくるんだ。もしかすると、メダルは一生取れないかもしれない。その場合は、ほかの何かを見つけることを教えてくれるんだ。人生はいいものばかり与えてくれるわけじゃない。自分で取りに行かなくっちゃ!

“ふつうの”活動に参加できないことにより、若い選手たちが生活のバランスを崩すのではないかということについては、特に心配していないという。

「スポーツに取り組んでいる子供たちは、惜しむことなく膨大な時間を、スポーツというすばらしいものに費やしている。スポーツは負けることを教えてくれ、勝つことを教えてくれ、朝の7時に準備を整えて集合すること、コーチや両親やまわりの子たちに対して責任をもつこと、チームの一員であること、自分の力で立ち上がること、これらのことすべてを教えてくれるんだ! だから、そう、確かにいろんなことが犠牲になるだろう。僕もそうだった。でも、僕は自分がやっていることが大好きだったから、得るものは2倍もあったよ」

選手が成長するにつれて直面する最大の困難のひとつが、自意識の問題だろう。往々にして幼い頃のほうがよい演技ができることが多い。まだ自意識過剰におちいっていないからだ。だが、年をとるにつれて、カートのような社交的で明るい性格の持ち主でさえ、膨張する自意識に悩まされることになる。しかも、長い競技生活を経てもなお、そうなってしまうのだという。

初めて世界選手権のタイトルをとった年は、自分の靴ひもを結ぶこともできなかった。みんなに見られているような気がしてね。そのほんの1年前には、みんなに自分を見てほしいと思っていたのに。“なんてこった、あっちに人がいるぞ、今の見てなかったよね、もう一回トリプルアクセルを跳んだほうがいいな、今度はちゃんと見てくれよ”ってね」カートはそう言って笑った。「世界チャンピオンというのは、ミスをしちゃいけないんだって思っていたからだろうな。だって、僕が見てきた世界チャンピオンはみんな神様だったから。世界のタイトルを取るのはブライアン・オーサー(五輪銀メダル2回、1987年世界王者)とか、ロシア人とか、そういう違う世界の人たちであって、僕なんかじゃないと思っていたんだ」

自意識にうまく対処することは人生には不可欠だ。フィギュアスケートは、人生のほかの局面でもそれができる強さを子供たちに与えてくれると、カートは考えている。

僕はスケーターたちにこう言うんだ。リンクの真ん中に立って、音楽がスタートするのを待ち、その音楽に乗って踊る……細いちっぽけなブレードに乗って、きみのお母さんが作ってくれた衣装を着てね……そんなことをやってのけられるなら、もうほかに怖いことなんてたいしてないんだよって



とはいえ、「プロになって20年たつけど、今でもしょっちゅう自意識過剰におちいってしまう。8晩続けて滑って1度か2度ごく小さなミスしかしなかったと思ったら、突然ミスだらけのひどい夜になることもある。なぜなら自然体ではなく、強引に滑ってしまったから。ねじ回しで余分に1回強引に回すと、ねじの頭は壊れて取れてしまう……それと同じだ。自意識は致命的にだってなりうる。そのことに慣れていかなくてはならないんだ。それも人生だし、そこがおもしろいんだから

最近はCBCの解説者として、現役の選手たちがそうした自意識に対処する瞬間をたくさん目にしてきている。その結果として、試合で起こるできごと、特に採点システムにまつわる議論について、質問をされることも多いそうだ。カートは、現行の採点システムは完ぺきではないものの、フィギュアスケートにスポーツとしての信頼性を与えているし、競技者の視点から見て多くの面で以前のシステムより優れていると考えているという。

ひとつのプログラムの中でミスを重ねた選手が高得点を出したり、優勝さえしたりすることに、批判的な人々も多い。だが、選手がポイントを積み上げてミスを埋め合わせることができる今のシステムは、ほかのスポーツの採点システムでも同じなんだと、カートは言う。

「どんなスポーツでも、正しい瞬間をフルに生かすことができるかどうかなんだ。やるべき時に、いるべき場所にいること。後でミスをしても勝てるだけの力をそこで得られるかどうか。“最後の5分で3点も失点したじゃないか!”と言うけど、その前に7点取っていたら、そんなのどうでもいいんだよ」

彼の意見によると、今の採点システムによる最大の収穫は、(ショートで)出遅れた選手にも上に行けるチャンスがあることだという。

「そういった選手に、チャンスはあるんだと実感してもらう手だてが必要なんだ。だから、(ショートで)6位で、上に8点差をつけられているのを見て、“2位には行けるかも”と思える……僕はそれが本当にすばらしいことだと思うんだよ。僕の時代には絶対に不可能だった。それ以上何を望むんだい? 個人的意見だけど、最初に8位でも1位との点差によっては優勝さえねらうことができる、これはとても重要なことだと思うんだ」

とはいえ、観客の視点からすれば、旧採点システムのように見せ場が点に表れるものではないことは彼も認識している。そして、その試合で一番観客のハートをつかんだ演技をした選手が優勝できなければ、ファンも不満に思うだろうことは理解している。

「僕はロマンチストなんだ。だから、解説をしている時には、得点のことをすごく考えることはめったないよ。ただ、ひとりのファンであったり、選手の演技やその試合を楽しもうとしたりするだけで……。僕は感動させてほしいんだ

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海外のスケート事情や振付などについて語っているパート2は→こちら

JUGEMテーマ:フィギュアスケート
カテゴリ:北米男子 | 19:28 | comments(5) | trackbacks(1) | - | - |
コメント
たらさん、カートさんのインタビューの翻訳、ありがとう!
とても興味深く読ませていただきました。
珠玉の言葉が並んでいますね。

パート2もすごーく楽しみにしています。
よろしくお願いします!
| coco | 2012/07/18 9:20 AM |
>cocoさん、コメントありがとうございます!

ほんとに珠玉の言葉だらけですよね。(珠玉すぎて私の力量が追いついていないところもあるかと思います。スミマセン…)

パート2も読んでいただけるとうれしいです!
| たら | 2012/07/18 12:18 PM |
たらさ〜ん!こんばんは。

またまた例のごとく、翻訳記事を紹介させてくださいね。
カートの言葉は、世界中のスケーター達に届けたい。。。(日本だけでも)

カートは饒舌ですね…というか、スケーターがスケートの事話し出すと止まらない。
それほど、”スケート馬鹿”←(スケーターへの最大の賛辞です。)でもあるんです。
| Skater_Sakura | 2012/07/22 3:28 AM |
>Skater Sakuraさん、コメント&トラックバックありがとうございます!

本当にどこをハイライトしていいのかわからないほど、カートの言葉は魅力的で含蓄たっぷりですよね!

貴ブログで取り上げていただきありがとうございました。
最後にリンクしてある「カート・ブラウニング特集」もすごく勉強になりました!感謝ですm(__)m
http://openaxel.blog14.fc2.com/blog-entry-44.html
| たら | 2012/07/22 4:49 PM |
たらさんこんばんわ〜!

>本当にどこをハイライトしていいのかわからないほど、カートの言葉は魅力的で含蓄たっぷりですよね!

はい、申し訳なかったけど…要約すると彼の意図するものが伝わらないかと思っちゃって。
ほぼ、全文掲載しちゃいまして申し訳ないです。

Blogには、スケート関係者が結構訪問しているので、現役選手には先人達の言葉は貴重なテキストなんです。
成功者の言葉は、その成功に至る過程を垣間見させてくれますもんね。

でも、誰でも、成功者にはなれない。
そこを、フィギュアスケートを通して学びながら、大切なものに気づいて欲しいという願いが伝わるといいなぁ…

たらさんの記事、楽しみにしていますので、今後ともよろしくです。
| Skater_Sakura | 2012/07/23 3:53 AM |
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