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高橋&トラン組の振付師インタビュー@icenetwork
世界選手権で高橋成美&マービン・トラン組が銅メダルをとって以来、地上波テレビでペアについての特集がたくさん放送されている、という前代未聞の日々が続いています。

ふたりの今シーズンのプロ、2本ともとても素敵ですよね。そのプログラムを作った振付師のジュリー・マルコットさんに、おなじみのicenetworkがインタビューしています。

元記事はこちら→Creating programs: Marcotte talks choreography By Vladislav Luchianov (04/17/2012)

「プログラムを作る:マルコット、振付を語る」


フィギュアスケートの振付師が、試合の時にテレビに映ることは少ない。振付をした選手がメダルを取ってもめったに話題にされないし、メディアに取り上げられることもあまりない。
しかし、プログラム――のちに氷上で演じられて、ファンは初めて鑑賞することになるの――を作る作業は、まず振付師の心や知性、感情から生まれるアイデアから始まる。さらに、本当にすばらしいプログラムを作る過程は、そのシーズンが終わるまで続くものだ。プロの振付師たちの創造性や独創力は、まずスケーターやコーチに届けられ、やがてメダルをとったり観客から愛されたりといった結果をもたらすことになる。

カナダ人振付師のジュリー・マルコットは、そうしたプロの一人だ。彼女のすばらしい仕事は、2012年世界選手権で日本ペア初のメダリストとなった高橋&トラン組の成功に不可欠のものだった。また、カナダのペア、デュアメル&ラドフォード組の5位入賞にも大きな役割を果たした。

Icenetwork.com(以下IN):ジュリー、あなたはワールド銅メダルの高橋&トラン組と、やはりすばらしい演技で5位に入ったデュアメル&ラドフォード組のプログラムを振付けましたよね。彼らの世界選手権での演技をどう思われますか?

マルコット:どちらの演技についても、非常にうれしく思います。彼らにはそれぞれ、この1年間さまざまなことがありました。どちらのプログラムも、各ペアの希望や夢を反映したものだったと言えるでしょう。振付師にとっては夢のようですね!
 
IN:若い日本ペアは母国でペアの歴史を作りました。こんな成功を予想していましたか?
 
マルコット:成美とマービンにはすばらしい資質があるんです。それは、ふたりが演技すれば魔法を生み出せるということ。それを考えれば、どんな成果が出ても不思議ではありませんでした。実際そのとおりになりましたしね。
 
IN:彼らとの仕事ぶりを聞かせてもらえますか?

マルコット:ふたりとの仕事は、彼らのごく初期のころに始まって、ずっと続いていたものだったんです。もうふたりと私との間にしみこんでいました。お互いに理解し合って、深い信頼感があるんです。言葉ではうまく言えないですが。

ふたりのことはmy little candies(私のかわいいキャンディーちゃんたち)って呼んでるんですよ。彼らと仕事できるのは神様からの贈り物です。今季のプログラムについては、ふたりがペアとして、人間として、歩んできた道のりを反映するようなコンセプトを探していました。文字通り世界中を旅してきて、ようやく出会ったふたりです。それぞれがはらわざるをえなかった犠牲も大きなものでした。そこで、「何があろうと不可能なことはない」というコンセプトにしたんです。思いついた曲が(ショートの)「イマジン」でした。ぴったりでしょう、世界はひとつになれる、という曲ですからね!あとは自然にできていって、そこにふたりが感情を注ぎこんでくれました。
 
フリーのほうは、ある意味ショートと対になったプログラムでした。曲はAndre Mathieu作曲の「Concerto de Quebec」。演奏は、このすばらしい作曲家の存在を私たちに教えてくれたAlain Lefevreです。ケベックは成美たちが出会い、その後の道のりを歩んできた場所です。この選曲がぴったりだと当初から感じていました。
 
IN:シリアスなプログラムの場合、若い選手には曲の感情や感覚を解釈しきれないことがありますよね。これについてはどういう指導をしていくんですか?
 
マルコット:私にとって解釈とは、それがどういうタイプの感情であったとしても、リアルであること、ただあるがままでいることなんです。ですので、ふたりには、彼らがごく自然に「ただそうでいられる」よう、あるがままの自分を受け入れるよう指導しました。リアルな感情の中に入っていって、それを身体の動きを通して伝える。私はこれを「感情的に裸になること」と呼んでいます。
 
IN:これでシーズンは終わりですが、振付師にとっては新シーズンの始まりですよね?新しいプログラムを作るのはどのくらいの期間が必要なのですか?

マルコット:プログラム作りというのは長い作業です。氷の上に乗るずいぶん前から始まります。ぱっと頭に浮かんだ映像から始まります。いったん氷に乗ったら、あとはその映像をまとめるだけです。高橋&トラン組、デュアメル&ラドフォード組の場合は、1年の大半の期間、週2回私のところへやってきます。そこで細かい部分を確認したり、スケーティングスキルを向上する指導をしたり、振付の手直しをしたりします。振付の作業は、シーズンの最後に選手たちがフィニッシュポーズをとるまで、続いていくものなのです。
 
IN:振付師として、世界選手権ではだれの演技が印象的でしたか?

マルコット:すばらしい演技はたくさんありましたよ。バーチュー&モイヤ組のフリーは魔法のように繊細でした。パトリック・チャンのスケーティングの美しさと完ぺきさ、そして息の飲むほどの音楽性。あとは高橋大輔、彼の(プログラムに)入り込む深さと感情表現は、もうwow!ですね。ほかにもたくさん!
 
IN:今の採点方法が振付師にとってしばしば頭痛のたねになるのは、もう誰もが知っていることですよね。そうした採点ルールにどうやって創造的アイデアを合わせていくのですか?

マルコット:採点基準は、その道のプロの人たちが作っていくものだと思っています。そうやってよいプログラム、完ぺきなプログラムができていく。私は特に制約は感じていません。採点基準があったほうが、完ぺきなプログラムには何が必要か、だれもが明確にわかると思います。
IN:今のフィギュアスケートで好きな点、嫌いな点はありますか?

マルコット:今の方向性は、私は大歓迎ですね。second mark(演技構成点)は重要ですから。演技構成点が高いから勝てるわけではありませんが、演技構成点が高くなければ勝てませんから!不満なのは、その議論が十分になされていないことですね

IN:フィギュアスケートにおいて振付の未来はどうなると思いますか?

マルコット:私の考えでは、ただただ発展していくばかりだと思います。今の若いスケーターたちは最初から現在のやり方で指導されてきています。本当によい演技と質をもったすばらしいスケーターがどんどん出てくる、そう私は信じています。

IN:ジュリー、これから取りかかる仕事について教えてもらえますか?新しいスケーターの振付をする予定は?

マルコット:スクープ情報はないですよ。どのスケーターであっても、その選手のキャリアの中で際立ったプログラムをつくりたいと思っているだけです。

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ううむ、シンプルな言葉ながら、なかなか深いことをおっしゃってますね。
一番印象的だったのは…ショートの「イマジン」は、成美ちゃんとマービンくんのこれまでの歴史と、これからの希望がつまったプログラムだということ!

もう広く知られていますが、成美ちゃんはもともとシングル選手志望だったんですよね。家族の仕事の関係で中国に住み始めて、ペアの魅力に開眼。中国人のパートナーとペアを組んでいましたが、日本に帰国するとパートナー探しは大変だし、ペアにふさわしい練習環境もない。そこでカナダに渡り、出会った理想のパートナーがマービンくんだったわけです。

マービンくんが日本代表選手になることを受け入れたいきさつは、私はよく知らないのですが、きっと葛藤はあったのではないでしょうか。しかも、ここへきて、ソチ五輪に出場するためマービンくんが日本国籍を目指す、というニュースが。(→スポニチ
カナダ人なのに(カナダ人のガールフレンドもいるのに)日本国籍を取る、というのは、相当の覚悟があったはず。しかも、日本は国籍取得にとても厳しい国で、そのことも重々承知の上での決断なんでしょう。それほど、ふたりには五輪への思い、そしてお互いへの強い思いがあるんでしょうね。

そんなことを考えながら改めて見ると、涙が出るようないいプログラムですね、これ。世界選手権でのショート。



フリーもとても美しいです。喜びが爆発するキスクラですっかり有名になりましたwが、ふたりが出会ったケベックがテーマの曲だったのですねぇ。



もうひとつ、なるほどなあと思ったのが、この言葉。

私にとって解釈とはリアルであること、ただあるがままでいることなんです。リアルな感情の中に入っていって、それを身体の動きを通して伝える。私はこれを「感情的に裸になること」と呼んでいます。

フィギュアの「表現力」にはついていろいろ言われますけど、「曲やプログラムに対して感じる感情の中へ入っていって、スケートを通してただそのままの自分を伝える」…これでしょー!!!これにつきるわー!!!
ちょっと個人的に表現について考えること多かったのですが、一気にすっきりしましたよ。
ありがとう、マルコットさん!

左の方がジュリー・マルコットさん。カナダの選手と。

JUGEMテーマ:フィギュアスケート
カテゴリ:ペア | 14:47 | comments(2) | trackbacks(0) | - | - |
コメント
翻訳ありがとうございます!
振付をした選手に対しての深い理解と愛情に打たれますね。
いいインタビューでした。読むことができて嬉しいです。

振付家の重要性が増すにつれ、
フィギュアはますますスポーツに、
アートにと進化していくのでしょうね〜。

| らら | 2012/04/23 7:50 PM |
>ららさん、コメントありがとうございます!

こんなふうに選手のことを考えて振付をしているんですね。
マルコットさんの人柄がしのばれます。

来季、ますます進化したプログラムを見るのが楽しみですね。
あー早く見たいですね!!(今季終わったばかりですけど^^;)
| たら | 2012/04/24 7:47 AM |
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