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たらのフィギュアスケート日記大好きなフィギュアスケートについて語っています。
男子シングルに偏る傾向あり。 たまに海外記事も翻訳してご紹介します。 |
で、ジュンファンくんの今季のフリーです。
フリー「ロミオとジュリエット」 振付:シェイリーン・ボーン
音源「映画 Romeo + Juliet OST」by Craig Armstrong
*サントラからの使用曲をまとめてくださっている方がいらっしゃいました→動画の下の説明に曲名あり
実況のテッドさんはデビッド・ウィルソン振付と言っていますが、たぶんISUのバイオを読んでいるだけかなと思われます。ジュンファンくんがクリケに行ってからエキシを除いてすべてウィルソン振付でしたが、初のシェイリーンですね。
オータムではとにかく「ジューリーエーッ!」で話題(笑)になりました。確かに一見謎編曲ではあるけれど、でもじつは映画のストーリーをわりときっちりと追った編曲なんですよね。
まず冒頭、顔の前で組んだ両腕を左右に開くのは、物語の幕を開ける、という意味でしょうか? いきなり男性の長セリフが始まります。映画の最初のシーンで語られるセリフで、シェイクスピアの原作にもある「口上」です。つまり、これからこういう作品を上演しますよ、という説明文。(*名訳・定番訳と言われるものがいくつもあるようですがあえて自分で訳してみました。素人ゆえの怖いもの知らずw)
Two households, both alike in dignity
In fair Verona, where we lay our scene
From ancient grudge break to new mutiny
Where civil blood makes civil hands unclean.
From forth the fatal loins of these two foes
A pair of star-cross'd lovers take their life...
物語の舞台となる花の都ヴェローナの、
格式ではいずれ劣らぬ二つの名家。
両家の間の古い遺恨が新たな反目を生み、
争いは両者の手を血で汚す。
これら敵同士の宿命の腹から生まれし
薄幸の恋人たちが、自らの命をかける…
この口上とドラマチックな「O Verona」の曲にのせて、4Tと4Sの2本のクワド。去年は4Tがなかなか決まらず、怪我もあって最終的には4Sだけにしていましたが、この4Tはきれい〜に降りてましたね。「O Verona」自体はかなり使われているので、たぶん一般的にはああまたこの曲か、という印象がなきにしもあらずだと思いますが、キレのいい3Lz-3Loを降りたところからガラリと雰囲気が変わります。
曲はテクノっぽい「Young Hearts Run Free」。映画では、ロミオがモンタギュー家の悪童たちとともに、敵対するキャピレット家の仮装パーティにのりこんでいく場面です。ジュンファンくんがくねくねと踊り狂うこのStSqがこのプロの真骨頂! それまで無表情だったのに一転、煽情的でさえあるほほ笑みを浮かべながら、体をくねらせてステップを踏んでいきます。SPのステップもそうですが、いったんスピードをゆるめたり止まったりしても、次の一歩からすぐにスピードにのれるから、1つのシークエンスとして流れが途切れないのがすばらしいです!
唐突に曲が切れて、右手を静かに胸に。からの、ロマンティックな「Kissing You」。映画では、パーティ会場の水槽ごしにロミオとジュリエットが出会う有名な場面、続いてバルコニーとプールで愛をささやきキスをかわす場面でかかる曲です。やわらか〜いキャメルスピンをほどいてChSqへと入る動作が、もうせつなさ爆発ですね。イーグルに、弧を描くイナバウワー。ジュンファンくんの持ち味である上半身の柔らかさと極上のグライド感がたまりません。そこから3Aを2本と、3連ジャンプ。
ここから終盤の見せ場です。銃声のような音とともに、体を後ろにのけぞらすと、「ジューリーエーッ!」という若きレオ様の絶叫が。映画では、マンチュアの荒野に逃れていたロミオがジュリエットの死の知らせを聞き、大地に膝をつき天をあおいで咆哮するシーンです。
ここで3Loを決めた後は、ドラマチックな「Escape From Mantua」。偽の死とも知らずジュリエットの亡骸のあるヴェローナへと必死で戻るシーンでかかる曲です。映画では多数のパトカーにヘリまで出動する大騒ぎなんですが、そのモーター音も入ってますね。ジュンファンくん、顔をゆがめながら全身でロミオの苦悩と怒り、そしてジュリエットへの想いを表現します。
最後のスピンを経て、「バーン!」という銃声とともに、体を後ろにのけぞらせてフィニッシュ。映画では、毒を飲んで死んだロミオを追って拳銃で自らの命を絶つのはジュリエットのほうですから、最後のシーンは二人の死をあわせて表現しているのでしょうか?
…そういうわけで映画にかなり忠実な構成となっているわけですが、映画を知らなくても、曲ごとにニュアンスを変えられるジュンファンくんの音感を生かし、ロミオの若さや一途さが存分に表現されたとっても楽しいプログラムだと思います。
ただし、私的に惜しい点がふたつ。1つは衣装。いや、繊細な紫のレースはとっても素敵なんですけど、どちらかというと古典的。もっと現代のロミオらしい奇抜さや派手さがあってもよいのでは? 衣装デザインはいつもの高名なデザイナーのイ・サンボン氏らしいのですが、たいていボトムスは黒の無地パンツだし、フィギュア衣装では意外と保守的なんですねぇ。
もうひとつは、「ジューリーエーッ!」です。いや、この絶叫を入れてくれてシェイリーン愛してる♡って感じなんですけど、でもここで単独3Fのみというのはせっかくのロミオの魂の咆哮がBGM化してしまい、もったいないなあと思うんです。とはいえ、フリーの時間短縮で後半がジャンプオンリーな印象にりがちなところを、合間に曲に合わせたつなぎをたっぷり入れてラストの死へと至るひとつの流れに見せるためには、これが最善の策だったのかもしれませんね。実際、演技後かなり息を切らしていましたし、この最後のドラマチックなパートは相当キツそうですよね…。それでも、ジュンファンとシェイリーンなら今後もっと膨らませてくれるんじゃないかと、期待しておきたいと思います。
ところで、動画の最後、キスクラで笑うジュンファンくんに女性解説者が「なんてかわいい子。彼、キュートじゃない?」、それに対してテッドさん「…ハンサム、と言っておこうよ。きみのせいで気まずいじゃないか〜」と。テッドさんお疲れ様です(笑)。
なんだかすごく長くなっちゃってますが、長くなりついでに、フリー後に出たインタビュー記事からジュンファンくん本人とコーチたちのコメントをメインに抜粋してみたいと思います。筆者はカナダ人記者のベバリー・スミスさん。
オーサーやトレイシーたちがジュンファンのことをとても大切に育てようとしていることがわかります。
元記事:Jun-Hwan Cha Comes of Age →●
ほんの少し前までおっとりした子どもだったチャ・ジュンファンは、この週末、夢見がちな目をした、存在感をただよわせた若者へと成長していた。今はクリケで練習し始めて4シーズン目になる。
「SPの公式練習の前はちょっと緊張していました。新シーズンの最初の試合ですし、シニアとして初めてのチャレンジャーシリーズですから」とチャは話した。
彼は韓国代表として平昌五輪に出場したが、それでも緊張はするものだ。チャはとにかく全力をつくし、練習どおりに滑るんだと自分に言い聞かせて、この緊張感に対処した。
「あの高得点にはちょっとびっくりしました」それでも、点のことはあまり考えなかったという。
それは、今まで私たちが目にしてきた彼とは違うチャの姿だった。子どもっぽさはみじんもない。落ち着き払って忍耐強く滑り、自信をもってジャンプを降りていた。今までとは違う雰囲気を身につけていた。音楽とぴたりと合わせて体を動かす。彼には特別な何かがあった。「スター誕生」という古い慣用句があるが、まさにそのとおりになりそうだ。彼は来月17歳になる。
さらにポジティブな点は、これまでより体調がいいことだ。昨季はシーズン中ずっと怪我に見舞われていた。今季の一番の目標は健康でいることだと、彼は言う。いまだに背中と臀部、かかとに問題はあるものの、昨季に比べれば大したものではないそうだ。
「(平昌五輪は)本当に、本当に幸せでしたし、すばらしい気分でした。五輪に出場することできたし、そこに行くまで本当に苦しかったからです」とチャは話した。「五輪で自分の演技ができたことを感謝しています。すばらしい時間でした。怪我をしていたし、病気でもありましたが、気にはしていませんでした。とにかく夢中で滑りました。とてもいい経験でした」
観客は彼に大声援を送った。この反応にチャはびっくりしたが、いいエネルギーをもらいました、と彼は言う。
「(オータムでは)想像以上の結果だったわ」と言うのはトレイシー・ウィルソンコーチだ。チャがクリケットに来たときからスケーティングを教えている。「彼はとてもいい練習ができていて、コンディションもすごくよかったの。(クリケットの)リンクの雰囲気はとてもいいし、彼はジェイソンのことが好きなんだと思うわ」
チャは演技を終えると、リンクから走りだしてブラウンの腕の中に飛びこんだ。その後、チャがインタビューを受けていると、ブラウンが後ろから近づいてきて、チャをぎゅっと抱きしめた。チャはすぐにそれが誰かわかったのだそうだ。
「(チャは)今やボーイズのひとりになったわ。以前は“子ども”だったけどね」
「彼はプログラムをよく表現できるようになったよ」とオーサー・コーチは話す。「彼には常にいいプログラムを与えてきたが、練習のときには表現力豊かなのに、それを本番で発揮できないことが多いのがもどかしかった。試合では表現が平板になってしまうんだ。だが、この大会ではプログラムの細部まですべて表現していた」
彼はスピードをゆるめることなくジャンプに入っていく。また、プログラムの振り付けを全力で実行する。まるでプログラムを楽しんでいるかのように滑るのよ、とトレイシーは言う。以前は考えすぎるところがあったという。
「そして、彼は笑顔を浮かべながら演技を始めるんだよ」とオーサーは言う。「かわいらしい笑顔をね」
SP「The Prince」はデビッド・ウィルソン、フリーの「ロミオとジュリエット」はシェイリン・ボーンの振り付けだ。ボーンとはこれが初めてだった。
「彼女との振り付けは本当に楽しかったです」とチャは話した。「本当にいい時間でした。一緒に振り付けをしているとき、たくさんのことを学べたと思います。フリーには今まで僕がなじんでいなかったスタイルがあります。これまで強い曲や柔らかな曲は滑ってきましたが、これは僕にとってまったく違う音楽でした。でも、実際に振り付けをやってみると、すごく楽しかったです。こういった曲をどう滑るか、実際に演技でやったこと以上にとても多くのことを学べたと思います」
母国の韓国では、2010年五輪金メダリストのキム・ヨナの次のスターとして期待をかけられてきた。幼い頃はちょっとした神童スケーターで、モデルの仕事をかけもちし、子どもの頃からマネージメント事務所をつけてきた。
「人々は彼に次のスターになってほしかったんだと思うわ。ところが、彼自身まだその準備が整っていなかった」トレーシーはそう話す。「彼にはとても負担だったと思う。特に昨シーズンはね。彼はがんばりすぎてしまった。がんばろうとしすぎた。それで体が悲鳴を上げたの。彼には時間を与えるべきなの。そのうちきっと準備はできてくるのだから。人々はそんなに急ぐ必要はないのよ」
「事務所の意向や彼らがもってくる仕事にとらわれすぎてはいけないんだ」とオーサーは言う。「そんなときは、少し地上に引き戻してやるべきなんだよ」
この夏クリケに来たばかりのジェイソンと仲良くしてるんですね。一緒にヒップホップダンスを練習している動画もありました。
上は試合直後にジェイソンがインスタグラムStoryにアップした写真。「ジュンのことが誇らしいよ!!! 彼はこの大会ものすごかった!!!」ジェイソン、自分より7つも年下の子に、しかも自分は惜しくもメダルを逃して悔しかったでしょうに、いい人ですね…。
明日からはもう次戦フィンランディア杯の公式練習が始まります。これが終われば、3週間後にはもうスケカナと、その翌週にGPSヘルシンキ。どうか体調を崩さないように気をつけて、充実した試合ができますように! ファイティン❢❢❢
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