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パトリック・チャン スケカナ2015男子フリー後プレカンコメント
スケカナ男子、すごい戦いでしたね!
私的にはパトリック、羽生くん、ダイスくん、それぞれのすごさを見せてもらった大会でしたが、特にパトリックのフリー。
結果的にクワドと3Aが1本ずつという、最近の男子トップとしてはジャンプの難度が高いとは言えない構成でしたが、パトリックが余裕を持って滑るときの、あの圧倒的なダイナミックさを久々に見せつけてもらった演技でした。

そのパトリックのフリー演技後のプレカン動画が、スケートカナダ公式チャンネルにアップされました。
会見の一部を抜粋・編集したものだと思いますが、いろんなことを率直に語ってくれています。羽生くんとの対戦についても、さりげないけれど、ちょっとじわっとくるコメントを……

 

パトリック・チャン スケカナ2015 フリー後プレカン

「僕にとってはかなりストレスのかかる、ハードな試合だったよ。(フリーの)6分間練習ではいい感覚ではなかったんだ。かなり不安な気持ちだったし、集中できていなかった…身体的にというより精神的にね。

だから、自分の滑走順が来るのを待っている間、キャシー(コーチ)がいてくれてよかった。こういう時って、コーチとスケーターの関係が大きな役割を果たすんだ。僕の心によぎったことを話し合ったり…どうやって前を向けばいいのか、とかね。なぜなら僕はそのとき、すっかり途方にくれていて、どう対処していいのかわからなかったから。自分の順番が来るのが怖かったんだ。

そんなことをじっくり話し合ってから、リンクに足を踏み出したら、無心で滑れたんだ。自分のまわりに誰がいるとか、誰が見てるとか、そんなことは全然意識せずに、ただ滑った。自分のために滑るのがとてもいい気分だった。毎日練習してきたことを氷上で実行できるのは、身体的にすばらしい感覚だったよ。

そう、今日はとてもうまくいったんだと思う。スケーターにとってミスは常にあるものだ。いい日もあれば悪い日もある。今日はたまたまいい日だった。もっと安定して、こんな日がもっとあるといいな。

今日の自分の演技をふりかえってみると…違いはメンタルかな。試合で一番ものを言うのは、身体的な部分よりメンタルな部分だと僕は思っている。身体的なことについては、ここにいる3人全員、よく鍛錬しているのは確かだ。このレベルでは、鍛錬していないとここには来れないからね。

SPではちょっと考えすぎたかもしれないな。僕は戻ってきたよ!とてもワクワクしてる!ジャンプも完全に取り戻した!僕はここにいるよ!ってことを、みんなに見てもらいたいとすごく考えていたんだ。まるで友達に会えた子犬みたいに、とても興奮しちゃってた(笑)。そんな状態だったから、ちょっとコントロールしきれなかったんだと思う。それに、SPは新しいプログラムだから取り組むべき課題が多いし。

その点フリーは、僕にとっては、はるかに心を落ち着かせてくれるプログラムなんだ。(フリープログラムには)自分を立て直すことができる箇所がいくつもある。もしパニックになっていたら、そこで自分を立て直して、リセットできるような箇所がね。それが(SPとフリーの)差だったかな。それともちろん、冷静な気持ちで、さっきも言ったように自分に対していい気持ちを抱きながら、滑ることができた。お客さんも、僕がどんな動きをしても全部楽しんでくれたみたいだしね。

復帰するかどうか決心するのは大変だったよ。自分は本当に復帰を望んでいるのか?ってね。じつは、僕が復帰を決めた大きな理由のひとつは、厳格な練習の日々に戻りたい、ということだったんだ。来る日も来る日もある目的に向かって、毎日課題に取り組む、そんな生活にね。ショーやその他の活動をしているときはいいんだけど、何もない日はとても退屈していたんだ。友達はみんなリンクで練習してるのに、自分は家にいてただ座ってるなんて、何をやってるんだろう、と。

だから、雰囲気が恋しかったのかな。トレーニングセンターの雰囲気とか、友達がみんないる試合会場の雰囲気とか。今まで過ごしてきたすばらしい時間を、あれこれ思い出してしまったんだ。

だけど、いざ試合となって、本気でかからないといけなくなると、「オーマイゴッド、自分は何をやってるんだ?」ってなったよ。プレッシャーがすごいし、居心地も悪いし。でも、僕は今、それを学んでいるんだ。今もそうだよ、居心地の悪さはすごくある。でも、これは1年の休養明けの久しぶりの試合だからね。これから前に進んでいけば居心地の悪さもなくなってくるだろうし、いろいろ学んでいけるだろう。今日だってフリーの演技中や演技前後の経験から、ものすごくたくさんのことを学んだよ。

それに、ユヅと一緒にここにいること……エキサイティングだったよ。オリンピック以来初めての対戦だったからね。あれ以降、彼にはいろんなことがあったし、僕もたくさんのことを経験した。僕ら2人とも、いろんな変化を味わった。また対戦できるのはうれしいよ。

でも、結局はフィギュアスケートというのはボクシングの試合ではないからね。氷上では自分ひとりで滑らなくちゃならない。自分にできるベストなものを氷上で提示して、その結果を待つ――そういうものなんだ。



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羽生くんとはさまざまなメディアで「ソチ以来の対決」と煽られて、そんな報道にパトリックもプレッシャーを感じないわけがなかったと思うんですが、「ユヅ」と今一緒にここにいることを「エキサイティング」と笑う笑顔がすてきです。彼にも僕にもいろいろあった、という言葉に、”戦友”へのさりげない気遣いと仲間意識が見えるような気がします。
最後の「結局はフィギュアスケートというのはボクシングの試合ではないからね。氷上では自分ひとりで滑らなくちゃならない」は、隣にいる戦友への励ましの言葉でもあるのかな。

復帰を決めてからいろいろなインタビューで強気な言葉を口にしていたパトリックですが、復帰にあたってのプレッシャーは大変なものだったんでしょうね。そして、フリーの直前に押し寄せてきたものすごい不安感。
そのあたりのことがこちらの記事に書かれていましたので、少し抜粋してみます。

不安感は夏の間からずっと、このスケートカナダのリンクに上がる直前まで彼を悩ませていた。
「不安な気持ちは何日も、何週間もあったよ」とチャンは話す。「キャシー(コーチ)にこう言ったことが何度もあった。”もうリンクを降りる”、”こんなことはやりたくない。もうだめだ。こんなことやりたくない”とね」
そして、フリーの6分間練習が終わって滑走順を待つ間、チャンが感情的にメルトダウンしてしまい、涙を浮かべる瞬間があった。チャンによると、その時間の重さに耐えられたなかったという。
「キャシーと話し合ったんだ。僕は”なぜこんな選択をしてしまったんだ? 僕は自分になぜこんなことを無理じいしてるんだ? なぜこんなにも試合に出ることが怖いんだ? なぜ自分で自分をこんな居心地悪い状況に追いやったんだ?”そう口にしていたよ」
チャンは数分間、両脚を壁にもたせて床に横になった。そして、ジョンソンコーチから叱咤の言葉をもらった後、リンクに出ていって美しいフリープログラムを滑ったのだ。


――あの演技の直前、こんな状況だったとは。
キャシーコーチは元ダンサーでスケート経験者ではないため、ジャンプを教えられるコーチをつけたほうがいいとさんざん言われてきました。でも、パトリックにとってはきっと、そばにいなくてはならない、とても大切な存在なんでしょう。


スケートカナダ公式チャンネルにアップされた男子バックステージ動画。パトリックとキャシーコーチの姿もあります。
ふだんはなかなか目にできない場所ですが、選手とそれを支える人たちの間でさまざまなドラマがある場所なんでしょうね。



JUGEMテーマ:フィギュアスケート
カテゴリ:パトリック・チャン | 11:00 | comments(12) | trackbacks(0) | - | - |
コメント
翻訳ありがとうございます!
パトリックってあの強気コメントであまり良いイメージがなかったんですが人間味を感じられるお話を聞けて少し変わりました。いつもこうやって話してくれたら誤解せずにすむのに(笑)

SPの失敗の原因が羽生君と同じメンタル面で興奮しすぎてしまったってのは意外でした。FSは、パトリックのように立て直す部分があれば羽生君の内容も違っていたんでしょうか。
SEIMEIは、ほぼノーミス前提に作られている気がしてリカバリーがとても難しそうですよね。高見を目指しているからそれもありかなと思うけど、これから変えてくるのかこのまま行くのか気になります。

パトリックも今後はジャンプの難度を上げないといけないだろうし、また今回のような演技ができるといいですね。その上での羽生君のノーミスがどんな風に評価されるかも見てみたいです。

ステキな記事ありがとうございました♪
| kanon | 2015/11/03 6:50 PM |
たらさん、翻訳ありがとうごさいます。あのFPの後のパトリック選手の言葉が読めるのがとてもうれしいです。

あの素晴らしいFPの直前がそんな状態だったとは…3Aも決まったのに!とびっくりしてます。
あのショパンメドレーが心を落ち着かせてくれるプログラムだなんて!とそこもびっくりです。構成的に彼なら立て直せるのだとしても、あの曲で滑り負けしないのってパトリック選手くらいでは…

以前翻訳してくださったインタビューでは、表現力を示したいと言っていたと記憶していますが、
スケーティングだけでなくジャンプスピンにいたるまで、スケートででき得ること=表現と言っているのかな、と解釈していました。
今回のショパンメドレーを見て、全てが曲にぴたりと合った演技に、やはり彼は表現力の高い選手と言っていいのではないかと思いました。

最後の二段落に彼の人柄が表れてますね。
試合の時の、特に勝者への態度や言動でどういう人かは分かってしまうのだけれど、でもたまにはまたちょっと憎らしいくらいのコメントをするパトリックでいてほしくもあります。そういう彼も好きなのです。
| matu | 2015/11/04 12:08 AM |
>kanonさん、コメントありがとうございます。
パトリックは強気というよりも真っ正直なんだと私は思ってるんです。その場その時の気持ちが素直に言葉に出てしまう人なのではないかなあと。
最近のインタビューでは、強気な言葉なのにどこか焦りや不安みたいなものが感じられることがありました。その点、今回はプレッシャーに打ち勝って好演技ができた喜びが、この素直〜なプレカンになっているんじゃないかなと思います。
それに、やはりプライドは人一倍強い選手だと思うので、まあ、いろんなものひっくるめて、とても興味深く魅力的な選手だと私は思ってます!
SEIMEIにも休憩場所はあると思いますけど、今回のパトリックフリーのように余裕で滑りきるのは不可能に近い高難度構成ですよね。素人目にはクワド3本は今季はまだ早いんじゃないか、なんて思ってしまうけれど、でも不可能なことに挑戦するのが羽生くんの羽生くんたるゆえんなので、がんばれ!としか言えないですよね^^;
ノーミスパトとノーミスゆづの対戦、見たいですよね〜。
| たら | 2015/11/04 2:10 PM |
>matuさん、コメントありがとうございます。
そうですよね。あのフリーの前に涙さえ浮かべるほどのパニックに襲われていたとは驚きでした。見かけによらず、と言っては大変失礼だけれど、神経質なほど繊細な面があるんでしょうね。
パトリックは必ずしも踊りが上手だったり表情を豊かに使う選手ではないと思いますが、おっしゃるとおりジャンプを含め、スケートの技そのものが表現になっている数少ない選手だと思っています。今回は特にすべてのエレメンツが音楽と融合していて、圧巻でしたね。
ライバルたちよりも自分との戦いと言い切ったパトリック、今季は憎らしいぐらいのコメントは出てくるんでしょうか? それも含めてすごく楽しみにしています。
| たら | 2015/11/04 2:25 PM |
たらさん、お忙しいのに素敵な翻訳ありがとうございました。

スケートカナダ、ハラハラドキドキ見応えがありましたね。JOでのパトリックの演技を現地で見て今回は羽生選手が他の追随を許さず圧巻の優勝と信じて疑わなかった私ですが、見事に予想は外れました。SPの総崩れ状態からFPでの素晴らしい演技には感動でしたけれど。

パトリックって良くも悪くも正直な人なのですね。でもこのインタビューでここまで自身の心情をオープンにできるパトリックってちょっと素敵かもって思ってしまいました。舞台裏での孤独に立ち向かうことの辛さを素直に語っていましたね。そしてあの演技ができる彼。素晴らしいの一言です。

そして羽生選手にとってもなくてはならない真の意味のライバルはパトリックだけなのだと思いました。お互いがそれぞれの存在を意識してない、と言いながら実はものすごく意識してのSPの結果だったのでしょう。今後も切磋琢磨していくための唯一無二の存在だと思えます。もちろん完璧な陰陽師を滑ることができたら彼はまさに雲上の人となってしまうだろうけれど。

今週は中国杯ですね。真央ちゃんが復帰することで楽しみが倍増していますが、パトリックと真央ちゃんの復帰の理由も共通点がありましたね。

またおじゃまさせてくださいね。
ありがとうございました。





| ちゅらら | 2015/11/04 7:08 PM |
はじめまして!
パトリック記事の翻訳ありがとうございます。
正直今回パトリックの点数を悪くいう羽生くんファンを沢山見て、あぁまた日本のファンにバッシングされる歴史は繰り返えされるのか…と憂鬱でした。
でもこうやってたらさんがパトリックの人間性が解る記事を翻訳してくださって、羽生くんファンにも沢山読んでもらえて嬉しく思います。

最近羽生くんを絶賛する海外記事ばかり翻訳されているのを見ますが、ライバル選手を褒めてる解説や記事も沢山あるので(例えばパトリックってスケーティングだけだと思われてますが、プログラムの表現や投射もすごく海外解説で褒められてるんですよね)一方の選手の絶賛評価だけ見ないで欲しいなって。

その点たらさんは好きな選手を応援しつつ、困ったちゃんな所は困ったな〜と思いつつ、各選手に公平なスタンスで尊敬します。ありがとうございます。

| ままる | 2015/11/05 12:35 PM |
>ちゅららさん、コメントありがとうございます。ご返事遅くなりました。
私もJOでのパトリックを見て、ここまで仕上げてくるとは予想できませんでした。そして、羽生くんのまさかのSP大チョンボも!フィギュアって予測のつかないことが起こるからおもしろいんですよね。見てるほうは大変ですけど。
羽生くんはパトリックが特別な存在だとよく口にしていますよね。自分にとって「太陽」だと。でも、パトリックにとっての羽生くんって、今まではほぼ当たり障りのない言及しかしていなかったから、よくわからなかったんですよね。今回初めて、羽生くんに対してちょっぴりパーソナルな感情が見えたような気がしました。
パトリックのような復帰のプレッシャーは真央ちゃんにもきっとあるのでしょうけれど、真央ちゃんのことだから軽々乗り越えてしまうような気も…。中国杯楽しみですね!
| たら | 2015/11/06 12:37 AM |
>ままるさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
わわっ、過分なお褒めの言葉、恐縮です。でも公平なんかじゃないんですよ。ただ、浮気性なもので好きな選手がたくさんいて、こっちのいいところも、あっちのいいところも両方欲張っちゃうだけなんですよ(笑)
まあ点数にあれ?と思うことはよくあるので、それはしかたないと思います。でも矛先が選手本人に向かうのは激しくお門違いですよね。どの選手も少しでも点を伸ばそうと努力していて、パトリックが言っているようにいい日に当たった選手が勝ち、そうでなかった選手が負けるのですから。
絶賛記事…今は羽生くんのファンがすごく多いから仕方ないと思うけれど、なるべく他の選手のことも伝えていけたらなあと思っています。といっても、私も私の好きな選手たちの記事しかアップしていないから同じなんですけどね^^;
| たら | 2015/11/06 12:37 AM |
たらさん、こんにちはっ。

いつもながら 素晴らしい翻訳を本当にありがとうございます!
競技前のパトリックの様々な発言は…色んな意見が出ましたが…
まさか… パトリックが…あのFSの前にそんな状況だったとは…おお…
やっぱ…あのビッグマウスは… 強がりだったのかな…
あんなに自分で どんどんハードル上げて、ど〜すんだよっ!と思ってましたが
ご自分を そうやって支えてたのかな…とか。
←いやそら、やっぱ本来の性格もあるかもですが…(・∀・;)…汗
でも… 知れて本当によかったと思いました。しみじみ…
でないと、パトリックの本質を誤解したまんまだったかも…
結弦くんにかけた言葉も 今のパトリックだからこそ言える、判る気持ちって
ありますよね…。ホントに素敵は翻訳をありがとうございました!
| さく*ranbo | 2015/11/12 1:21 PM |
>さく*ranboさん、コメントありがとうございます。
ビッグマウスは彼の繊細さの裏返しかもしれないですよね。もともとかなり神経質なところがある人だな、とは思っていたんですが、これほどの状況だったとは意外でしたよね。
やっぱりソチでのあの負け方はかなりの打撃だったようですし、あそこから現役に戻ってくるのは相当キツかったのかな〜と。
結弦くんにかけた言葉、大人のパトリックでしたよね。TEBでもいい演技できますように!
| たら | 2015/11/12 9:55 PM |
こんにちは。初めまして。
あけましておめでとうございます。

いつも楽しく見させてもらってます。読みごたえのある記事に毎回驚かされてます。
つたないブログですけど、トップページのリンクを貼らせてもらいました。

去年のゆづはほんとすごかった。どこまで行くのか楽しみでもあり、それに伴い怪我をしないかとか心配でもあります。いちファンとしては見守るしかありませんけど、今年も演技もみるのが待ち遠しいです。

よろしくお願いします。
| shiu | 2016/01/01 10:44 PM |
>shiuさん、初めまして!
あけましておめでとうございます。
ご返事が遅くなってしまい申し訳ありません。
ブログのリンク、どうもありがとうありがとうございます。
昨年後半のゆづるくん、本当にすごかったですよね。「覚醒」という言葉をご本人も使っていたけれど、踊り場を抜けて急に1次元上に行ってしまったような気がします。
私も更新とどこおってばかりですけど頑張らなくちゃ>_<;
今年もどうぞよろしくお願いします。
| たら | 2016/01/03 4:06 PM |
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