THE ICEで大活躍して、カナダに帰っていったばかりのパトリックですが、おなじみのカナダ人フィギュアジャーナリスト、PJクォンさんのブログに、パトリックの最新インタビュー音声がアップされていました。よーし、また聞き取りにLet's try! と思ったら、これが43分もあるロング・インタビュー(゚□゚;)
しかもPJさんはあいかわらず早口だし、パトリックも流れるような、というか独特のしゃべり方で、私の耳にはレベル高すぎなんですが、ざっと聞き取れたところと個人的におもしろかったところをメインに訳してみたいと思います。本当にざっとですし、めちゃくちゃはしょってますので、そのあたりどうかご了承くださいませ〜。
PJさんのブログページはこちら→
Episode: Patrick Chan
(ただし、2人のツーショットの下のインタビュー動画はトランポリンの大会について語ったもの。今回のインタビュー音声は、この動画の下の「➪」をクリックすると聞けます。「AUDIO MP3」というアイコンをクリックするとダウンロードもできますよ!)
トランポリン大会のインタビューは7月7日にアップされてるので、おそらくそれと同じ日、THE ICEで来日する少し前に取ったインタビューだと思います。
ではどうぞ〜。
Q:パトリック・チャン選手、実はトリリンガル(英語、仏語、中国語ですね)で、テニスとゴルフの才能もすごいのよね。Twitterのアカウントが「pchiddy」だけど、このニックネームの由来は?
P:すごく小さい頃についた名前なんだ。初めてナショナルチームに入ったときにもみんなから(特にスコット・モイヤに)いろいろ聞かれたんだけど、ラッパーのP. Diddyの名前をもじったものなんだ。みんなに「Pチディ」、または「チディ」って呼ばれていたよ。
フィギュアをやる前に、まず最初に始めたスポーツはスキーだった。個人競技で、自分の好きなようにかっ飛ばせるところが好きだった。フィギュアもその延長で、好きなだけスピードを出したり、スピンやジャンプをしたり、好きな音楽に合わせて滑れるところが気に入ったんだ。でも一番の理由はリンクをかっ飛ばせるところ。僕はスピード狂だったんだ。子どものころ、ディラン・モスコビッチ(カナダのペア選手)と一緒に練習してたんだけど、「がーっと飛ばしてはジャンプに失敗してズサーッと転んでたね」ってよく言われるよ。
Q:歴代のコーチや振付師があなたに何を与えてくれたか、それぞれひと言で答えてくれる? まずはドン・ジャクソンは?
P:fun(楽しむこと)かな。メイ・ヤンは規律を守ること。
オズボーン・コルソンは種をまいてくれた人。彼がすべての始まりだった。正しい方向性を示してくれて、大切なことを教えてくれ、今の僕になれるよう導いてくれた。ひと言でいえば発展かな。
エレン・ブルカは、コルソン先生の「調教師バージョン」。男子にとってはしつけの厳しい人だったよ。ドン・ロスは僕がジュニアからシニアに移行するときに、競技者として育ててくれた人。成長と自信を与えてくれた。ローリー・ニコルは育ててくれた人。クリスティ・クラールはテクニック…そう、とてもテクニック系の人。
デビッド・ウィルソンは…あはは、一緒に組んで楽しい人だな。振付師の優劣は語りたくないけど、彼もコルソン先生の教え子だったから、先生に与えてもらった物語と特徴を僕とたくさん共有しているんだ。ローリーは僕を育ててくれて、スケーターとしての自信をつけてくれたけど、デビッドはそれをもっと磨いてくれた。
ジェフリー・バトルはすばらしい友人で、演技者としても振付師としても天才。キャシー・ジョンソンは、それらすべてのコーチたちのクオリティーを持っている人。いろんものをまとめあげてくれる人だ。それぞれ、一番いい時期に一番ふさわしいコーチ・振付師に出会えたのは、本当にラッキーだったよ。
Q:あなたのスケート上のヒーローは? 子どもの頃、ヒーローはいた?
P:ごく幼い頃、まだ趣味でスケートを滑っていた頃は、ヤグディンとプルシェンコ、そしてストイコの戦いが好きだったよ。ソルトレイクシティー五輪とその前後の試合をテレビで見ていたな。カート・ブラウニングが現役の頃は、僕はまだ生まれたばかりだったから見られなかったんだ。
Q:あなたのショーでの演技を見るとカートを思い出すの。ショーで他のスケーターを見て、自分の演技に何か勉強になることってある? ショーで滑るのってどう?
P:最高だよ。試合で競っていると、自分がなぜフィギュアをやっているのか、なぜフィギュアが大好きなのか、時として忘れてしまうことある。ジャンプをはじめとして、すべてを完ぺきにやろうとやっきになるからね。でもショーではジャンプも振付の一部でしかないんだ。ショーで滑るのは大好きだよ。観客とコンタクトできるし、自分のパーソナリティーを表現することができるから。試合では、シーズンが進むにつれてジャンプに集中してしまって、プログラムの「演技」部分を忘れてしまいがちだからね。
Q:一番好きなジャンプは?
P:おかしいと思うかもしれないけど3Aなんだ。僕にとって一番ミスが多いジャンプだけど、取り組むとワクワクして、決まったときの達成感が大きいジャンプなんだ。一番嫌いなのはたぶん3Loかな。大事な試合でループをミスしてしまって、罰としてローリーにループをいくつも入れたエキシを作られたことがあるよ。
Q:追うのと追われるの、どっちがいい? SPでトップに立つのと、2位から追い上げるのと、どちらが理想形?
P:SPトップに立つほうがいいと思う。他選手のことを考えずに自分だけに集中すればいいから。他選手を意識するとスケートが荒れてミスが増えてしまうんだ。
Q:勝利のための戦略というのはある? いろんな選手に聞くと、自分が調子がいいときと調子が悪いとき、なぜそうなるのか理由がわからないと言う人が多いの。偶然か魔法の産物みたいなのよね。だからジンクスに頼ってしまう。
P:僕はジンクスには頼らない。靴を右足から履くとか、調子がいいときは練習のときと同じ椅子に座ろうとする、とかはあるけどね。そう、確かに調子がいい悪いはミラクルみたいなものだ。トップ選手はみんな、よかったときと同じ状況をつくりだそうと苦労していると思うよ。僕の場合は神経質になりすぎてもだめだし、その反対でもだめ、微妙なバランスなんだと思う。ミスをしても引きずらずに、ひとつのステップ、ひとつのクロスに集中してプログラムを感じて滑り続けること。でも、それも体調や環境に左右されるから難しいんだけどね。僕を含め多くの選手が、その微妙なバランスを追い求めているんだと思う。
Q:あなたは人々に強いリアクションを起こすわね。夢中になるファンもいれば、批判的な人もいる。今のSNS(ソーシャルネットワーク)の時代は選手にとってきつい? SNSが時が選手に批判的になることは知ってる?
P:もちろん知っているよ。トップにいるならSNSで取り上げられることを覚悟しなきゃいけないし、いろんなことに左右されないこともが大切だと思う。
Q:あるコーチがこう言ったの。「人に悪口を言われても信じるな。でも褒められても信じてはいけない。自分の道を行け」って。以前あなたは、「自分が中国の選手だったら(もっと評価や支援を得られるのに)」と言ってものすごく批判されたことがあったわね。
P:自分にも言えることだけど、批判するのは簡単なんだ。特に、いいときには人は何かあら探しをしようとするものだ。それですっきりするんだろうし、対象を自分のレベルに引き下げようとするんだろうね。でも、さっきのコーチの話のように、いいことも悪いこともうのみにしないで、自分で判断して進むべきなんだ。
Q:自分のプログラムのうち、好きなプログラムを3つあげると?
P:「オペラ座の怪人」と、もちろん「四季」それと…「テイク5」かな。「オペラ座」と「テイク5」はすごくいいシーズンを送れたときのプログラムでもあるしね。
Q:バンクーバー五輪とソチ五輪の違いは?
P:大違いだったよ。バンクーバーのときは初出場でまだ19歳。メディアからのプレッシャーというよりも、地元カナダで最高の演技をしてメダルを、というプレッシャーを自分にかけてしまっていたんだ。今では、最初の五輪で5位は立派じゃないかと思うようになったけどね。ソチはまったく違う気持ちで臨んだんだ。いい演技でも悪い演技でも結果をひきずらず、楽しもうと決めていた。やるべきことをしてきっちり競技すること、そして競技を忘れて大会自体を楽しむこと、この2つをやってやろうと心掛けていたんだよ。
Q:雰囲気(vibe)としてはどちらがよかった?
P:バイブとしては、自分にとってはソチのほうがよかったな。チームカナダの選手同士の絆がすばらしかった。バンクーバーでは他の選手が自分の演技を見に来てくれた話なんて聞いたことがなかったけれど、ソチではスキー競技の選手が団体戦を応援に来てくれたし、選手同士で励まし合う雰囲気が最高だった。団体戦のメダルが特に思い出深かったよ。個人のメダルはしょっちゅう取ってるけど、家族のような親しい仲間と一緒に表彰台に上がれたのはすばらしい経験だった。ソチの2つの銀メダルはかばんに入れて持ち歩いて、イベントのときに子供たちに見せたりしてるけど、自分の功績で人を励ますことができるのはすごく嬉しい気分だよ。ソチではスコットと他の競技を見て回ったのも楽しかった。特に女子ホッケーの試合は最高だったな。
Q:少なくとも秋までは休養の予定ですよね? 競技に復帰したときにはどんな結果を達成したいと思っていますか?
P:結果というよりも…もちろん試合では勝ちたいし、勝てたら嬉しいけど…僕の目標は「自分のために滑ること」なんだ。去年もソチに向けてそう言い続けてきたけど、結局それはできなかった。ソチでは、3度の世界王者だから勝たなきゃとか、チームメイトのために勝たなきゃという意識を持ってしまってね。母国からの期待というより自分自身の問題だったんだけど。もし競技に戻ると決めたら、自分がベストであり、自分のように滑る選手はほかにはいないんだ、ということをあきらかにしたい。僕自身も楽しみながら、自分のすべての動きで人々を興奮させたい。
Q:今でもスケートは好き? リンクに向かうのは楽しい?
P:今は試合もないからやるべき課題もなくて、ただリンクに上がることを楽しんでいるよ。リンクには友達もいるしね。ただグライドしたり、エッジワークの感覚を楽しんでいる。1日を終えてリンクを降りるときには、自分の体にはこの痛みや疲れが必要だったんだという満足感を感じている。1日中家で寝てることもできるけど、自分はリンクに行きたいんだ。友達の練習を手伝ったりもできるしね。以前は毎日だったから苦痛としか感じていなかったけど、自分の体に最大限の負荷をかけることがどんなにすばらしい感覚か思い出すのに、この休養は必要なんだと思う。
Q:インタビューでは必ず聞いている質問よ。「スケートって何?」
P:ええと…スケートは自由だ(Skating if freedom)。
Q:自分の特徴を3つの単語で表すと? あなたはどんな人間?
P:僕は…楽しい人間であり、意志の強い人間、そして負けず嫌いな人間だ。(joyous, determined, and competitive)
Q:自分を成功に導いてくれたものは? 他者とあなたの最大の違いは何だと思う?
P:パワーだね。パワフルな身体、強さだと思う。
THE ICEで披露した新プログラム。動画主さま、ありがとうございます。
マイケル・ブーブレの歌はフィギュアではよく使われるけど、パトリックの珠玉のスケーティングには本当によく似合いますね。西岡アナによると、競技に戻るときにはこれをSPで使う可能性もあるとか。
アンコールのジェフとの「エレジー」コラボがまたすばらしい! よく見るとパトリックとジェフの動きの細かな違いもわかって、すごく貴重な演技ですね。
これ見ると、やぱり戻ってきてほしいなあとすごく思います、パトリック。今季のカナダナショナルでの復帰もありえるかも?と言われていますが、どうなんでしょうね?