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インタビュー「ブライアン・オーサー 新しい世代を駆り立てる」 その2
フィギュア雑誌『International Figure Skating』10月号に掲載されたブライアン・オーサーのインタビュー。前回掲載した「その1」の続きです。
フリーダムすぎるハビエルくんに、まるでママのような過保護っぷりを見せたオーサーですが、今回は羽生くんメインのお話です。

元記事: "Brian Orser  Inspiring a New Generation” by Susan D. Russell
International Figure Skating (volume 20, issue 5, October 2013)


「ブライアン・オーサー、新しい世代を駆り立てる」その

 羽生に対しては、フェルナンデスとは違う課題と向き合うことになった。
「みんな知ってると思うけど、ユヅルは才能のかたまりだよ。彼にはハビとはまったく違うカリスマ性と強い情熱がある」とオーサーは言う。「世界選手権の後、僕らはユヅや彼のマネージメントをしている人たちと話をしたんだ。彼が確実にいい体調でいられるようにするべきだと考えたから。彼らにこう言ったんだ、たとえ怪我をしていないときでも、継続して理学療法を受けることがマストであり、もっと強い体をつくらなくてはならないよって。つまり、かなりハードなオフアイス・トレーニングのプログラムをやってもらうよってことだった」
「彼にはこの夏、基本的なフィットネスや体力増進のエキササイズだけでなく、ダンスやピラテス、体幹を鍛えるエキササイズも含んだプログラムをやってもらってる。これはシーズン中ずっと続けていく予定だよ。以前の彼は、オフアイス・トレーニングがどう役に立つのか、理解していなかったと思うんだ」

「彼は以前から筋肉モリモリになるのを恐れていたんだ。とても痩せてほっそりしていて、彼にとってはジャンプを高く跳ぶのに好都合な体型だからね。でも同時に、体の強さがなければいつかは怪我をすることになってしまう。それこそまさしく、昨シーズン彼に起こったことだった」
「世界選手権の結果については、ユヅルはがっかりしていたよ。でも、彼自身の手には負えない潜在的な問題があったんだ。怪我をしていたし、ケアしなくてはならない喘息も抱えていたからね」
「(クリケットでは)毎週月曜日に、ものすごくハードなオフアイス・トレーニングのクラスをやってるんだ。ほとんどの子たちは愚痴を言ってるよ。(オフアイスを終えて)リンクでの練習にやってくると、筋肉痛だーとか、脚がブルブルするとか、汗びっしょりだとか言ってる。でもユヅルは“僕のお気に入りのクラスだよ。あのクラスが大好き”って言うんだ」
「この6週間で彼がまったく違う人間になったことに気づいたよ。丈夫で強い体になってきた。そして彼自身、その感覚が気に入っているらしい。強くなればなるほど、もっとエキササイズしたくなっているんだ」

「そういうところは、僕の若いころと同じなんだ。いつも夏になると、僕もすごくきついオフアイスのプログラムをやったものさ」とオーサーは回想する。「ランニングにダッシュ、腹筋、腕立てといったエキササイズを、毎日ひととおりやらされたよ。しゃれた器具なんてなかった。リンク裏の空き地でやってたんだ。単純だけど、とにかくハードなトレーニングだったな。現代にもこれは当てはまると思うよ。大切なのは昔ながらのハードワークをやること。バランスを考えながらね」
「今はもっと科学的だけど、その頃は自分の体のことと、ただ一生懸命やるってことしか理解してなかったよ。僕は常に他の選手よりたくさん腕立てや腹筋をしたし、ランニングをすればクラスで一番速かった。今、クリケットのエキササイズのクラスを見ると、ユヅは僕とまったく同じなんだよね。彼はものすごく熱心に取り組むんだ」
「最近ナムと話をして、こんなことを言ったんだ。オフアイス・トレーニングのクラスのときには、必ずユヅルのそばに立って、彼とまったく同じことをしなさい。彼と同じ集中力をもって、同じ真剣さで、あらゆるエキササイズに100%の力を出しなさいとね」



 教え子の選手たちが、自分のことを心から信じてくれる人たちがいることを実感しながら毎日リンクに来ること。それが大切なのだとオーサーは考えている。「そう実感できたら、練習も楽しくなるし、“通し練習をノーミスでやる”とか“今日はクワドを全部降りてやる”といったそれぞれの目標にも、いい気分で取り組めるんだ。2013年の世界選手権では、僕はハビがメダルを絶対取れると信じていたし、ハビのほうも、自分を信じてくれるチームがついていると、彼の人生で初めて実感できていたと思う。このことがものすごく大きな違いを生むんだよ」

 冬季オリンピックを間近にひかえて、オーサーは彼の教え子たちが安全で満足できる練習環境にいられるよう、目を光らせているという。「ときにはインタビューを断ったり、ショーの出演依頼を断ったりするよ。彼らを守るためには僕は悪役にだってなれるんだ」
「世界選手権の後、僕らはハビと話し合いをもたなきゃいけなかった。たくさんのオファーが来ていたからね。韓国のショーが1つに、日本のショーが4つ。すべてのオファーをじっくり検討しなくちゃならなかった。オリンピックが迫っていることを常に念頭に置きながらね」
「これはヨナのコーチだったときに学んだことなんだ。僕はいつも彼女を守っていた。ヨナがこのクラブにいるときには、何ものにも邪魔されることなく練習ができるように、いつも心がけていたよ。舞台裏では僕が悪役を引き受けていた。今、彼らに対して同じことをしているんだ」
 
ツアーに復帰

 7月に、オーサーはデビッド・ウィルソンと共同で、羽生を看板にした日本のアイスショー「Fantasy on Ice」の振付を担当した。国際的な大きなショーを手がけるのは2009年以来だったため、ややナーバスになっていたよ、とオーサーは打ち明けた。「長いことショーには全くかかわっていなかったから、ちょっと難しいかなという気がしてたんだ。でも、やってみたらすぐに勘が戻ったし、デビッドとは相性がとてもいいんでね」
「ショーにはハビが招待されていて、ナムも招待してもらえるよう話をつけることができたんだ。ナムにとってはこれが初めてのビッグなショーだったから、グループナンバーに参加したり、日本のファンからちょっとしたプレゼントをもらったりといったことに、ものすごく感動していたよ。今や彼はすっかり興味しんしんだよ」
「それに、ブライアン・ジュベールやステファン・ランビエールといったベテランスケーターたちが、ナムの面倒をみてるのを見るのはおもしろかったよ。みんな彼を連れまわして、一緒にサッカーをやったり、ジョークを言い合ったりしていた。ナムはこの先どんな世界が待っているのかちょっと体験できたと思うし、それもすべて地道な努力の先にあるんだとわかったんじゃないかな」



 この体験でオーサーは、自分自身のツアー生活を思い出したという。「世界選手権でいい成績をあげると、ISUのツアーに参加できるという特典もあってね、もう1か月友達とすごすことができたんだよ。友達の多くは東側の出身だったから、飛行機でちょっと会いに行くってこともできないんだ。だから、このツアーが彼らと会い、お互いのことをもっとよく知って、一緒に楽しくすごくいい機会だったのさ」
「僕の時代には、オフシーズンのショーには3つの選択肢しかなかった。スターズ・オン・アイスと、アイス・カペーズ(1940年から1995年ごろまで続いたアメリカのショー)、そしてチャンピオンズ・オン・アイスだ。僕が一番好きだったのはスターズさ。なぜかというと、初期のスターズはスケーターが自分たちで作るツアーだったから。僕ら自身でショーのコンセプトを考え、グループナンバーを作っていた。スケーターが集まり、アイディアを検討し合って、どうやって観客を楽しませるか考えるんだ。そのプロセスが素敵で、とても楽しかったな」

「そのうち、サンドラ・ベジックやクリストファー・ディーン、マイケル・シーバート、リー=アン・ミラーといった本物の振付師が参加するようになった。そこで、自分たちはプロフェッショナルなショーをやってるんだなって実感するようになったよ」
「僕はトム・コリンズのショー(チャンピオンズ・オン・アイスのことだと思われます)に何年間も参加したけど、あそこは3時間のショーの間、スケーターはずっと座ってて、自分の番が来たら1曲滑って、シンプルなオープニングとフィナーレを滑るだけだった。スターズの場合は、最初から最後まで自分たちが積極的にかかわるショーだったよ」 (そのに続く…)

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 なるほどー。オーサーは羽生くんが日々戦う姿に、自分自身の若いころを重ねているんですね。オーサーって勝負にとてもシビアなところも、ハビくんみたいにマイペースなところも、羽生くんみたいにひたむきなところもあって、なかなか興味深い人ですね〜。
次回は最終回。ヨナをめぐるバンクーバー五輪の話、「2人のブライアン」でおなじみのカルガリー五輪の話、セレブになりつつあるゆづ&ハビの話などなど。最終回もどうぞお楽しみに!

JUGEMテーマ:フィギュアスケート
カテゴリ:羽生結弦 | 13:40 | comments(14) | trackbacks(0) | - | - |
コメント
たらさま

早速の「その2」翻訳、感謝感激です!

やはりオーサーも、ゆづの集中力と修得能力をお手本にするようにとナム君に言っているのですね。

常々我が家の愚息に見習わせたいと切望している自分、よく分かります! やはり母心ですね〜

ナム君は終わっちゃったけど、オーサー家の長男次男達の戦いが明日から始まりますね!
頑張ってほしいです。 刑事君もね!
| oveja | 2013/10/04 11:19 PM |
待望の結弦クンに関する部分の記載、ありがとうございます!

結弦クンがクリケットにいるおかげでナム君は得しちゃってますね(笑)。

オーサーが言うように楽しんで滑ることが大事だと思うのです。バーンアウトが心配です。
今シーズンは楽しむどころではないんでしょうけれど、勝って欲しいとはいつも思いますが、あまり刹那的になって欲しくないんですよね。
全日本を考えると、どうしても、どの選手もかなり心理的にも苦しくなってしまい、避けられない道なんですが。なんとかならんでしょうかね?

明日いよいよフィンランディア杯SP始まりますね。
先ほど結弦クンの練習模様を拝見しましたが、どんな衣装なのかとても楽しみです。

どうか今シーズンは、ケガのないように、体調をくずすことのないように、と祈るばかりです。

| ブルーベル | 2013/10/05 12:33 AM |
練習動画もあがってて、いよいよゆづのオリンピックシーズンが始まります。

食が細くて、喘息の持病があって、色々課題のあるゆづ。勝ち抜いていくために必要なハートの強さはすでに備わっているので、体幹を鍛える成果が着実にあがってくるのを待つだけ。
ゴールは2月ですものね。

続き楽しみにしています。
| ぷぅのママ | 2013/10/05 6:17 AM |
たらさん

はじめまして!とても貴重な海外の記事をこのように
翻訳して頂いて感激しております。
中身もすごく濃くて
本当に素晴らしいです。

この記事をわたしのブログでも紹介させていただいても
よろしいでしょうか?

わたしは羽生選手の大ファンです。
娘がバレエをしているので芸術スポーツに惹かれてしまうのです。

どうぞこれからもよろしくお願いたします。
次の記事も楽しみにしております。^^
| red | 2013/10/05 9:13 AM |
たらさま

こんにちは!翻訳ありがとうございます。
最終回、待ちきれません!

JOもあとちょっとですね。
うちは、今日の放送がない地域なので
誰かが動画あげてくれるのを期待してます。
| みかん | 2013/10/05 10:58 AM |
たらさん その△遼殘ありがとうございます

オフアイス・トレーニングで頑張ってるんですね 体幹を鍛えて風邪や怪我に負けない体力がつけばいいですね
きっとパワーも出てきて、弓のように力強くてしなやかさが増すことを祈ってます 
ああ!!!  いよいよ今夜のフィンランディア杯・・・
楽しみです 

余談ですが・・トップの写真が大好きなんですよ(^o^)
オーサーコーチの本当に優しい眼差し(観音様みたいww)と結弦くんの安心しきった穏やかな笑顔   お互いリスペクトしてるのがよく解って、見ている方も嬉しくなってしまいます

最後の そのを楽しみに待っています
| まーまりん | 2013/10/05 5:28 PM |
 たらさん事件です! 羽生くんお顔に絆創膏・・・オロオロ。

>彼がまったく違う人間になったことに気づいたよ
 
 今までの彼のような体型の人は気胸になりやすい。喘息も普通はステロイド剤でコントロールするけれど、ドーピングの関係で使える薬剤も制限されるのではないかとずーっと心配でした。
 だから彼が強くなったとしたら、こんなうれしいことはない。でも、もうあのはかなげな少年はいないと思うとなぜかさびしさがふつふつと(特殊な趣味はないはずの私・・・なんですが)

>羽生くんが日々戦う姿に
戦ってもいいんですが、やり過ぎないで〜
たとえオフアイスでも、やりすぎは怪我の元。

 いつも感謝しています。流し読みなんてできませんよ(笑)

| よのにょ | 2013/10/05 5:41 PM |
>ovejaさん、あらら、オーサーと「ママ仲間」なんですか?w

ナムくんは夏の試合では好調だっただけに、JGPで力を発揮できなかったのが残念でしたね。オーサー家の長男は圧勝の初戦、次男はミスはあったけれど上々の滑り出しでしたね!
そして刑事くん、クワド決めて優勝。ファイナル決定です!
| たら | 2013/10/06 6:12 AM |
>ブルーベルさん、衣装はまさかの「色違い」でしたね! 水色、とても似合っているとは思いますけど、もう少し変化があってもよかったかな…。

昨シーズンは特に、常に気を張って100%全力投球という印象でしたよね。でも今年はプロ持越しという選択をした時点で、少しだけ力を抜く(いい意味で)ことができたと思うんです。
フィンランディアSPのキスクラを見ても、ちょっと余裕が感じられたかなと思うんですが、どうでしょう?
| たら | 2013/10/06 6:14 AM |
>ぷぅのママさん、オリンピックシーズン始まりましたね!

SPの動画もあげてくださった方がいて、本当にありがたいです。心配された「筋肉ムキムキ」にはなっていなかったので、ちょっと安心でしたね!w
| たら | 2013/10/06 6:14 AM |
>redさん、ご返事遅れまして申し訳ありません。ブログでご紹介いただくのは大歓迎です。どうぞよろしくお願いいたします。

お嬢さんがバレエをなさっていると、フィギュアの見方も違うでしょうね。私はそういう素養がないので、きれいとか素敵とかしか言えないのがもどかしいです…^^:
またコメントいただけますとうれしいです!
| たら | 2013/10/06 6:14 AM |
>みかんさん、JO終わりましたね! 動画もうあがっていますね。ご覧になれたでしょうか?

私はラッキーなことに現地観戦できまして、オーサー組のハビエルくん、ちょっとスピードはなかったけれど、圧倒的な演技内容、そして存在感でした!
| たら | 2013/10/06 6:15 AM |
>まーまりんさん、SPのステップを見ると力強さが増しているような気がするのですが、トレーニングの成果がもう出ているのかな!?…ひいき目でしょうかね^^; 

トップの写真、私も大好きなので使わせてもらったので、そう言っていただけてうれしいです^^
| たら | 2013/10/06 6:15 AM |

>よのにょさん、ご安心ください。SP時の写真では絆創膏はなかったですよw
https://twitter.com/eelinpaas/status/386458018600071168

>だから彼が強くなったとしたら、こんなうれしいことはない。でも、もうあのはかなげな少年はいないと思うとなぜかさびしさがふつふつと

よーくわかりますよー。そういう二面性が羽生くん独特の魅力でもありますよね。でも彼が成長していく姿を見られるのも、私はうれしいなあと思うのです。
| たら | 2013/10/06 6:16 AM |
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