ハビエルと結弦をかかえること。オーサーインタビューon Icenetwork

久々の更新…しかもジュンファン関連じゃない更新はいつ以来でしょう(゚∀゚;)

 

今朝出たばかりのIcenetworkのブライアン・オーサーインタビューが、とても興味深い内容だったので、とりあえずざざっと全訳してみました。

これまでのオーサーのインタは、どちらかというと選手の仲の良さやクリケの一体感を強調するものが多かったと思いますが、今回はハビエルと結弦をかかえるのは「大変だ」と明言しています。(それも二度もw)そして2人の個性の違いや戦略の違いを、より具体的に語っています。

なんとなく、ではありますが、これは今まで以上に羽生くんとの距離が縮まってきた、あるいは縮めたい、というオーサーの気持ちのあらわれなんじゃないかという気がするのです…思い込みかもしれませんけど。

 

大急ぎのざっと訳なので誤訳、誤字などありましたらすみません。

元記事はこちら→Overseeing Fernandez, Hanyu a challenge for Orser Posted 11/10/16

筆者はいつも一味もふた味も違う、深みのある記事を書いてくださるJean-Christophe Berlotさんです。

 

 

「オーサー、フェルナンデスと羽生をかかえることはチャレンジだと語る」

(challengeには「困難や苦労」と「やりがい」のふたつの意味がありますが、今回はどちらか一方の意味ではなく両方の意味があるような気がします)

 


昨年、ハビエル・フェルナンデスはSPでクワド2本を着氷し、彼のキャリアにおいて技術的に画期的な地点に到達した。今季は羽生結弦がSPとフリー両方で4Loを着氷するという、同じく重要な節目を迎えた。今年のフランス杯の前日、ふたりのコーチであるブライアン・オーサーがicenetworkのために時間を割いて質問に答えてくれた。

 

IN:あなたは2人の世界チャンピオンを指導していますが、2人とも現状にとどまるのではなく、さらに成長を続けています。どうやって2人をこれほど奮起させられるのでしょうか?

 

BO:僕は何かを提案するとき、それが彼らのアイディアになるように努めているんだ。うまいタイミングが見つかったら、僕はそのアイディアを放り込んでやって、それを彼ら自身のものとしてつかませるんだ。彼らに「これはこうしなさい」と言うよりも、このやり方のほうが好きなんだよ。僕が自分のものにする必要はない。スケーターたちが強い選手になりたければ、または強い選手たちであるのであれば、彼ら自身がそのアイディアを思いついて実行に移したほうがいいからね。

 

IN:それでもハビエルとユヅルは他の選手を大きく引き離していますよね。平昌五輪までもう1年です。彼らはもう技術を磨かずにただ表現面を磨くこともできるはずですよね。

 

BO:2人とも状態は非常にいいよ。ただし、2人は違う戦略をもっているんだ。ユヅはまだとても若く(12月7日で22歳になる)、このフィギュアという競技を前進させなくてはならないと感じている。ハビの考え方は違うんだ。次の五輪のころ、彼は26歳になる。彼は自分が今もっている力にかなり満足している。高いPCSをもらっていて、それこそ彼が必要だと感じているものなんだ。自分のPCSに自信をもっている。彼は今は新しい要素が必要だとは考えていない。五輪に1度出て2度めの五輪を迎えるには、もちろん技術を向上させることは必要だし、彼はそれをやってきた。けれども、「OK。これでいい」と言うべき時点はあるんだ。エレメンツは同じでも、それをいかに実行するかについては常に向上の余地がある。試合に勝つかどうかはGOEで決まるんだ。+1では足りない。+2や+3をずらりと並べなくては勝てない。もし難しいステップシークエンスを完ぺきに滑りつつ、プログラムのキャラクターや音楽を的確に表現できたら、レベルとGOE+3と高いPCSをそろえることができる。僕の教え子たちはそれほど多くのクワドに頼らなくてもいいんだよ。他の選手たちでも同じことが言えるかもしれないけれどね。

 

IN:では、ユヅルはそれとは違う戦略をもっているわけですね?

 

BO:ユヅは今現在、クワドに非常に力を入れている。今季はSPとフリーで合計6本入れ、うち2本が4Loだ。彼は今季、技術面を非常に強化しようとしている。彼はとても難しい課題に取り組もうとしていて、僕にとっても彼の戦略を理解するのにいくらか時間が必要だった。彼はそれらの新しいエレメンツをモノにすることにこのシーズンを使いたいと思っているんだ。これはつまり、シーズン初めにはスケーティングをいくぶん犠牲にしなくてはならなかった、ということだ。クワドに集中的に力を入れていたから、それ以外のスピードやスピン、エレメンツといった点で、最初はそれほどよくなかった。StSqはおそらくあるべきレベルの70パーセントほどだっただろう。彼はあるとき、この戦略を僕に説明してくれたんだ。僕は完全に理解したよ。同時に、僕はハビエルの戦略もよくわかっているよ。

 

IN:ユヅルはそのせいでスケート・カナダで負けたということですか?

 

BO:スケート・カナダは彼にとっては楽勝だったはずだった。だが、彼はクワドをある程度モノにしたかった。彼はより大局的に考えていたんだね。今、彼はクワドをクリーンに入れるためにプログラム全体の練習をしようとしている。4本めのクワド(フリーでは後半に2本のクワドを入れている)にいい状態で入っていけるようにするためにね。シーズンが進むにつれて、彼はまた違う考え方にギアを変えていくだろう。辛抱強くあらなければならないのは僕のほうさ! そしてもちろん、彼に常にパーフェクトなものを求めてしまう連盟と彼のファンもね。でも彼は僕を信じさせてくれたんだ。(But he is making me a believer.)

 

IN:そうすると、ハビエルに対してはずいぶん異なる指導法をとることになるんですね?

 

BO:ハビエルについては、心肺機能を高めるトレーニングをしなくちゃならない。彼のプログラムを滑りこなすには高い心臓の機能が必要だからね。彼は振付を表現することに全力を注がなくてはならないんだ。それが彼の持ち味だから。彼のスケートにはすごく魅力があるんだ。彼のトランジションをこなすにも多大なエネルギーが要る。彼のトランジションは本当にすばらしいんだけど、かなりの労力を要するんだよ。トランジションはたくさん練習しなくちゃならない。僕の考えでは、トランジションというものは演技をより自然に、楽々と見せるためにある。無理に力を入れなくてもスピードを出すためにある。体のバネを使って動きを生み出すんだ。ハビエルがトロントに来てトランジションを学んで以来、彼に限界というものはなくなった。振付師のデビッド・ウィルソンにとって、ハビエルのトランジションを創造することはとても楽しい(cool)ことなんだ。

 

IN:あなたから選手たちにこんな戦略をとるようにと勧めることはあるんですか?

 

BO:もうひとつの興味深い例がエリザベート・ツルシンバエワ(カザフスタン。先週のロステレコム杯で5位)だ。彼女は自分にできることはすべてやろうという考えの持ち主で、毎日練習時間を増やして1日に4回も通し練習(曲かけ練習)をするんだよ。僕は彼女に、毎日ではなく「通し練習の日」をつくって、その日に集中して取り組んでもらうように言っているんだ。通し練習というのは緊張感のある、大切なものでなくてはならない。彼女には休息することを学んでほしいんだ。通し練習は1度きりのものであるべきで、「さあ次またやりましょ」というものではない。前日寝るときに「明日は大切なフリーの通し練習の日だわ」と思って寝てほしいんだ。選手たちはともすると当初の戦略から離れていってしまうものだから、それを引き戻すために僕らコーチが必要になるんだ。


IN:あなたの教え子は自分に自信がある選手ばかりに見えます。どうやって自信をつけさせるんですか?

 

BO:選手は自分自身と、自分がやってきたことを信頼しなくてはならない。ただリンクに出て運に頼るようなことはしたくない。これからおこなう演技が確かで、よいものになると確信していたんだよ。選手たちには彼らの(演技の)平均値に注意を払うように言ってるんだ。最初はあまりいい平均値ではないかもしれない、70パーセントとかね。シーズンが進むにつれて平均値は95パーセントになり、たまに100パーセントも出せるようになる。自分の平均値が信頼できれば、試合に出て競争が厳しい状況の中でもいいものを生み出すことができる。準備ができていないということが僕は嫌いなんだよ。

 

IN:今おっしゃったことが、まさに2016年ボストンワールドでのハビエルだったんですね?

 

BO:そのとおり! ハビエルはふだん、月曜から金曜までリンクに来て練習しているんだが、彼が一番いい通し練習ができるのは、2日間休んで週末が明けた月曜日なんだ。ボストンでは彼は、かかとの怪我のためSPとフリーの間まったく練習することができなかった。だから、フリーの前に彼に言ったんだ。「今日はきみにとって月曜日だよ!」って。実際は土曜だったけどね。すると、彼はそれで気分がよくなった。ふだんの月曜日にやっているようなフリーを滑ることができたんだ。一番いいフリーをね。
コーチは常にどんなシナリオにも対応できなくてはならない。そして、それにふさわしいエピソードを用意していなくてはならない。ごまかしのないきっちりとしたエピソードをね。先週のロステレで、ハビはSPでミスをしてしまった。そのときの滑走順はグループで1番だったんだが、ここフランス杯でもグループ1番を引いてしまった。彼はグループで最初に滑るのが好きじゃないんだ。もしもロステレと同じパターンをまたやってしまったら、同じ結果になってしまうだろうね。それは避けたい。だから何か違うことを考えなくてはならない。明日は違う戦略をおこなうつもりだよ。それが何かはまだ言えないけどね……うまくいったかどうか明日の夜にわかるだろうね(笑)

 

IN:あなたは世界の2トップを指導しています。いったいどうやりくりしているのですか?

 

BO:大変だよ。「ブライアンには優秀な教え子がたくさんいてラッキーだな!」なんて言う人の言葉を信じちゃいけない。本当に大変なんだ!
ユヅがこれまでのシーズンのほとんどをトロントで過ごしているのは、今年が初めてなんだ。いつもは日本と行ったり来たりするのがふつうだからね。だから、彼は僕がJGPに出かけたり、ハビエルに2週間同行したりすることに慣れていないんだ。もちろんこれが僕のふつうの生活なんだけど、彼はトロントでそれを目にしてこなかった。だから、彼は放っておかれたように感じている。でも、長い目で見れば、僕が留守にするのはとてもいいことなんだ。その間、彼はSSや振付のほうを練習できるからね。それらの練習は必要なものだし。僕がユヅとNHK杯に行くときにはハビエルにとっても同じことさ。1人でいろんな新しいことを練習することができるんだ。
僕は選手みんなの気持ちや課題にちゃんと気づき、理解できるように努めている。平昌五輪が近づくにつれて、プレッシャーが増しているのがわかるよ。ハビエルと2週間を共にできて嬉しいよ。その間にすばらしい収穫があったからね。ユヅと共に過ごしたカナダでの時間も同様だったし、NHK杯でもまたそうなるだろう。彼だけを見ることができるからね。
今後はチーム全体――コーチたちと振付師や選手たち――でグループディスカッションをしていこうと思っている。どのように前進していくか、選手たちをどうケアし、ベストな指導ができるか決めるためにね。僕らのリンクには、選手たちが支えられていると感じ、安全だと感じられるような、前向きないいコミュニティーがなくてはならないんだ。コーチ1人に選手1人、また別のコーチに選手1人、というのは僕は好きじゃない。このコミュニティーが調和のとれたものであるように努力している。僕は僕自身にかかわる個人的なことだと考えてやっているんだ。(I take things personally.)

 

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ふたつだけ補足…

 

「でも彼は僕を信じさせてくれた・納得させてくれたんだ」(But he is making me a believer.)

直訳すれば「でも彼は僕を信じる人に(今現在)させてくれているところだ」。

この記事全体を読むと超高難度に挑むのは本来オーサーのやり方ではないような気がします。難度的にはある程度余裕をもって(もちろん他選手に比べれば高難度ですけど)できばえやプログラム全体の印象を良くすることで、過去のヨナも勝利に導いてきたわけですし。

金メダリストという実績十分で、ただでさえ十分高難度の構成をもっている(おまけに怪我まで抱えている)羽生くんがさらに難度を上げることに、オーサーやクリケのコーチたちは最初は難色を示したのではないでしょうか? でも、今は「彼は僕を納得させてくれつつある」。羽生くんの口から戦略についてのかっこたる意志を聞いて、態度を変えつつあるオーサーの気持ちがうかがえるような気がします。

 

最後のI take thing perosonally.は訳すのがとっても難しい言葉ですけど、この場合は他人事とは思わない、単にビジネスだとは思わない。選手それぞれがかかえる課題や希望を、自分自身にもかかわる大切なものだと考えてやっているんだ、ということかな、と思いました。

 

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カテゴリ:羽生結弦 | 12:41 | comments(17) | trackbacks(0) | - | - |
TSL デビッド・ウィルソンインタビュー ゆづ・ハビ・パトリックを語る
TSL (The Skating Lesson) のデビッド・ウィルソンインタビュー。2016世界選手権の男子SPの翌日におこなわれたもののようです。
仕事の前にちょっと聞いてみるか〜と軽い気持ちで聞き始めたら、止まらなくなってしまった^^;
ウィルソンさん、話があっちこっち行ったり、ちょっとまとまりがないところもあるんですが、そういうのも感性を研ぎ澄まして生きている人ならではなのかな、やっぱりおもしろい人です。

というわけで、ちょこちょこ省いたり、話が行き来しているところを整理したりしています。そして、かなりのざっと訳。アンド最後の30分はカットしてしまいました……時間がなくてこれが限界^^;
後半はハビについての話が多くなりますが、ウィルソンって本当に情が深い人なんだなあとしみじみ。
そして、最近羽生くんからウィルソンの話があまり出てこないな、と思っていたんですが、クリケでは振付を外れるとレッスンも外れるんですね。考えたら当然か〜。初めて知りました。





TSLインタビュー:デビッド・ウィルソン、羽生とフェルナンデスとチャンを語る

Q:羽生は日本で大スターになっていますよね。彼が出演する映画も公開されるそうで。彼はフリーで戦士を演じていますが、映画でもサムライ役らしいですね。

おや、映画に? ワーオ。彼は戦士だよ。誇張でもなんでもなくね。【映画の話、全然知らなかった様子…^^;】

Q:確かに実生活でも戦士だけど、映画でも戦士の役なんですよ。さて、あなたにはTSLでヨナについて語っていただきましたが、羽生はヨナと比べていかがでしょうか? ヨナも韓国のスターですが、スケーターとして普段ご覧になっている中で、2人はどのように似ているでしょうか?

確かに似ているね。2人ともかみそりの刃のように鋭く攻める。まさに戦士のように、虎のように。両者とも競技者としてとても強い。そして両者ともとても自分を律する人間だ。おもしろいことに、ゆづに振付をしたとき、ゆづは「ヨナは僕のアイドルだった」と言ったんだ。その理由は、彼女の演技だけでなく、おそらくバンクーバーまでの4年間の持っていき方も含めてだと思う。
ソチのためのフリープログラムの選曲を検討しているとき、彼は僕にとても感動的な手紙を書いてきたんだ。「ロミオとジュリエット」にしてほしいとね。僕自身はもう使い古されている曲だから乗り気じゃなかったんだけど、彼の心は決まっていた。すごく感動的な手紙だったよ。
「お願いですから手を貸してください。五輪チャンピオンになるためには何でもします。死んだっていいんです。2018年まで待ちたくない。今、どうしても取りたいんです。あなたが教えてくれることは何でもします。助けてください」って。
ジェリー・マグワイヤ(映画『ザ・エージェント』でトム・クルーズが演じた芸能エージェント役)が「僕を助けてくれ〜!」って叫んでいるみたいだった。ワーオ、なんてアツい子なんだろうと思ったよ。

Q:彼はリンクの外でも情熱的なんですか?

彼はスイートな子だよ。「ハ〜イ」っていって、よく笑うし、練習のときも周囲のみんなにとてもよくしてる。そう、そんなにアツい子じゃないと思うな。いや、もしかすると情熱的な面もあるのかもしれないけど、ゆづのことはそれほど知らないんだ。彼とは2シーズンしか仕事をしていないし、ヨナと強い絆ができたのに比べたら、彼とはそこまで近しくないんだ。

Q:今は羽生の振付はジェフとシェイリーンがやっていますが、クリケットのリンクでは一緒なんですよね。ハビエルや昔のヨナのように、羽生に毎日レッスンをされているんですか?

いや、彼とはもうレッスンしてないよ。ソチ以降、彼とは仕事をしてない。彼がジェフやシェイに振付してもらってることは嬉しく思う。2人は僕が大好きな人たちだし、本当にいい作品ができるのは2年、3年一緒にやってからだから。もちろん第一作で傑作が生まれることもあるけれど、人間関係を築くことが重要なんだ。
その点、織田信成など今でも継続して仕事している例外をのぞいては、日本のスケーターたちとは十分な仕事ができなかった。日本は大好きだし、日本のスケーターも大好きだよ。でも、日本人選手は世界のあちこちの振付師に手を出す傾向がある。ローテーションで複数の振付師を渡り歩くんだ。たくさんの日本人スケーターと仕事したけど、ほとんどが1、2作どまりだった。
ユヅがジェフとシェイリーンと継続して振付していることはうれしく思うよ。お互いによく理解し合って、その選手の能力を知ることがとても大切だから。1週間でぽっとできるようなものじゃない。

Q:羽生の昨日のSPは、4Tは完璧ではなかったものの、気迫でまとめましたね。今季の彼は攻撃モードに入ってるように見えますが、練習でも以前と違いはありますか?

うん、確かにあるね。ゆづとの仕事でひとつ不満があったとしたら、これはジェフにも言ったんだけど、なんで僕はSPの振付をやらせてもらえなかったのかってこと。だって、僕が振付していた当時はゆづにはスタミナがなくて、SPはすばらしいけどフリーでは死にそうになっていたからね。僕がやったフリー2本とも、最後は息もたえだえだった。シェイやジェフの振付に比べて僕の振付が特に大変というわけではないのにな。
今季はパトリックが復帰して、クワドとアクセル1本ずつでスケートカナダで勝ったよね。一方でボーヤンがクワドを連発し始めた。そしたら、スケカナから戻ってきたゆづは火がついていたんだ。ジェフとシェイリーンに電話してきて、「クワドを増やしたいから振付変えてください」って。僕がジェフと会ったとき、彼は「Oh my god!」と頭を抱えていたよ(笑)
でも、ゆづはまったく見事だった。それをやりこなしたんだから。今はフリーを滑りきれるスタミナがついて強くもなった。それをうれしく思う一方で、僕のときはなんで?って嫉妬しちゃうよ(笑)でも、すばらしいことだ。

Q:以前、私たちは彼について話すとき、プログラムの終わりごろにはヌードルみたいになってるね、なんて言っていたものでした。【TSLの2人は以前よく「ゆづるは疲れると濡れたヌードルみたいになってしまう」と言っていました。最近では「今の男子の中で一番非ヌードル的になったね!」などと、いわばネタみたいになってます】

まったくだよ(ぐねぐねと体を倒す仕草をしながら)本当に死にそうになっていた。彼は努力してスタミナをつけたんだ。ゆづは何かを望んだら自分の意志の力で実現してしまう人なんだ。

Q:あの2シーズンのフリーは、「ロミオとジュリエット」に「ノートルダム」と、非常によく使われる曲を使いましたよね。

そして翌年は「オペラ座」ね(笑)。ゆづと最初に仕事し始めたとき、彼は「オペラ座」がやりたいと言ってきて、僕が拒否したんだ。なぜならパトリックがローリー振付の「オペラ座」をやったばかりだったから。その年にはまだ僕はパトリックとは組んでいなかったけれど…いや、もう組んでたかな? とにかく他者の後追いはしたくないものだ。曲はたくさんあるんだからね。
ゆづは「ジョニー・ウィアーが好き」とも言ったので、「ノートルダム」は僕なりの着地点だったんだ。ジョニーはあの曲で滑ったことがあったからね。彼の代表的なプログラムではないけれど。だから、ゆづは気に入ってくれたよ。

Q:特に去年から今年の演技を見ると感じるんですが、羽生は芸術的な面で覚醒しつつあると思いますか?

正直、さっきも言ったように僕は練習を遠くから見ていただけだから、よくわからないんだ。振付にかかわっていないから、踏み込すぎないように距離をとっている。試合ではパトリックやハビに同行していたしね。

Q:パトリック、ハビ、そして羽生との仕事は、それぞれどう違うのでしょうか?

そう、僕はソチイヤーにはゆづ、パトリック、ハビの3人に振付をしていた。自慢するわけじゃないけど、表彰台にほとんど絡んでいたわけだ。ハビがあの余計なミスさえしなければ表彰台は全部僕のものだった。世界の男子トップ3に振付するなんていうのは、おそろしいものだよ。それぞれの個性を生かし、結果につなげなくてはならないのは、本当に大変な仕事だ。でも今でもそのうち2人とは楽しんで仕事してるわけだけど。
彼ら3人はそれぞれ本当に違うんだ。性格も違うし、体格も違う、スケーティングのスタイルもジャンプのテクニックも違う。世代を超えたスケーターのイメージってあるだろう? 例えば、この選手は昔のあの選手に似てるな、とかね。今回最終グループに入ったロシアの男の子、若くて才能ある子。彼はすごく「イリヤ・クーリック」だね。ジャンプがものすごく正確で。【ジェニーがここで「コリャダですね」と相槌を入れます】ところが、この3人は3人とも非常に個性的な、独自のタイプなんだ。歴史的上もっとも優れた3人だよ。本当にすごいことだ。
ハビにはハリウッド的なカリスマ、存在感がある。人々を爽快な気分にさせ、乗せてしまう演技ができるんだ。みんなに愛されてるし。僕が住んでいるコンドミニアムでも近所の人に聞かれるのはハビのことだよ。「あのスパニッシュボーイはどうだった?」「あなたのスパニッシュボーイ、テレビで見たわよ」って。
その魅力は愛から来てるんだ。彼の両親はものすごくいい人たちなんだ。彼の姉もね。ハビと彼のお姉さんと、マドリードでディナーを食べたときに聞いた話だ。お姉さんもスケーターでスペインチャンピオンだったんだけど、ジャンプが苦手でシングルとしては限界が見えつつあった。そこで五輪を目指してアイスダンスに転向することを検討していたんだ。パートナーも見つかってうまくいき始めていた。だがそのころ、ハビが目覚ましい成長をしていた。ジュニアGPに出て注目を浴び始めたところだった。彼女は「弟には本物の実力がある」とわかったんだ。そこで彼女はスケートをやめた。2人にスケートをさせるだけのお金はなかったから。僕は泣きそうになったよ。彼女はその決断をちっとも後悔していなくて、誇りに思っている。本当に愛だけなんだ。彼女は今看護師を目指してる。もう……ほんとにね。ハビの父はとてもハンサムで感じがいい人で、母はとても小柄でかわいい人。ハビは本当にいい息子なんだ。

Q:愛といえば、いろんな選手から話を聞くと、あなたはスケーターに本当に愛をそそぎ、彼らがいい結果を出せるように心から望む方だそうですね。そんなあなたにとって、教え子がお互いに競い合うのを見てどうなんでしょう?

僕自身、選手としてはほとんどダメだった。ノービスどまりで、ジュニアとしてさえ競技できなかった。友達が国内外の試合に出るのを外野から見ている子供だった。みんなの才能を本当に心からすごいと思って見ていたよ。ジャンプ以外の部分では僕のほうが勝ってたんだけどね(笑)
だから僕は、才能ある選手を見ると本当にすごいと思うんだ。ある意味、無欲でいられるんだね。選手たちに自分にできるものを最大限与えることは、僕の義務だと思ってる。
だからこそ、永遠に自分を許せないのは、ヨナが足のつま先を伸ばすよう指導してやることが最後までできなかったこと。古くからの友人にも「つま先は一番大事なものだよ!」って力説されていた。直してやろうと本当に努力したんだけどね。ヨナ本人にもジョークで言っていたよ。「きみがつま先を伸ばさないたびに僕がしかられるんだよ」ってね(笑) 
ともかく、そんな才能ある選手たちを教えるたびに、自分は恵まれてると感じるんだ。「この僕がよくこんな子たちと仕事ができるようになったもんだ」とびっくりするよ。だからこそ、その選手に対して責任を持たなきゃならないという意識を持っている。すべての選手に心を通わせようと努力するんだよ。

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話題たっぷり、充実のインタビューなので感想は書きませんが、少しだけ。
羽生くんが最初に「オペラ座」をやりたいと言ったとき、ウィルソンがNOと言ったのは、パトリックの「オペラ座」がらみのウィルソン側の事情だったの? えええっ!?
そして、ウィルソンともっと話しこんでいたら、ハビ家の姉弟関係と、羽生家の姉弟関係がとても似ていることを知ってくれただろうになあ…とちょっと残念。今ごろクリケでそんな時間が持てるといいな。

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カテゴリ:羽生結弦 | 14:57 | comments(12) | trackbacks(0) | - | - |
絶賛!「NHK杯で裏づけられた羽生のすごさ」 Japan Timesから
例によって激しく今さらなんですが…いやあ、すごかったですね!
幸いにも現地であの歴史的瞬間を目撃することができた私ですが(神様ありがとうございます泣)遠征後はたまっていたあれやこれやに追われて感想のひとつもアップできず(;∀;)
でもあのフリーのことを全然書かないのはもったいないなあ、でも今さら私の駄文なんか…などと思っていたら、『Japan Times』紙の記者、ジャック・ギャラガーさんが熱例なHanyu賛歌の記事を書いてくださいましたので、これ幸いと訳させてもらおうと思います。

元記事はこちら→Hanyu’s greatness confirmed at NHK Trophy BY JACK GALLAGHER DEC 1, 2015



「NHK杯で裏づけられた羽生のすごさ」

人生では、ふさわしい時にふさわしい場所に居合わせることがある。「Ice Time」(Japan Timesのフィギュアコーナーのコラム名)にとって、先週の土曜日はまさにそれだった。

その夜、五輪チャンピオンの羽生結弦がビッグハットで成し遂げたものは、まさに信じがたいものだった。スポーツと芸術が完ぺきにかみ合った瞬間だった。
2日間で3つの世界最高記録を生み出した、NHK杯での羽生のフリー演技。それはまったく驚くべきものだった。

才能あるアスリートと、人を魅了するショーマン――羽生はその両方を兼ね備えている上に、すばらしい人格の持ち主でもある。
21世紀の日本の理想像は誰かと言われたら、私は羽生を思い浮かべる。
底知れない潜在能力の持ち主で、何をやらせても成功してしまうだろうと思わせるのだ。
1981年、読売ジャイアンツの三塁手だった原辰則が、ある投票で「日本を代表する男性」に選ばれたことがあった。日本で最も人気あるチームの、一番のスターであったことを考えれば、これは意外なことではなかった。
今なら、と考えたら、私は投票が必要とさえ思えない。もし今調査がおこなわれたら、きっと羽生が大差で選ばれるだろう。そして彼はそれにふわさしい人物なのだ。

羽生のフリーの得点は216.07。SPの106.33と合わせて、総合322.40という歴史的な得点をたたき出した。羽生は300点の壁を最初に破った選手となり、世界選手権3連覇のパトリック・チャンが保持していたそれまでの最高点295.27を大幅に上回った。
土曜の夜、会場からホテルに戻る車の中で、私はただこんな独り言を繰り返していた。
「信じらない。いや、まったく信じられない」

ほどなく、海外でNHK杯を見ていた人々から羽生への称賛の声が届き始めた。
カナダのCBCのスケート解説者、キャロル・レインはこうツイートした。
「今日、羽生結弦がフリーの最高記録を破るのを見られたことは、非常に名誉だった。名人芸とはこういうものなのだと世界に示した。#敬意」
31年間勤めた『シカゴ・トリビューン』紙を先週引退したばかりの高名なスケート記者、フィル・ハーシュも、ツイッターで自らの意見を述べた。
「もしこの演技がオリンピックでされていたら、何十年と語り継がれる語り草になっただろう」
ところで羽生の演技後の余波の中で、ハーシュと彼のフォロワーとの間でこんなおもしろいやりとりがあった。
「確かに見事でしたが、高橋(大輔)や(アレクセイ)ヤグディン、(ステファン)ランビエルに比べると、彼にはカリスマ性が足りないと思います。彼は芸術的ではあるけれど、芸術家ではないのでは」あるファンがそうツイートしたのだ。
異を唱えられて引き下がるような男ではないハーシュは、ただちにこう返した。
「彼のカリスマ性はそのジャンプとエネルギーから発せられている。1998年五輪のタラ(リピンスキー)がそうだったように。卓越したスポーツ性は芸術性になり得るのだ」

そのとおりだ。

全米で3度優勝し、現在はNBCの解説者を務めるジョニー・ウィアーも、羽生のフリー演技に感動させられたようだ。
「ユヅくん、とてつもなくすばらしい世界記録! 322点越えだなんて! 今まで誰も足元にさえ及ばなかった点だよ。ブラボー!」

幸運にも筆者は、スポーツメディアにたずさわってきた長いキャリアの中で、数々の偉大なアスリートたちの戦いぶりを生で観てきた。
サッカーのペレ(サントス時代)、ボクシングのモハメド・アリ、バスケットボールのウィルト・チェンバレン、アイスホッケーのウェイン・グレツキー、フットボールのジョー・モンタナ、野球のウィリー・メイズ。
いずれも各スポーツの偉人であり、最高の選手と多くの人に認められ、長期にわたってその名をとどろかせた者ばかりだ。
もし羽生が今後あのような演技を続けるなら、彼らの仲間入りを果たすこともあり得るだろう。

フィギュアスケートは採点競技であるため、本当のスポーツと言えるのか?という声もあるが、これは間違った議論だ。
確かにジャッジは時に間違いを犯すことがある。だが、スケーターはどこからどう見てもアスリートだ。われわれがあのフリーのようなレベルで演技する羽生を見ているとき、そのスポーツの最高峰に位置する、もっとも脂の乗った選手を目撃していることは、まったく疑いようがないからだ。
NHL(北米アイスホッケーリーグ)はあらゆるスポーツの中でも最もタフなリーグのひとつだが、私が推測するに、NHLの選手たちにヘルメットも防御パッドもつけずにリンクを全力で滑走してくれ、一度でいいから空中で4回転してみてくれ、と頼んでみたら、おそらく彼らの99%が「そんなのクレージーだ」と言うだろう。
羽生は2日間で5本の4回転ジャンプをクリーンに跳んだ。彼はアスリートではないなどと思う人間は、どう考えても現実が見えていない人間だろう。

まだ時期尚早ではあるが、オリンピックのタイトルと、シニアとジュニアの世界タイトルを持ち、これから長い未来がある羽生は、いつか史上最も偉大な男子スケーターと言われるようになるかもしれない。
これまで複数の五輪メダルを獲得したのは、スウェーデンのギリス・グラフトストローム(1920、1924、1928)と、オーストリアのカール・シェーファー(1932、1936)、そしてアメリカのディック・バトン(1948、1952)の3人だけだ。

羽生がファンとメディアに愛される理由のひとつは、彼の明るい性格、それに頭の回転の速さや一生懸命さにある。最近、世の中はどちらを向いてもネガティブな話題だらけだ。だからこそ、ポジディブなオーラを放つ人物を見るとさわやかな気持ちになれるのだ。
昨シーズン、上海で開かれた世界選手権で、羽生のリンクメイトであるハビエル・フェルナンデスが彼をおさえて優勝したとき、羽生は心からよろこんでいた。それは羽生という人間をよく示すふるまいだった。

大きなハートをもった、偉大なアスリート。

2018年平昌五輪まではもう2年と少しだ。だが、もしそこで羽生がこの土曜日と同様な演技をすれば、再び金メダルを手にし、フィギュア史上のレジェンドたちの殿堂に名を連ねることになるだろう。

彼以上にそれにふさわしい人間はいないだろう。


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きゃvネコ いやあ、すさまじいまでの絶賛っぷり! あの瞬間を目撃した高揚感そのままに書かれた感じですね。
演技だけでなく人格のすばらしさの讃え方がすごいです。えっと、ハビのワールド優勝を心からよろこんでたって、え?…ってところは若干あるものの(゚∀゚;)
ただ、「これから長い未来がある」というのがせつないです。羽生くんが平昌で引退するかもしれないこと、ギャラガーさんは知らないのかな。もし知ったら「世界的なアスリートになれるのにそんなもったいことするな!」って暴れかねない勢いですね^^;

この記事で私が一番共感したのは、正確にはギャラガーさんではなくフィル・ハーシュさんの言葉ですが、"Stunning athleticism can be artistry."という一文でした。
athleticismは日本語に訳しにくいのですが「競技性、スポーツ性」という意味。競技として卓越している場合は、それが芸術性になり得るのだと。これって、私がフィギュアに美しいなあとか、魅力的だなあと惹かれる一番の理由なんですよね。ジャンプだけじゃなくスピン、スパイラル、ステップ…フィギュアの技の美しさって、本当に比類がないと思うのですよ。
現地で見たあの歴史的な『SEIMEI』は、技そのものの美しさが冴えわたり、そこに羽生くん本人の圧倒的な存在感とエネルギーがかみ合わさって、リンク全体がその美しさと強さで包まれてしまったような、そんな『SEIMEI』でした。まあ、そう言いながら最後のルッツまでは気が抜けなかったのも事実ですけどね^^;


…最後に、記事とは関係ないですが、ハビの話が出ているので。
得点が出てキスクラから立ち上がった羽生くん。オーサーに何やらまくしたてていましたが、"I feel like same as Javi, yeah?"(ハビと同じような気分だよ。ほらあれ、わかる?)と言っていたんですね。オーサーもすぐ察して、2人で「ああ〜ああ〜ああ〜」と(笑)。
ハビが上海ワールドで優勝したときのあの奇声、あれを2人で真似ていたんですね。なんつーか、偉業を成し遂げた直後というのになんだそれ(笑) 高揚するあまりテンション上がりきってたんでしょうか。
やっぱりクリケットは不滅ですね! ハビ、これ見たかしら?
(10:29あたりから。動画の該当箇所への直接リンクは→こちら


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羽生フィーバーと陰陽師と。ビバリーさんのオータム・クラシックレポ@icenetwork
「オータム・クラシック」ライスト観戦組の皆さま、お疲れ様でした〜。昼夜真逆の時差に加えて、今回見られると思っていなかった公式練習までライストされた(カナダスケート連盟さま、どうもありがとうございます)おかげで、考えていたよりずっとハードなライスト観戦になっちゃいましたね、疲れた…。

日本では各ニュースが「羽生の初戦」「羽生優勝」「五郎丸の次は羽生の陰陽師ポーズだ!」と煽りまくっていますが、カナダではおなじみのスポーツ記者のビバリー・スミスさんが、羽生フィーバーにわいたこの大会の様子と、羽生くんのシーズンデビューの演技について、ちょっとユーモラスに、でもしっかりと取材されて伝えてくれました。ちょっと時間がなくてかなりのざっと訳ですが。

元記事はこちら→Amid hysteria in Barrie, Hanyu goes about business



「バリーの狂騒の中で、しっかりと仕事をした羽生」

今週、トロントの北に位置する小さな町・バリーで開催された「スケートカナダ・オータムクラシック・インターナショナル」。羽生結弦の存在は、この小さな大会の様相をがらりと変えるものだった。

今季からISUのチャレンジャー・シリーズから外れたオータムクラシックは、客席が5、6列しかないナショナル・トレーニングセンターでおこなわれた。この大会はチャレンジャー・シリーズだった昨年でさえ、低予算で運営されていた大会だった。

だが、日本のソチ五輪男子チャンピオンがエントリーし、ここでシーズンの幕開けと新フリーの初披露をおこなうことになり、日本人ファンの大群がカナダ行きの飛行機を予約し始めたと聞きつけたカナダスケート連盟は、すぐに対策をとった。メディア担当のスタッフを派遣し、リンク横にはテーブルを設置したり、人通りの少ない(貴重な)スペースを見つけてミックスゾーンを作ったのだ。

ファンがバリーに向かっていることを把握した日本スケート連盟も、羽生を守るための小さな部隊を送りこんできた。屈強そうな2人の男性を常に貼りつかせ、羽生がリンクから降りた後の囲み取材をわずか7分間だけと決めたのだ。ファンにとってこの時間は、小さな会場で素顔の羽生に近づける貴重なチャンスとなった。

バリーでこんな状況は初めてのことだった。火曜日の練習にはファンが大挙して訪れた。会場となったアランデール・レクレーション・センターが開場する30分前の朝6時半には、彼らはチケットを買うために玄関前のスロープに長い列をつくった。席は指定席ではなかったため、彼らは座席に上着やマフラーやかばんを置いて、これは自分の席だと主張した。

初日の夜には、これにとまどった清掃係たちが、席取りのために置いてあった上着やその他もろもろの品をすべて回収して、遺失物預かり所に預けてしまった。

驚いたファンたちは、今度は屋外で徹夜することにした。玄関前にはずらりと寝袋が並んだ。カナダスケート連盟のスタッフが何度も彼らに声をかけ、ホテルに戻ってベッドで寝て、明日早朝に戻ってくればいいと説得しようとしたが、0℃をわずかに上回る気温の中、彼らはがんとして動かなかった。

連盟はこの大会のライブストリームをおこなった。そこで、今回遠征できなかった日本のファンたちは、こちらに来ている友人たちにパンフレットを買ってきてくれるようメールを送った。実際に試合に関連するページはパンフレット中わずか3ページだけなのだが、日本人ファンたちは大量に買いこんでいた。

羽生が火曜日の公式練習に初めて姿を見せると、たくさんのビデオカメラやスマホが彼のありとあらゆる動きを追いかけた。日本のメディアも駆けつけてきた。時差ボケに見舞われた記者たちは、時おりアリーナの控室に行っては、そろってベンチの上で居眠りをしていた。

そんなファンや記者たちは、すばらしいものを目にすることになった。

羽生は総合277.19点で優勝。カナダ王者のナム・ニューエンに36.09もの大差をつけた。そのニューエンはSPではいい演技を見せたものの、フリーではミスが目立った。これが初の国際大会となる25歳のショーン・ラビットは銅メダルに輝いて、喜びの涙を見せた。

羽生はSPの4Tはステップアウトとなったものの、93.14点で首位に立った。トラブル続きだった2014-15シーズンからジェフリー・バトル振付のプログラムを継続している。コーチのブライアン・オーサーによれば、「このプログラムでホームランをかっ飛ばしたことが一度もなかった」から、らしい。
「僕でもあれで終わりにはしたくなかったと思うよ。非常に美しい作品だからね」とオーサーは話した。

しかし、誰もが待っていたのは羽生の新フリーだ。そして、それは期待を裏切らないものだった。

オーサーによると、羽生は今年の春にトロントに戻ってきたとき、到着後すぐ、2001年に公開された日本の人気映画『陰陽師』のサントラ全曲を提示してきたという。羽生が自分から音楽を提案してきたのは、昨季の『オペラ座の怪人』に続いて、これが2度めだった。

映画では日本の有名な俳優である野村萬斎が「陰陽師」役をつとめている。だが、羽生が一番関心を持っていたのは、野村が中世にまでさかのぼる日本の伝統的な大衆芸術「狂言」の狂言師として長く活躍してきたことだった。

今から少し前、今年のある時期に、羽生は野村と面会した。野村は今49歳、俳優であり狂言の師匠である。この会談は日本テレビの海老澤明子ディレクターの仲立ちで実現したものだった。海老澤は今回、オータムクラシックの取材でバリーに来ていた。【海老澤さんのお名前について:原文ではアルファベット表記でした。万が一漢字表記が間違っていたら誠に申し訳ありません】

海老澤は野村と羽生の面談を撮影し、2人の技法や身体の動かし方を比較する番組を製作した。野村と会ったとき、羽生は圧倒されていたようだったという。
「彼は野村さんの大ファンなんです。とても緊張していましたね」と海老澤は言う。

羽生のフリー冒頭の動きは、野村が狂言でおこなう動きだ。羽生はまず、黒い手袋をした2本の指を唇の前でかまえる。それからもう一方の腕を頭上に振り上げる。野村は狂言を演じるとき、箱型の長い袖がついた日本の中世の伝統的な衣装に身をつつむ。野村と羽生は、羽生が滑るときにはこの衣装と動きをフィギュアの動きに合うようにアレンジしなくてはならない、ということで一致したという。オータムクラシックで羽生はこの衣装を披露した。ベルトとわずかに先が広がった袖がついた、象牙色と金色の柔らかなチュニック。フィギュアに合うよう、狂言衣装よりスリムな作りになっている。

この映像の中で、野村は羽生に、最初に腕を高く振り上げることで見る者を惹きつけられるのでは、と提案した。ただ狂言の振りをまねるだけではだめですよ、と野村は言った。「その動きが何を意味するのか、どの振りが最も効果的か、考えなくてはならないでしょうね」と。

羽生の腕の動きのほとんどは、太鼓のリズムに合わせてパッパッと切り替わる。プログラムの最終盤では、最後の太鼓が鳴り響く中、リンクの真ん中に立って両腕をさっと左右に開く。

3度世界王者に輝いたエルビス・ストイコは、武術をたしなむことでも知られているが、その彼が映画の撮影を終えて帰宅する途中、アランデールの会場に立ち寄った。ここに来て見れてよかったよ、と彼は話した。

「羽生のフリーはドラマチックすぎない。どこかしら抑えた雰囲気があって、僕はそれが気に入ったよ。演技スタイルと音楽がプログラムを作りあげていく。声高に主張するプログラムじゃない。僕は大げさなのは嫌いなんだ。これはとても心地よく、きれいなスケートだね。プログラムを見ればそれだけで伝わってくる、そんなプログラムだ」

「それに彼自身も身体がしっかりして、少し強さが出てきたね。スケーティングにも成熟が感じられる。以前ほどバタついた感じもしなくなった。自分の動きをよりコントロールできるようになっているね」

羽生は完璧ではなかったものの、シーズンの最初であることを考えれば、彼の演技は息をのむほど素晴らしいものだった。最初の4Sはしっかり回り切って着氷。だが、続く4Tでは手をつき、後半の2つ目の4Tでは転倒した。得意なジャンプのひとつである3Aでもステップアウトした。羽生は演技後に日本語のインタビューで、これらのミスが悔しいと話した。

コンビネーションスピンはどれもキレがよく、バリエーションに満ち、想像力あふれるものだった。背中を後ろに深く倒したイナバウワーは比類なくすばらしかった。

振付はシェイリーン・ボーン。シェイリーンは振りの中に彼女自身へのオマージュも取り入れている。それは「羽生のハイドロブレード」。現役時代に彼女とパートナーのビクター・クラッツのトレードマークだった動きだ。

昨シーズンに比べて今シーズンの羽生はしっかり練習ができている。トロントでオーサーと一緒に過ごす時間も増えている。シーズンのデビュー戦は、本拠地のクリケットから車で約1時間のオータムクラシックで迎えた。次戦はアルバータ州レスブリッジで開催されるスケート・カナダなので、引き続きカナダに滞在できる。その後、NHK杯までトロントで3週間トレーニングすることができる。

オーサーはこう言った。「彼がそばにいてくれるのは本当にうれしいことだよ」


【追記】
ビバリーさんが個人でやられているブログに、このicenetworkの記事とほぼ同じ内容の記事がアップされました。→
こちら
このブログに追加されているところで「おっ」と思ったところ。
.献Д佞SEIMEIをリンクサイドが見ていたらしく、His jaw dropped.(お口あんぐり)だったらしいことw
△修靴萄埜紊離ーサーの言葉の後に、Hanyu admits that it's allowed him something he did not have last year.
つまり、(去年と違って今年はトロントでオーサーと練習できる時間をしっかり持てているから)「去年できなかったことが今年はできている」と羽生くん自身が言ったんですね。
お仕事やらショーやらでなかなかトロントに帰れていない様子にファンはヤキモキしていましたが、去年に比べたらずっといい状況なのですね…よかった。


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ビバリーさん、あいかわらず素晴らしい取材力! オーサー、ストイコ、日本テレビのディレクターさん、カナダスケート連盟などなどたくさんの方に取材されて書かれた記事だということがよく伝わってきます。

それにしても日本のファンとメディアによる「羽生フィーバー」がよほど強烈だったようですね。ふだんはあまり人通りもない小さな町に、いきなり羽生くん1人のために(他の選手のファンや特定ファンでない方ももちろんいらっしゃるでしょうけど、まあ大部分は羽生くんファンとして)メディアとファンが殺到したのだから、よっぽどインパクトがあったんだと思います。
ただ、日本の私たちからすると、今回「大群」というほどの人数ではなかったように見えるのですが。現地に行かれた方から聞いても、ファンは写真を撮ったりする以外はおおむね穏やかで、上海ワールドや去年の中国杯に比べたらずっと静かだったらしいのですが、カナダの人にとっては自分の街でこんな事態を初めて目の当たりにしたインパクトはすごいものだったのでしょうね。
ただ、「寝袋で野宿してチケ取り」は確かに行き過ぎだと思うけれど、「友達の分までパンフ爆買い」や「写真を撮りまくる」行為は、ああしょうがないかなと思えてしまう…。その辺の感覚がすっかり麻痺しちゃってるかも、とちょっぴり自戒してしまう記事でもありました。

あ、肝心の「SEIMEI」についてですが、ミスがありつつもプログラムの素晴らしさ、そして羽生くん自身の成長ぶりが、とても高く評価されたようでまずはひと安心。ストイコさんの言葉も嬉しいですね!そしてオーサーの言葉にしみじみと感慨が…。


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2015ワールド男子フリープレカンより 羽生くんコメント書き起こし
ううう〜>< 時間に追われてるっていうのに、やってしまいました。2015世界選手権男子フリー後プレカン録音から、羽生くん部分の書き起こしです。もうとっくに他の方がやってらっしゃるんでしょうけれど……はい、完全に自己満足です!(゚∀゚)
ハビとデニスの話もすごく興味深いのですが、そこまでやる余裕がなく(;_;) いつか、いつか、できたらいいなあと夢見つつ…。

ハビ、羽生くん、デニス、と年齢が近い3人だったせいか、あるいはデニスに「ハビがいるとプレカンがすごく楽しいんだ」と言われる新世界王者・ハビエルの存在が大きいのでしょうか、すごくなごやかで和気あいあいとした雰囲気ですね。こんなプレカンに出席できた記者さん、カメラマンさんほか関係者さんたちが、心の底からうらやましいぞ!

で、羽生くん。いつもながら頭の回転が速く、言葉の選び方がすばらしいのですが、ふだんより打ち解けた雰囲気だったり、意外なところで言葉につまったり、今まで聞けなかった心情が聞けたりと、彼の素がすごく伝わってくるような気がします。
そして……ちょっと強調しておきたいのですが、羽生くんは自分自身以外の誰も責めていないこと。苦しい時期に的確な言葉で励ましてくれ、家族のように接してくれているオーサーコーチへの感謝と、他選手へのリスペクトの言葉しか口にしていないんですよね。謙虚で率直で、とってもいい会見だったと思います。

元サイトはこちら→Ice Skating International: Online (2015世界選手権のフルカバー。ものっすごい情報量です。チンクワンタ会長のプレカンまであります)
男子フリープレカン録音の直接リンク→こちら
羽生くんのコメントだけを抜粋して動画を上げてくださった方が→こちら(ありがとうございます)




Q:【ハビエルに続いて】では銀メダリストの羽生サンも、今日の試合について少しコメントをいただけますか?【質問は英語ですけど"ハニュウサン"って言ってますねw】

羽生:えー、あのう…いや、ほんとに悔しいです。まあたぶん今の自分にとって「悔しい」という言葉が一番合ってるかなあっていうふうに思うんですけど。いろんなことを言うと…なんですかね、自分の気持ちをうまく伝えきれないと思うので、悔しいという一言にすべてを託したいかなと思ってます。
あ! でも…でも、ですけど(笑)、やはりハビエルがすごいいっぱい練習をしてきて、すごくすごくトレーニングをしてきたということを、自分のまわりの方々が言ってくれたり、もちろんブライアンが教えてくれたりだとか、そういうこともしてて。その結果がこうやって実ったというのは、本当にうれしいなと思うのと同時に、いつもハビエルと一緒に試合をやってきて、いつも「おめでとう」って、「誇りに思うよ」って言ってくれたハビエルが、今回は立場が逆になって、僕が2位でハビエルが1位っていうのは、僕自身もやはりこの立場になって初めて、彼をチームメイトとして誇りに思うな、というふうに思うと同時に、自分はやっぱりそんなに心が広くないから悔しいですけど、絶対勝ってやりたいって思いますけど。でもその反面、自分が一緒に練習している仲間が優勝するということは、こんなにも嬉しいんだな、というふうに思いました。


Q:ここ数日の練習ではクワドの調子が今一つでしたが、今日の6分間練習では4Sがよさそうに見えました。ところが、デニスの後の本番の滑走では様子が違って緊張しているように見えました。この時いったい何があったのでしょうか? もうひとつの質問は、あなたの今季のプログラムは2本とも非常に美しい振付ですが、大変なシーズンでしたし、ミスなく滑ることができませんでしたよね。どちらか1本でも来季に継続するつもりなのか、あるいは新しいスタイルに挑戦していくのでしょうか?

羽生:ええっと…ええむ【←って言ってるんですよね、ちょっぴり英語風?】公式練習で4回転がうまくいかなくって、まあその時点でちょっとした不安はありましたけども、ただ、4回転サルコウに関しては、今回この中国に入る前からずっとトゥループよりも曲で決まる回数が多かったので、あまり心配はしていませんでした。ブライアンも、「だいたい決まったような降り方をしてる」で、そのあとに「もういいよ」っていう話をしてくれたので、まあ本当に自分の感覚を信じて、やりました。でも、6分間でうまく決まったんですけれども、やっぱり試合で、本番で決まんなくては意味がないなあと、自分の中でちょっと反省しています。
あと、そうですね、プログラムに関してですけども、今僕自身から出せるコメントはほんと少ないと思います。ただ、やっぱり両方ともクリーンなプログラムを1回も滑れてないっていう悔しさはありますし、両方とも本当に自分が気に入っている、やっていて楽しかったり、または自分がファントムになりきれたりだとか、滑っていて気持ちよかったりだとか、そういうふうな感覚があるプログラムなので、またぜひやりたいなあというふうには、自分の中では思っています。


Q:ハビと結弦は同じコーチについていますが、チームメイトとライバルという感情をどういうふうにバランスを取っているのでしょう? またブライアンとあなたの関係をどう表現しますか? 例えば父と息子みたいだとか、友達とか、兄とか?

【まずハビが「ナムを忘れちゃだめだよ」で笑いをとってから、「ブライアンは僕のコーチであり、父であり、友達であり、ときどきは敵にもなる(で再び笑い)とてもいい人だよ」といったことを言います】

羽生:ハビエルが言ったことそのまんま……じゃダメか(笑) まあでも、ハビが言ってくれたとおりに、本当に僕たちは幸せな環境で練習をして、トレーニングを積んで、こうやって試合に来ています。
自分がカナダに、カナダのトロントのクリケットクラブに移ってから、もうこれで3シーズン目が終わろうとしていますけれども、もうほんとに、初めてのシーズンから僕をブライアンのファミリーというか、そういう家族みたいな輪の中にすぐに入れてくれて。そして、一番たぶん思うところがあるのはハビだと思うんだけど。やっぱりずっとそれまでライバルとしてやってきて、今もライバルだと思うし、今もこうやって順位を争って、競技レベルの高い練習を一緒にできるわけですけども、やっぱりイヤだったと思うんですよ(笑)本心は。一緒に練習することによって……やっぱりブライアンもすごく苦労したと思いますし、どういうバランスでやればいいのかっていうのも。僕自身も入ってくるときに、大丈夫なのかな?っていうふうに思いましたけれども。やっぱり彼は、本当に、なんていうか、仲間想いだなというか、僕にとってはお兄さんみたいな存在で。まあお父さんにはなれないですけどね(笑) ハビエルはさすがにお父さんはないですけども、僕にとっては心優しい、自分の家族のうちのお兄さんというか、そういう感覚でいます。
まあ、ブライアンは、そうですねぇ、ときどきお母さんにもなりますけども(笑) Like mother.(笑) でもやっぱり、さっきも言ったとおり、ブライアンはコーチとしてもすばらしいものを持ってると思うし、スケートのコーチとしてほんとに僕たちの背中を押してくれています。ただ、彼はコーチとしてだけではなくて、僕たちクリケットのみんな、ファミリーをすごく大切にして、人としての成長というか、そういうものをいつも見守ってくれている、そんな存在です。


Q:ブライアンは今回3人のトップレベルの教え子をこの大会に出場させていますが、来年はナムはもっと強くなるでしょうし、彼はどのようにしてトップレベルの選手たちをコントロールできているんでしょうか? また、今までブライアンに受けたアドバイスの中で、ベストなアドバイスはどういうものでしたか?

羽生:そうですね、ブライアンは、さっきも言ったとおり、すべてのグランプリにほぼ行ってて、ナムもいますし他のスケーターもいろいろいて、女子のスケーターもね、たくさんいるんですけども。僕が思うに、ブライアンがまとめているわけですけども、ブライアンがボスなわけですけども、やっぱりクリケットっていうチームがあるからこそ、僕たちはこうやって常にレベルの高い練習・トレーニングを積めるのかな、って思うのと同時に、常にだれか1人が見てるわけじゃない。
例えば、こうやってテレビの仕事でトレーシーとか来てくれますけども、ほんとにたくさんのスペシャリストがクリケットクラブにはいて、そしてクリケットクラブの中でみんなが知識をシェアしながら、または僕とハビのようにお互いに意識し合いながら、常に集中力を保っていたりだとか、ああ練習サボっちゃだめだなと思ったりだとか、そういうことをしながらやってきているので。もちろんブライアンの凄みっていうのもあります。こうやって試合に来て、僕たちを整えてくれる。僕たちをいい精神状態に持ってきてくれる、っていうのはありますけども。ただブライアンだけに感謝するのではなくて、クリケット全員の先生方に僕は感謝したいなと思っています。
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カテゴリ:羽生結弦 | 18:37 | comments(47) | trackbacks(0) | - | - |
オーサー、上海ワールドの羽生くんとハビエルを語る @ CCTV5動画
あああ、ここのところ仕事に追われまくっておりまして、全然更新できない間に上海ワールド、終わってしまいましたorz
昨日タチアナ・フレイドさんがアップしてくださった男子フリープレカン録音や、なごなごスモメダ会見など、記事にしたいことはたくさんあるのですが、まとまった時間がとれず悶々としています…><

とりあえず仕事の合間に、CCTV5(中国中央テレビ体育チャンネル)で放送されたブライアン・オーサー単独インタビューを訳しましたので、こちらをアップ。
もうすさまじいほどの羽生フィーバーだったらしい今回のワールドですが、このインタビューでも優勝したハビエルよりも羽生くんについての質問が先行してしまっています。しかも、このアナウンサー(男性)、名字なしの「ゆづる」呼びなんですよ(笑)

インタビュー動画へのリンクは→こちら
(わりとゆっくりめの、わかりやすい英語で話しているので、オーサーの表情と見比べながら読んでいただけたら、より伝わるのではないかと思います)




アナウンサー:ハビエル・フェルナンデスにとっては、すばらしい瞬間でしたね。初の世界タイトルを手にしました。昨日のフリーでは、とても難しいプログラムをみごとに演じました。今大会では結弦が最強と見られていたので、これは驚きでした。

オーサー:結弦は今シーズン、とてもたくさんの問題に直面してきました。まず秋に腰痛、そしてここ中国で衝突事故、それから手術と捻挫…たくさんありました。だから彼は、ベストの状態で中国入りしたわけではなかった。ただただ状況に恵まれていなかったのです。

フェルナンデスは体調も万全でしたし、もともと遺伝的に強い体質です。フリープログラムはクワド3本に、つなぎもたっぷり入り、振付もすばらしい、非常に難しいプログラムです。これ(高難度、濃いつなぎ、よい振付)は結弦とハビの両方に対して僕らがとった戦略なのですが――フェルナンデスは健康な状態を維持してきたので、アドバンテージは彼のほうにありました。彼は通常どおりの練習を毎日できる状態でした。その意味で、フェルナンデスのほうが有利でしたね。

アナ:では、今後ハビエルは結弦にとって強力なライバルになっていくでしょうか? 3年後には次のオリンピックが来ますよね。

オーサー:ええ、もちろんそう思いますよ。この2人は何度も抜きつ抜かれつしてきましたからね。結弦が僕のところへ来るまでは、フェルナンデスのほうが結弦より少し先を行っていたんですが、結弦が来てからは上に立つことは結弦のほうが多くなりました。今のこの状態に、2人はなじんでいます。

一方、僕は中立をキープしています。どちらかを贔屓することなどありません。今回はフェルナンデスの優勝を大変うれしく思います。なぜなら、初めて世界タイトルを取るということは……もしかしてこれが唯一のタイトルになることだってありえます。とても特別なことなんです。だから僕はすごくうれしかった。羽生はすでにワールドも五輪もタイトルを持っています。だから、フェルナンデスが今回、スペインの歴史を作ることができて、本当によかったと思っています。

アナ:私たちから見ると、優秀な2人の男子選手たちのバランスを取るのは、コーチとして大変難しいことなのではないかと思うのですが。例えば試合当日、結弦に「今日はハビエルとどう対戦すればいいんでしょうか?」と聞かれたら? 今のこの状況で実際にどうやってバランスを取るのでしょう?

オーサー:僕は2人に対して、身体とメンタルの両方で用意を整えてきました。2人は同じメンタルトレーニングを受けてきています。それを試合で実行できるかどうかは、当人たちにかかっています。僕はただ、2人にいいスケートをしてほしい、それだけを望んでいます。それ以降のことを僕がコントロールすることはできません。フィギュアは採点競技です。結果がどうなるかは9人のジャッジと3人のテクニカルパネルにかかっています。僕の手の内にはありません。

2人のうちどちらかを贔屓することなどありません。彼らは僕のことをよくわかっているし、僕は彼らをよくわかっている。僕が2人によく言うのは、僕らはコミュニケートし合わなくちゃいけない、ということです。彼らが僕にもっと見てほしいなと思っていても、僕が先回りして判断することはありません。2人の間には嫉妬もありませんし、何か言いたければ僕に伝えてくれなくてはならないんです。

僕には2人の考えがとてもよく読めます。彼らのボディランゲージ(無意識的なものも含めての仕草や表情などのこと)もすぐに読み取れます。結弦は今、いつも以上のケアを必要としているなとか、今はハビにちょっと怒ったほうがいいぞとか、ハビがまだ寝てるだろうから自宅に迎えに行ったほうがいいぞとか――彼はスペイン式ですから(笑)。
2人の国の文化はまったく違いますからね。この点は、僕にとってはずいぶん楽なんです。もし2人が同じタイプのアスリートたちだったら、僕は苦労するでしょう。その点、この2人はまったく正反対なので、僕にとっては楽ですね。

アナ:結弦はベストなコンディションではなかったとおっしゃいましたよね。今回そのような状況でタイトルを逃したのは、彼にとっては残念なことだったでしょうね。今大会の結弦の演技を、あなたはどう評価されますか?

オーサー:(銀メダルが決まった後の)昨晩、そして今朝もう一度会ったとき、僕は彼にこう言いました。君のことがとても誇らしいと。あらゆる難題を克服しなくてはならなかった、このクレージーなシーズン、君がこの道のりに対処し、乗り切ってきたことをとても誇りに思っていると。そこには君が人生で学ぶべき大切なことがたくさんあったんだと。

五輪金メダリストになると、その人の人生は変わります。すべてが変わるんです。彼は今、日本でスーパースターです。誰もが彼に寄ってこようとします。誰もが自分のショーに出てほしいと思っている。彼には大変なことです。さまざまな活動もありますし、時間をずいぶんとられてしまいます。

五輪金メダリストというタイトルを身にまとうことには、大きな社会的責任がついてきます。その巨大な責任を、彼はよく果たしています。この大会でも、彼は唯一の五輪チャンピオンとして、上海にやってきました。五輪メダリストの中でも、競技を続け、GPSとGPFを通して滑り続けてきた数少ない選手のひとりです。彼が競技を続けている理由はたくさんありますが、彼はスケートを愛している、それが主な理由なのです。



エルモ 羽生くんもハビも、クリケットへの信頼感をよく口にしますが、それはオーサーが「分け隔てしない」「とことん選手のことを思いやる」「言いたいことがあれば口に出させる」を実践しているからなんだなあ、としみじみ感じたインタビューでした。
そして、ソチ後に羽生くんが置かれた立ち位置についても。
歴代の五輪金メダリストがほとんど引退・休養してきた中、不遇な事故や病気があったにしろ、金メダリストが試合に出続けて結果を出すのがどんなに大変なことか教えてくれた、今季の羽生くん。なぜ続けるのか、それは「スケートを愛しているから」。シンプルなこの言葉に胸が熱くなります。

ハビエル、羽生くん、おめでとう。そしてオーサー、おめでとう!



では仕事に戻ります(;_;) 次のアップはいつできるのかな……><

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カテゴリ:羽生結弦 | 15:07 | comments(24) | trackbacks(0) | - | - |
オーサーが語る羽生くんの現在 @ A figure skating insider【追記あり】
昨日、日本スケート連盟の小林強化部長が羽生くんの状態について発表したコメントから一夜、今日はカナダからオーサーコーチのインタビュー記事が出てきました。
ライターはカナダのスポーツジャーナリスト、おなじみのベバリー・スミスさん。
小林部長は羽生くんが「プレッシャーやストレスなく氷の上に立てるように」現在の状況は明かさない、という方針でしたが、オーサーは対照的にいろいろなことをかなり具体的に明らかにしています。両者の方針は食い違っているように見えますが、きっと日本とカナダでフィギュアを取り巻く状況が違うせいもあるし、選手をよりよい状態にしてあげたいという熱意は同じなのかなと思います。

もうすでにツイッターなどで複数の方が翻訳されていると思いますが、いちおう自分でも情報を整理しておきたいから、という理由もあり、この記事を全文訳しておきたいと思います。

元記事はこちら→HERE IS YUZU? HOW IS YUZU? Posted on March 22, 2015 by BevSmithWrites




「ゆづはどこ? どうしているの?」

フィギュアの世界選手権が来週にせまってきて、いろいろと話題もぎやかになってきた頃だが、あなたはきっとこう思っているだろう。「で、ゆづはどこにいるの?」と。

しなやかな体と、蚊のようなウエストをもつ五輪&ワールド王者の羽生結弦は、ここまでのシーズンの大半を日本ですごしてきた。五輪金メダルという最大の勝利にむかってトレーニングしてきたカナダではなく、故郷の日本で。
そして今、中国の上海でおこなわれる世界選手権への準備を、コーチのブライアン・オーサーとのメールのやりとりという、非常に異例なやり方で進めているところだ。

「彼には全然会っていないんだ」オーサーはある日、トロントのクリケットクラブで話した。
クリケットクラブには、ここで練習しているヨーロッパ王者のハビエル・フェルナンデスとカナダの新王者ナム・ニューエンを応援するバナーが飾られている。今週木曜日には、世界選手権に出場する有望な息子たちのために、簡単な壮行会が予定されている。ただ、そこには羽生の姿はない。

「このシーズン、ゆづはたくさんの障害にぶちあたってきたからね」と、オーサーは言う。「何かから回復途中にあるときには、彼にとって居心地がいいのは日本なんだよ」

そのとおり、羽生はこの約7か月の間に、たくさんのことから回復しなくてはならなかった。それはまさにエリザベス女王が言った「ひどい年(annus horribilis)」だった。人間の神経にこたえるほど苦難に満ちた道のり、を指すときに使う言葉だ。

まずはじめは、腰の怪我のためにフィンランディア杯を欠場せざるをえなかった。次は11月の中国杯で、フリーの6分間練習中に中国選手のハンヤンと衝突。このとき、羽生は頭に包帯を巻いて演技をし、5回転倒した。中国杯後は傷を癒すために日本に帰った。

次のNHK杯までわずか2週間しかなかったため、羽生はそのまま日本にとどまった。この頃から腹部に断続的な痛みを感じ始めていたというが、原因はわからなかった。
だが、続くグランプリ・ファイナルでは圧倒的な勝利を果たした。総合288.16という高得点。2位のハビエル・フェルナンデスに34.26もの大差をつける圧勝だった。

その次は全日本選手権。この大会も2位を30点以上引き離して優勝したが、あきらかに痛みをかかえながらの試合だった。すでにその数日後に、膀胱からつながる尿膜管遺残を治療する手術をおこなうことを予定していた。
これは、普通は成長するにつれて消えるへその緒の残遺物のことで、彼は非常に珍しい痛みに苦しんでいたのだ。オーサーによると、羽生の尿膜管には嚢胞(のうほう)ができていて、これが炎症を起こしていたため、切除しなくてはならなかったという。

幸運なことに、医師団は関節鏡(内視鏡)を使った手術をおこなった。
「筋肉は1か所も切らずにすんだんだ。筋膜(筋肉や内臓を包む膜)は切らざるをえなかったけどね」とオーサーは話した。

当初は入院期間が2週間、その後4週間氷上練習はできない、と言われていた。実際、羽生が病床にいなくてはならず氷に立てなかった期間は5週間だった。この5週間のほとんどを羽生は病院ですごしていたのだろうと、オーサーは考えている。
「彼はいろんな薬剤にアレルギーがあるからね、薬剤については注意深い取り扱いが必要なんだ」とオーサーは言う。

ところが、これでも黒雲は晴れなかった。氷上練習を再開したとたん、羽生は足首を捻挫してしまった。おそらくあせって練習量を増やしすぎたのだろう。
「もちろん、彼のことだから急いでいろんなことをやろうとしたんだろうね」
この時点で、トロントに戻る選択肢はなくなってしまった。

羽生に世界選手権を2連覇させようと狙うオーサーにとっては、こういう状況すべてが、理想的なものではなかった。羽生とのコミュニケーション不足に少々いらだつこともあったと、オーサーは認める。けれども、それ以降2人の間のチャンネルは開かれた。今は毎日羽生からメールが来ているよ、とオーサーは言う。

「僕からは彼に、練習でどんなことを考えればいいか、何をするべきか、どんな曲かけ練習をするべきか、課題を与えているんだ。こういう状況では、ちょっとガイダンスをしてもらうことは、気持ちを新たにするのに役立つと思う。1人でリンクに行って、自分が何をすべきか、何を考えるべきか悩むよりもね。こうすればちょっとしたプランができて、それに従って動くことができるから」

今現在、羽生は日本で、コーチ不在で1人で練習しているのだという。オーサーにとってこれは悩みのたねだ。羽生が実際に何をやっているのか見ることができないからだ。オーサーは遠く離れたトロントからアドバイスを送ろうとしている。
「たしかにちょっと大変だ。彼は、練習はうまくいってるよ、曲かけもやってるよ、と言っているから、それ以上のことは望めないよね。実際、見る機会が来ればわかることなんだし」

現在、羽生の報告によると、4Sも4Tもうまく跳べているという。シーズン前半には3Lzに苦労する場面が見られたが、
「僕らはメールを通して、ルッツの問題を話し合ってきたんだ。で、今はうまくいってるみたいだと、彼は言っているよ」

羽生はジャンプのテクニックを忘れないように、iPadにいくつかの動画ファイルを入れているという。ルッツファイルに、サルコウファイル、ループファイルもあるらしい。
オーサーが唯一心配しているのは、たった1人で練習している場合、モチベーションの維持が難しいのではないか、ということだ。
「でも、彼はやる気にみちているし、彼ならうまくやってくれると僕は思うよ。だた、毎日ここでハビと一緒に練習したいんだろうなあとは思うけどね」

羽生はオーサーに、クリケットが恋しい、みんなが恋しいよ、と言っているという。だが、日本からトロントにやってくるのは大変だし体力を奪う。日本にいれば、上海へは飛行機で1時間だし、時差もあまりない。一方、オーサーと教え子たちは、地球の裏側から体を引っぱってこなくてはならないのだ。
「だから、いいんだよ」とオーサーは言う。試合が始まるまでに3日間よい練習ができるスケジュールで現地に入る予定だからだ。

ともかく、自分と羽生は正しい軌道に戻ったのだ――オーサーはそう感じているという。
今年は羽生にたくさん休んでほしいと、オーサーは願っている。なぜならオリンピックの翌年だし、彼はオリンピック・チャンピオンなのだから。羽生の生活は大きく変わり、多くの期待や義務にこたえなくてはならないようになってしまった。
「来シーズンはまた元の状態に戻るといいね」と、オーサーは言った。

羽生は正確な情報を送ってくれている、とオーサーは感じている。”優等生”の教え子は今、気力にあふれていて、来週ファンファーレが鳴り響くときには用意が整っているはずだと、そうオーサーは思っている。
羽生は招集されれば力強く立ち上がり、みごとに戦いぬく選手だ。この散々だった1年で2度もそれをなしとげたのだ。彼がどんな人間なのか、私たちが目にするときがもう間もなくやってくる。


・・・・【追記】・・・・
コメント欄でも書きましたが、現在元記事が見えなくなっていることについて、昨日筆者のベバリーさんご本人に連絡をとってみました。「記事が削除されているようですが、私の翻訳も削除したほうがよいと思われますか?」と聞いてみたところ、このようなご返事をいただきました。

"No, absolutely don't worry. There is a temporary glitch with my blog site. Carry on."
「いいえ、まったくご心配はいりません。私のブログのサイトに一時的に不具合が発生しているのです。どうぞそのままで」

…というわけで、ほっとひと安心!よかったよかった!^^ 元記事がそのうち復旧するのを待っていたいと思います。


・・・・【さらに追記】・・・・
その後、ベバリーさんが記事をアップし直してくださいました。これでひと安心ですね!
ただ、新しい記事では、若干ですが一部手直し(削除)されている部分があるようです。とり急ぎ、その削除された部分の訳文に訂正線を入れておきますね。のちほどこの訂正線ごと取ってしまうつもりですが、とりあえず。


・・・・【さらにさらに追記】・・・・
昨日(4月2日)、キャノンのサイトに羽生くんの最新インタビューが掲載されましたね。→羽生結弦選手インタビュー
この中で、手術について羽生くん、こう言っています。

4僂曚匹へそに沿って切る、開腹手術でした。それが一番、傷口が少なくて筋肉へのダメージが少ない方法とのことで、提示していただきました。全身麻酔での手術で2週間の入院。筋膜を縫ったので、手術後は日常生活の中では常に注意して下さいとのことで、自宅に帰ってからは4週間ほど安静にしていました。

内視鏡でなく開腹手術じゃないですか、オーサーさん! 入院期間もやはり当初の予定どおり2週間だったんですね。
少なくとも開腹と内視鏡を間違えるとは考えにくいので、やはりこのベバリーさんの記事はいわゆる「高度な情報戦」というやつだったんでしょうか?
いやあ、さすがというか、何というか…やはりオーサーのコメントは裏の裏を見なきゃだめなんですね!

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カテゴリ:羽生結弦 | 18:14 | comments(58) | trackbacks(0) | - | - |
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