すみません、FaOIはテレビで見ただけなのに、1回チャリティコンサートに行っただけなのに、今ごろ福間さん沼にずぶずぶハマってしまってる私ですが、みなさんお元気でしょうか(゚∀゚;)
ステファン・ランビエールの
こちらのインタビューでも話題に出てきた、ステファン初のセルフプロデュース・ショー「アイス・レジェンド2014」。昨年12月18日に開催されたこのショーのレポが、なぜか半年以上もたった今月6日に、Absolute Skatingにアップされました。
リハーサル風景から各スケーターのプログラム解説まで詳細かつ長大なレポなのですが、この記事の最後に福間さんの単独インタビューが掲載されていました。ショーの前日のリハーサル中に取られたもののようですが、これが思いっきりスケート愛にあふれた、すごくフレッシュなインタビューなのでした〜。見落していた自分、バカバカ!><
元記事はこちら→
Ice Legends 2014 July 6, 2015 By Reut Golinsky
この記事から福間さんのインタビュー部分のみ訳してみました。
「福間洸太朗、チャレンジする用意はできている」
アイス・レジェンド2014では、スイス人アーティストのランビエールと、日本人アーティストで才能あふれる若きピアニストである福間洸太朗が、美しいコラボレーションをおこなった。2人は、音楽やスポーツやアートは異なる文化同士を近づけることができるのだと証明してくれた。筆者は、リハーサル中に洸太朗と話すチャンスを得た。スイスについて、音楽について…そしてフィギュアスケートについて、とても興味深いおしゃべりをすることができた。
Q:このショーは日本とスイスの国交樹立150年を記念したものですね。あなたとスイスの間には、個人的にどのようなかかわりがあるのですか? それはいつ始まったのでしょうか?
福間:僕が最初にスイスを訪れたのは2000年の夏のこと、音楽の勉強のためヨーロッパへ移り住む1年前のことです。フランスのクールシュベルにある音楽学校に入学する前に、3日間ジュネーブの知人の家に滞在したんです。短い滞在でしたが、街の美しさと洗練された雰囲気にはとても感銘を受けました。それから数年たって、ジュネーブやモントルー、クラン、チューリッヒ、ベルンといったスイスの都市で演奏をするようになって、美しいものをさらにたくさん知るようになりました。
Q:では、フィギュアスケートとかかわるようになったきっかけは何だったのでしょう? あなたは熱心なスケートファンなのですよね?
福間:正確にいつ、とは憶えていないんですが、テレビでフィギュアスケートを見ていた記憶はあります。特に、伊藤みどりさんが銀メダルを取った1992年アルベールビル五輪のことはよく覚えています。家族全員でテレビを見て、大声でみどりさんに声援を送ったものです。彼女は冒頭のトリプルアクセルでは転んでしまったけれど、プログラムの終盤でみごと成功させました。あれは驚異的だったな。
でも、じつはそれ以前に、僕の父は30代の初めの頃、今は高名なコーチである佐藤信夫先生にフィギュアスケートを習っていたんです。ごく短期間だったらしく、ジャンプもスピンもできませんでしたが、僕がたぶん5、6歳の頃、父はリンクに僕を連れていってくれて、基礎的なことを教えてくれました。そういうわけで、スケートには個人的に強いかかわりがあるんです。僕は前に滑るか、後ろにゆっくり滑ることしかできないけれど、スケートを見るのは大好きですね! もっと滑れたらいいんですけど!
だから、僕にとってこのショーの舞台にいられること、このプロジェクトに参加して、ワールドクラスのすばらしいスケーターたちとコラボレーションができることは、言葉にならないほどうれしいことなんです。
もうひとつ、1994年に日本の幕張で開催された世界選手権で、佐藤有香さんが優勝したときのことも覚えています。当時、僕は12歳でした。それがスケートを熱心に見始めるきっかけになったのかもしれないな。1995年の世界選手権ではルー・チェンが、翌年はミシェル・クワンが優勝したことも覚えています。これには強いインパクトを受けました。
Q:あなたが口にするのは女性のスケーターばかりというのがおもしろいですね。
福間:そうですね、男子の試合も見ていましたよ。これは本心なんですが、僕が一番好きな男子スケーターはステファンなんです。スケートの芸術性という点で、彼は音楽のすべてを大事にしています。彼が滑るのを見ていると、自分が弾いているわけでもないのに、音楽が聞こえてくる。これはとても特別なことなんです。
スケートの技術的な面においては、エルビス・ストイコが強く印象に残っています。試合で4-3のコンビネーションを跳んだのは彼が最初でしたよね。1996年から97年のシーズンに。僕はその試合をテレビで見ていて、すごくびっくりしてしまいました。そして(1997年世界選手権で)2位はトッド・エルドリッジでしたよね。そう、その頃はとても熱心にスケートを見ていた時期でした。
ところが、2001年に、僕はパリに留学するために日本を離れました。日本でもかなり本気でピアノを習っていたのですが、自分がプロのピアニストになれるかどうか自信がなかったんです。日本から出てしまえば、もうそれ以外の職業のことを考えるすべはありません。プロのピアニストになるために、僕は自分にできることをすべてやりました。そのためとても忙しく、それ以降の数年間はフィギュアの試合はまったく追えませんでした。2004年に荒川静香さんが世界選手権で優勝したとき、僕はフィギュアに戻ってきたんです。2006年のトリノ五輪は全部見ましたよ! それ以来、時間があるときは必ず、YouTubeかテレビでほとんどの試合を見ています。
Q:試合やショーを生で見たことはありますか?
福間:はい、一度だけショーに行ったことがあります。去年の7月、ステファンが幕張のショーに招待してくれたんです。【筆者註:福間洸太朗は今年、このショー「ファンタジー・オン・アイス」にピアノ奏者として出演している】プロのフィギュアのショーを生で見たのはあのときだけですが、すごかったですね! アーティストとしても非常に刺激をもらいました。もちろんテレビで見ていてもすばらしいけれど、生は全然違います。スケーターたちから感情やエネルギーがものすごく伝わってくるんです。
Q:音楽を聴いてそこから受け取るものは人によって違いますよね。動きを感じる人もいれば、色彩を感じる人もいます。あなたの場合は?
福間:僕も動きが見えることがありますし、色彩や、時には今までに訪れたことのある特定の場所の景色が見えることさえあります。音楽を聴くとき、僕はいろいろなことを想像します。僕にとって欠かせないことなんです。そしてそれが、ステファンをとても尊敬している理由でもあります。彼が音楽を表現している様子を見ると、いろんな風景が思い浮かぶから。ただ「振付でこうやれと決まっているからやる」とか「ここでジャンプ飛んで、ここでスピンして」じゃない。彼は僕らに何かを伝えようとしています。物語を伝えようとしているのです。
もちろん、このショーに出ているスケーターは、ステファンだけでなく全員が音楽を大切にしているすばらしい方ばかりです。だから、個人のプログラムだけでなくフィナーレの群舞でも、みなさんと仕事をするのはとてもおもしろいですね。
Q:ステファンにどれか1曲滑ってほしいと頼めるとしたら、どの曲を選びますか?
福間:それは美しい質問ですね。でも、答えるにはもっと時間が必要だな…。個人的にはロマンティックな曲で滑るところが見たいけれど…でも、彼の得意なもののひとつはコントラストだと思うんです。ゆったりとしたパートがあって、それがとても速く、激しくなっていくような曲かな。彼にはすばらしいスピードもありますからね。じつは、実際に彼に会ってみると意外に背が低いことにびっくりしました。滑っているときの彼はものすごく大きく見えますから! あの体の動かし方が彼を大きく見せているんでしょうね。
Q:フィギュアのショーがコンサートとかなり違うことは、もうおわかりでしょうね? 騒々しくなることもあるし、曲の途中で拍手や歓声が起こることもあるかもしれません。そういったことに対して対策はされていますか?
福間:ええ、大いに違うでしょうね。苦労するだろうなと予想しているのはそれだけではありません。まず、もちろん気温です。これほどの寒さの中で弾くのは初めてですからね。観客からのノイズもあります。スケーターがジャンプやスピンをしたときに起こる歓声。音響もコンサートホールとはずいぶん違います。ほかに何かあるかな? そうだ、今日は大丈夫だったんですが、昨日鍵盤を触ってみるとぐしょ濡れだったんですよ! きっとリンクの湿気のせいでしょうね。すごく滑りやすくて、怖かったですよ!
このショーで僕は全部で8つの曲を弾くんですが、おもしろいのはスケーターの意見やアイディア、音楽への考え方がそれぞれ全く違う点です。たとえば、(安藤)美姫には、演技中のある特定のポイントで自分と目を見合わせてほしい、と言われました。プログラムの前半はゆっくり弾いて、後半はだんだん速く弾いてほしいと言う人もいます。サロメ(・ブルナー:ステファンの振付師)には、ガーシュインの「3つの前奏曲」について、第2楽章からつながる部分に数節、数音足して、プログラムの尺を長くしてほしいと頼まれました。そこで僕は数音足して、ステファンが予定された場所でスピンを終えて、そこから次のパートに入れるようにしたんです。原曲が長すぎて、僕がカットしなくてはならなかったこともありました。
だから僕は、曲にものすごく神経を使って、ふだん弾き慣れていない新しいバージョンに意識を集中していなくてはいけないですね。あまり考えないで原曲のまま弾いてしまったら、スケーターは困惑してしまうでしょう。「これは何? これでどう滑れって言うの?」と(笑)。
アイスショーで演奏することは、とてつもなく大変なチャレンジです。でも、僕はその用意はできていますし、明日チャレンジできることが楽しみでたまらない! 誰にとっても、とても貴重な、とても刺激的なショーなのです。