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たらのフィギュアスケート日記大好きなフィギュアスケートについて語っています。
男子シングルに偏る傾向あり。 たまに海外記事も翻訳してご紹介します。 |
icenetworkから未来ちゃんの新プロ情報出ましたね! ジェフ振付のSPはまだ曲は不明ですけど、フリーはウィルソン振付で、曲は「The Winner Takes It All」だそう。
タイトルを見てピンとこなくても、『ざうぃなーていくさろ〜〜!』のサビを聞けば、あれかーと思う人も多いのでは? 1970年代に全世界で一世を風靡したスウェーデン出身のコーラスグループABBA(正しくは2文字めのBは左右逆向きなんですよね、懐かしい…)の代表曲です。
ただし、ウィルソンが選んだのは、やはりスウェーデン出身の現役歌手サラ・ドーン・ファイナーが歌うバージョンだそう。
この未来ちゃんの新フリープログラムがどのように選曲、振付され、磨きをかけていくのか、そのプロセスを追うコラムがicenetworkに連載されるそうです。全部で何回になるのかわかりませんが、1回目の今回は選曲のお話です。
元記事→Creating the Program: From 'Avatar' to ABBA by Sarah. S Brannen
プログラムをつくる:『アバター』からABBAへ
長洲未来はまだ23歳という若さだが、選手としてはもうベテランだ。シニアに上がって以降の9年間、ローリー・ニコルから同じチームUSAのアダム・リッポンまで、何人もの振付師と仕事をしてきた。
長洲は最近トロントを訪れて、2人の振付師と新しいプログラムづくりに取り組んできた。1人はデビッド・ウィルソン。6月末にフリーの振付をおこなった。もうひとりはジェフリー・バトルで、今SPの振付をしている最中だ。SPもフリーも、使う曲が決まったのは振付を始めるほんの数日前だったという。
「今シーズンの曲を決めるのはすごく大変だったわ。自分がどの曲で滑りたいという希望が全くなかったから」長洲はそう話した。「スケーターと振付師の両方にとって、ぴったりくる曲じゃなければならないの。振付師だって、自分の琴線に触れない曲から何かをつくりだすのは難しいものだし、スケーターにとっては、私はいつも自分に問いただすようにしてるの。『この曲をシーズン中毎日、自殺したくなることなく聴いていられるかしら?』って」
長洲は一時期、映画『アバター』の音楽を使いたいと考えていた。だが、コーチのトム・ザカライセックに止められてしまったのだという。
「アバターの音楽をつくったジェイムズ・ホーナーはすばらしい作曲家だし、映画そのものも映像が美しい作品だから、プログラムを作る上でイメージを作りやすい曲なんじゃないかと思ったの。でも残念ながら、トムにあっさり却下されたわ。『古典的な曲じゃないから』のひと言でね。ちょっと傷ついたけれど、こういうことは理由があってそうなるものだから」
ウィルソンは最初は『アバター』を使うことに賛成していた。だが、ザカライセックコーチに却下されたことを長洲から聞くと、彼女が振付のためにトロントにやってくるまでに、あわててほかの曲を探したのだという。
「僕は『わかった、すぐ探すから!』って答えたよ」ウィルソンは笑いながら話した。「そこで、ストックしてある音楽を調べてみると、なんとそこにこの曲があったんだ。石炭の山の中でダイヤモンドを見つけたみたいだったよ。それがこのすばらしい歌の、すばらしいバージョンだったんだ」
ウィルソンが発見したのはアバの「The Winner Takes It All」で、スウェーデンの歌手サラ・ドーン・ファイナーが歌うバージョンだった。ウィルソンは数年前にニューヨークでミュージカル『マンマ・ミーア!』を見たことがあった。実は見る前はそれほど乗り気ではなかったのだそうだ。【*『マンマ・ミーア!』はアバのヒット曲22曲でつづられるロマンティック・コメディ作品】
「僕は特にアバのファンじゃなかったからね。それほど期待もせずに劇場に座っていた。ところが、この曲が流れてきたら、号泣してしまっていたんだ。誰もがみんな泣いていた。この曲にはそんな作用があるんだ。だから、とても感動的なプログラムになるんじゃないかな」
ウィルソンは長洲がカナダにやってくる前日に、この曲をメールで彼女に送った。メールのタイトルは「To Die For(最高)」だった。長洲から来た返事は「すごく美しい曲。涙が出ました」。それはウィルソンが望んでいたとおりの返事だった。こうして、回り道はあったものの、最終的にフリーの曲はすんなりと決まった。
長洲はこの曲のメロディーだけでなく、歌詞にも共感したのだという。2008年に全米女王に輝き、2010年バンクーバー五輪では4位に入賞した長洲だが、その後は失望の連続だった。2008年以降は大きな大会での優勝は遠のき、2014年のソチ五輪は国内選考に落ち、出場することができなかった。
「それ(The Winner Takes It All=勝者がすべてを手にする)は当たり前のことです。でも、時には勝者になれなくても、人は前に進んでいかなくちゃいけない。これは耐えることを歌った曲だと思うの。彼女の歌もすごく感情にうったえかけてくるわ」
「気になっていたのは、この歌を受け入れる勇気が未来にあるかどうか、ということだったんだ」ウィルソンは話す。「これは彼女のためにあるような曲だ。彼女のような人、彼女のような経歴を持つ人でなくてはならない曲なんだ。自叙伝的なプログラムを滑るのは難しいものだけどね」
アバの失恋の歌として有名な「The Winner Takes It All」だが、サラ・ファイナーが歌うバージョンは、冒頭はアカペラで始まり、サビが数回経過してから熱唱に変わっていく。よく耳にするアバ版に比べれば全体的に静かなバージョンで、後半から徐々に高まっていき、最後にドラマチックなラストを迎える。フリーの4分間より短い曲であるため、ウィルソン自身がピアノの間奏パートを作曲し、4分に合うように編曲した。
「特に、冒頭の歌詞に共感したの」と長洲は話す。「こんな歌詞から始まるの。『I don't want to talk about the things we've gone through(いろんなことがあったけど、その話はしたくないの)』すごく共感するわ。なぜなら、個人の胸のうちにしまっておきたいことって時々あるから。スケートってそういうものだと思っているの。演技はみんなの前でするけれど、練習は個人的におこなうものだもの。スケーターとして、とても身近なことだと感じたの」
スケーターの中には、プログラム用の曲を探して常に音楽を聴いている者も多いが、長洲の場合はそうではない。ある曲を聴いてプログラムに使えるのでないか思うこともあるが、彼女にとってはそれほど重要なことではないという。振付師と共に一から曲探しにかかわる選手もいるが、彼女は最終的に決まった曲を提示されるだけでいいのだそうだ。
「でも、選手と一緒に部屋に座って、何時間もいろんな曲を聞かせる振付師もいる。今はボーカルが解禁されて選択肢が広がったわ。スケートのおかげで、自分では絶対に聴かなかったようなたくさんの曲と出会うことができた」
一方のウィルソンは、ほとんどの振付師がそうだが、いつも音楽のことを考えている。スケートに合うのではないかと思った曲は記録しているのだそうだ。
「週に2人とか3人の振付をするとなると、基本的に常に曲を探し続けている状態だ。すばらしい曲だと思っても意図に合わない場合だってある。だから、ここ5、6年の間に見つけた音楽のリストを作ってあるんだ」
Please read my thoughts if you have time :) https://t.co/14SvocDHny
— Mirai Nagasu (@mirai_nagasu) 2014, 1月 30
珍しく2日続けて更新してしまったので、ちょっとひと休みしようかなと思っていたんですが……あまりにも感動的な記事を読んでしまい、半徹夜で訳してしまいました。ニューヨーク・タイムズ傘下の「International New York Times」のサイトにアップされた、アグネス・ザワツキー選手についての記事です。
全米選手権で11位に沈んだアグネス。選手にはそれぞれドラマがあるんだと思いますが、彼女にこんなバックグラウンドがあったなんて、私は全然知りませんでした。ちょっと長いですが、最後まで読んでいただけたらうれしいです。
元記事はこちら→Struggle to Reach Olympics Is the Family’s, Too By JULIET MACUR January 12, 2014
全米選手権で娘の演技を見守るジョランタ・ザワツキー(中央)
「オリンピックをつかむための苦難は家族のものでもある」
日曜日、アメリカの五輪代表が発表され、グレイシー・ゴールドはカメラに向かって微笑んでいた。彼女を見ていると、こういう輝かしい場面の裏には悲痛な影の部分があることを、つい忘れそうになってしまう。
ゴールドはアメリカ・フィギュア界の新女王であり、ソチのヒロインにふさわしい優れた才能の持ち主だ。だが、彼女のような成功物語の裏で、数えきれないほど多くのアスリートが国内選手権でオリンピックの夢に届かずに終わってしまうのだ。
あと一歩で届かない選手もいるだろう。3位になりながら代表の3枠に選ばれなかった長洲未来のように。あるいは、遠く及ばなかった選手もいるだろう。去年と一昨年の全米選手権で銅メダルを獲得し、代表入りを有望視されながら、今年11位に終わったアグネス・ザワツキーのように。
そんな選手たちを見ると、オリンピック選手になるために何が必要なのか、その努力の結果として何を手にできるのか、わかってくるような気がする。例えばザワツキー。彼女の家族は、ほとんど無一文のところから、彼女のオリンピック出場のためにすべてを犠牲にしてきた。
トップ選手だと年間8万ドル以上もの費用がかかるフィギュアスケートの世界で、ザワツキーは異例のバックグラウンドをもつ選手だ。彼女の母親のジョランタは、そのことを痛いほどわかっている。
「私たちはブルーカラーです。王女様などではないの」とジョランタは言う。「ええ、簡単な道のりではなかったですね、私たちにとっては」
ジョランタ・ザワツキーはポーランド系の移民で、ベビーシッターや掃除婦、高齢者の在宅介護などの仕事をしてきたシングルマザーだ。年齢は49歳。アグネスが生まれる直前の、今から19年前にアメリカに移住してきた。アグネスが3歳のときに夫と離婚。生活のため、週7日間働かざるをえなくなった。アグネスは、父親がたずねてきてくれることはあまりなかったと記憶している。ジョランタによると、父親はアグネスが10歳のときに亡くなった。死因はドラッグとアルコールの過剰摂取だという。
そんな環境の中でも、ジョランタは娘にまっとうな生活を送らせようとした。フィギュアスケートの教室に通わせてやることも、そのひとつだった。アグネスは5歳のとき、一般向けの安いフィギュア教室を開いていたシカゴのリンクに通い始めた。そこで、才能を見出された。
ジョランタが1日10時間以上働く間、「スケートママ」の役目を果たすのはアグネスの祖父だった。工場労働者だった祖父は、退職後、車でアグネスの送り迎えをした。孫の食事をつくるのはアグネスの祖母だ。彼らはみな一緒に暮らし、家ではポーランド語で会話していた。
家族に支えられて、アグネスはぐんぐん力を伸ばした。それにつれて出費も増えた。スケート靴は1足600ドル。靴につけるブレードも同じような値段だ。特別あつらえの衣装は1着2000ドルほどもする。さらに移動にかかる交通費に、バレエ教室やコーチへの支払い、リンク使用料。高名な振付師の場合、ショートで6000ドル、フリーで9000ドルもの振付料がかかる。
「そんなお金がどこから来てるのか、私は全然知らなかったの」とアグネスは話す。「魔法なのかな?って」
それは魔法ではなかった。強い意志の力だった。ジョランタは、ポーランドのアウシュビッツに近い山あいの小さな町に住んでいた少女時代、やはりスケーターを夢見ていた。だが、彼女の家は貧しく、スケートを習うため大きな街に通うことなどできなかった。娘にはそんな不自由はさせまいと、ジョランタは自分に誓っていた。
2008年、アグネスとその家族は、シカゴからコロラド・スプリングスに引っ越した。トップコーチであるトム・ザカライセックのコーチングを受けるためだ。「彼らには本当にわずかな予算しかなかったよ」とザカライセックは言う。しかし、そんな金銭的なストレスがアグネスのスケートに影響することは決してなかったという。
この引っ越しが実ったのは、2年後のことだった。アグネスは全米ジュニア選手権で優勝し、世界ジュニア選手権で2位に輝いたのだ。そのおかげでスケート連盟からいくらか援助が受けられるようになった。
このときようやく、アグネスは理解した。自分がここまで成功できたのは魔法のせいなどではない、母親の超人的な努力のおかげなのだと。
「ごめんね、お母さんにそれほど犠牲を払わせていたなんて」アグネスは母親に何度も何度も謝ったという。
すると、ジョランタは答えた。「いいえ、犠牲なんかじゃないのよ。私が自分で決めたのだから。あなたのためにそうしたかったの」
演技後の絶望の涙が、翌日にはうれし涙に変わったアシュリー。そして、一転して失意の涙にくれることになった未来ちゃん…・゜・(ノД`)・゜・
昨日、アシュリーの記事をご紹介したUSA TODAYから、今日は長洲未来ちゃんについての記事です。
(彼女はアメリカ選手なので、本当は「ミライ・ナガス」と書くのが適切なんでしょうけど、ここでは「長洲未来」でいきたいと思います)
長洲未来の4年前の活躍は、それ以降の不振を払拭するには十分ではなかった――
長洲は全米選手権で3位につけたが、アメリカのソチ代表からは落とされた。選ばれたのは下位のアシュリー・ワグナーだった。
長洲はアメリカスケート連盟を通して声明を出した。
「この決定にはがっかりしています。決定に同意することはできませんが、連盟がくだした決定は尊重しなくてはなりません。私を応援してくださったすべての人に感謝していますし、私のスケートのキャリアの中で今後起こることを楽しみにしています」
日曜日の夜、彼女はエキシビションで演技をし、観客の大歓声に迎え入れられた。
その日の少し前、スケート連盟のパット・セントピーター会長は今回の決定を次のように説明した。
「今回の全米選手権は、アメリカのソチ代表を決める唯一の選考基準ではありません。選考は、ここ2年あまりの大会の結果や成績を考慮してのものでした。ワグナーはアメリカ女子選手の中でトップの条件を持っているのです」
表彰台にのった4人の選手のうち、フリーで大きなミスがなかったのは長洲だけだった。フリー後の会見で、長洲はこう言った。4年前に五輪で活躍した経験が選考にプラスに働くことを願うと。
まだ16歳だった2010年、彼女はバンクーバー五輪で4位につけた。その元気なキャラクターと明るい笑顔、持って生まれたすばらしい才能で、アメリカ女子の次のビッグスターと期待された。
「今、私が自慢できるのは、オリンピックを経験したただひとりの選手だということだけです。だから、難しいのはよくわかっています」
発表前の土曜日、長洲はそう語っていた。
だが、フィギュアスケートでは昔を懐かしんでいる場合ではない。長洲に情状酌量の余地があったとしても、彼女はそれを打ち消してしまうほど期待外れの結果を重ねてきたのだ。
いや、彼女にも輝いた瞬間はあった。過去3シーズンは毎年少なくとも1つのGPSの大会でメダルを取ってきたし、バンクバー五輪の1か月後に開催された世界選手権では、ショート1位になったこともあった。
そして、この全米選手権のフリーでは、彼女はただただすばらしかった。観客に魅力的な視線を送ってオープニングポーズを取ると、007のプログラムで会場中をうっとりさせたのだ。
「2010年以降、見られなくなってしまっていた未来の姿がそこにはあったわ」とワグナーは言った。
長洲のジャンプはなめらかで大きく、バスケ選手もうらやむような跳躍のゆとりがあった。スピンの軸は完璧で、ポジションも複雑だった。
だが、長洲の最大のよさはその表現力だ。ノッているときの彼女はプログラムを身をもって体現する。リンクの氷から彼女の頭のてっぺんまですべてがつながり、1つのエレメントがどこで終わって次のエレメントがいつ始まったのかわからないほどだった。
「とてもうれしいです。本当に言葉にできないほどです」長洲は演技後、そう話した。「こう滑りたいと思っていた演技ができました。ほんとにすばらしいスケートができました。…お客さんもあんなにノッてくださって。ほんとにすごくうれしい。ちょっと言葉が出てこないです。自分にこんなことができるとは思ってもいませんでした。本当に言葉になりません」
だが、これほどすばらしい演技を見ると、彼女が今まで無駄にしてきた数々の機会がよけいに思い出されてしまう。ショート首位だった2010年の世界選手権では、フリーで10位にさえ入ることができず、総合7位に沈んでしまった。
それ以降、彼女は世界選手権の代表に1度も選ばれていない。過去2年の全米選手権ではともに7位。今シーズンはGPSロシア大会で銅メダルを取ったが、その前のNHK杯では8位だった。
新アメリカ女王となったグレイシー・ゴールドはこう話した。
「ミライのことをとても誇りに思っています。とても苦しかった2年間を経て、この大会で3位につけたんですから。アメリカには4人の、いいえ5人ものすばらしい女子選手がいます。最後に選ばれたのがアシュリーとポリーナと私だったんです」
一世一代の好演技だったフリーの「007」。キスクラで順位をコールされ、表彰台確定と知ったときの素直なよろこびようが、今はただただ悲しい(;_;)
すみません、限定公開動画なので本当は掲載するべきではないのかもしれませんが、この美しいエキシをとどめておきたくて…。申し訳ないですがアップさせていただきます。動画主様すみません…。
未来ちゃんエキシ、高画質版を上げてくださった方がいらっしゃいましたので、貼りなおさせていただきます。ほんとうに悲しく美しいエキシですね…。
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ドラマでいっぱいの全米選手権が終わりましたね。
はあー…。
今季の全日本ほど涙々…な大会はないと思ってたんですけどね。全米もうれしい涙と悲しい涙がいっぱいの大会になりましたね。
アメリカの大衆紙「USA TODAY」のクリスティン・ブレナンという記者が、このドラマいっぱいだった全米のいろんなシーンを記事にしていますので、少しずつ訳してみたいと思います。
今日は絶望の涙から一転、ソチ代表に選ばれたアシュリーについての記事です。
元記事はこちら→Ashley Wagner faces the music about expectations by Christine Brennan, USA TODAY Sports 11:33 p.m. EST January 12, 2014
土曜の夜、アシュリー・ワグナーがどれほどひどい演技をしたか、そしてどれほど幸運にもアメリカのソチ五輪代表に選ばれたのか、最もよくわかっている人間がいるとすれば、それはアシュリー・ワグナーだ。
「私は心の準備はできていました。きっとみんなに、“なぜあなたが代表になったの? いったいどんな理由で? 理解できない。あなたはここにいる資格はない”と言われるだろうと思っていたんです」
4位に終わりながら、ソチ代表の3人のうちの1人に選ばれた日曜日、アシュリーはそう言った。
「それを受け止める準備はできていたんです。でも、私はこんなふうに言う準備もできていました。“よし、一番つらい部分は終わった。私は代表になれたんだから、いつまでもあの演技のことでくよくよしていてもしょうがない。そんなことをしても自分にとって何の役にも立たないのだから。強くたくましい1人のオリンピック選手になれるように、自分を駆り立てていかなくては”と」
この2年間、アメリカ女子選手で最も華やかな経歴と豊かな経験を積んできた22歳のワグナーは、ニュースメディアの記者たちを相手に、50分近くにおよぶ会見に応じた。何ひとつ言い訳せず、すべてを説明し、“リンクで結果を出せなかった弱虫の意気地なし”という非難を受け止め続けた。
「私はみんなが見ている場で強い姿を見せることができませんでした。みんなが見ている前でしっかり強い姿を見せることができる人が、スケートでは必要とされているのに」
全米2連覇中だったワグナーにとって、これは以前も経験した道だ。昨年の全米のフリーでも、彼女は今年と同じじように2回転倒した。しかし、そこから立ち直って、2013年世界選手権では堂々の5位入賞を果たした。
「そういうパターンができちゃってるのかもしれませんね」ワグナーは笑いながら言った。「今年も去年と似たパターンになってくれたらと思います。今回は自分の中の一番悪い部分が出てしまいました。この全米はすごく重要な大会だったため、神経がすり減ってしまっていたんです」
オリンピックへの出場をつかむことは、オリンピックで競うことよりも大変なのだと、彼女は感じたのだという。同じことを過去にも多くの選手が口にしている。
「全米選手権は他の試合とはまったく別物なんです」と彼女は言った。「ソチに行けるのは、本当におまけみたいなものです」
フリーで何が問題だったのか、ソチまでの3週間半の間に分析するつもりだと、ワグナーは語った。フリー演技中は足がひもでつながれたような感覚になり、ジャンプが重く感じていたという。
「ちょっと自分で考えて、いろいろ変えていかなくてはと思っています。細かいところで」
アシュリーほど率直でさっぱりとした性格のアスリートはそういない。以前、ロシアの反同性愛法に抗議する発言をしたこと、また五輪の広報活動に参加したことなどが、この全米選手権の前に重荷になっていたかどうか聞かれると、彼女はひるむことなく答えた。
「全然そんなことはないです。すべてよく考えてから引き受けたことですから。ただし、反同性愛法については例外でした。あの場合はよく考えるまでもなく、ただ思ったことを口にすればよかったので」
この全米選手権の期間中、練習を終えてリンクサイドに引き上げてきた彼女に、レインボーフラッグ(ゲイの権利を主張するシンボルとして使われる7色の旗)を持った人々が近づいてきたことがあった。
「たくさんの人が私にありがとうと言いに来たんです。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)のコミュニティーの人たちから応援してもらえて、すごくうれしいです。でも、私が何か特別なことをやったわけでもないんですけどね。ただ思ったことを言っただけだったんですが、それが大切なことだったみたいです。でも、その人たちの応援がとにかく熱心だったし、発言してくれて誇りに思いますなんて言われて、私はよけいに(スケーターとしての)原点を見失わないようにしなきゃと思ったんです。それが私のなりたい姿ですから」
ソチのアメリカ代表としてのワグナーの価値は、世界で経験を多く積んでいるからだけではない。自己中心的になりがちなフィギュアスケートという競技で、リーダーにふさわしい資質のせいでもある。特に、今度の五輪では初めて団体戦(2月6日から開催)が行われる。
女子フリーの日、ワグナーがリンクに出たのは、ちょうどクリスティーナ・ガオがミスの多い演技を終えたところだった。ワグナーは向きを変えて近づいていくと、クリスティーナをハグした。私は26年間フィギュアの取材をしてきたが、人生で最も大切な演技の前にあんなことをした選手を今まで見たことがない。「あの瞬間、彼女は私の友達でしたから」とワグナーは言った。
4位に終わったあとの表彰式で、ワグナーはまた同じことをした。自分を打ち負かした3人の若いライバルたちの前で足を止め、全員と数秒間ずつ言葉をかわしたのだ。彼女にとっては悔しい瞬間だったはずだが、最も長い時間をかけて言葉をかけたのは、彼女にかわってナショナル・チャンピオンになったグレイシー・ゴールドに対してだった。
「おめでとう。今夜のスターはあなただったわ」
と彼女は言った。
間違いなくワグナーはオリンピック選手だ。その役割のために生まれてきた人だと思う。
ブレナン記者がアシュリー選出の理由を説明しています。きっと「4位だったのになんで選ばれたの?」という声も多いんでしょうね。アメリカの選考基準は全米だけでなく、彼女は基準からも実績からも代表にふさわしい。アメリカの連盟はまったく正しい決断をした、と言っています。記者会見にのぞむ素顔のアシュリーがめちゃくちゃ美しいです…。
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